【ブログ】2021年は市民研とともにスタート

2021年が明けました。
 喪中でコロナ感染の拡大もあり、お客様も少なく静かな正月。
 それでも縁起物のお節やお雑煮は、例年通り頂きました。

 自宅近くの市民農園も豊作。野菜価格は低迷しており、生産者の方のご苦労が偲ばれます。7日(木)には七草がゆも頂きました。
 東京地方は冬場れの日が続いていますが、日本海側や北日本では大荒れとのニュースも。

1月8日(金)からは1都3県に緊急事態宣言。
 NPO市民科学研究会(市民研)連続講座「日本の市民科学者―その系譜を描く」の3回目も、急遽、オンラインのみの開催に変更。
 急いで帰宅し、ぎりぎり間に合いました。

この日のテーマは「水俣病と医学・科学-原田正純、西村肇を主にして-」。
 講師の上田昌文さん(市民研代表)からの資料を共有しながらの講義は、この日も充実した内容でした(文責・中田)。

「今日は水俣病に関連して、現場に通い患者に寄り添い続けた原田と、排ガス規制問題等を含めて汚染のメカニズムを解明した西村を取り上げる」

 「戦後のある時期から私たちは大量のビニールを消費するようになった。これは国策にも沿った塩化ビニルの大量生産によるもので、深刻な水俣病の原因となった。公害問題とは、豊かな生活の恩恵を当たり前のように受けてきた私たち一人ひとりが問われるもの」

「認定申請が後を絶たないなど、水俣病は終わっていない。
 仕出し弁当を食べて食中毒になったらまずは販売禁止にすべきところ、科学的因果関係が不明であることを口実に対策を遅らせた。水俣病の拡大には行政の責任もある」

 「原田は、何より心が痛んだのは患者さんの家の貧しさだったと書いている。社会的にも経済的にも立場が弱い方に立たないと公平・中立ではないのでは、と。
 本当の専門家とは、自分の枠に閉じこもることなく、現場で当事者の意見を聞き、それを自分のものとして発展できる人のこととも」

 「公害が差別を起こしたのではなく、公害は差別のあるところに皺よせされる。多くの被害者を出した日本こそが率先して研究を続け、失敗を未来に活かすべきと原田は主張している」

「一方、西村は、自らの幅広い学問的経験を活かし、実験室内の反応実験と生態学データの収集等を通じて、水俣病のメカニズムと全体像を解明した。チッソの操業上の過失も具体時に指摘した。また、瀬戸内海汚染や排ガス問題にも関わった。

 「環境問題へのアプローチには、近景(目に見える常識)、拡大(常識を超えた微細な構造の調査)、遠景(世界の全体)を意識することが必要としている。
 また、科学者のあるべき姿勢として『患者や被告者を神聖化してはならない。環境破壊の根底には個人の欲望と消費の拡大がある』とも」

引き続き、参加者との間で質疑応答や意見交換。
 「現場が教科書というのは全ての学問に共通しているのではないか」「市民として専門家に任せてしまうことは危険」等の意見。
 カネミ油症の関係で原田先生と調査に同行された方、学生時代に西村先生のゼミに参加された方もおられました。

 私は熊本在勤・在住中、原田先生の解説つきの水俣バスツアーに参加したこと、熊本学園大における水俣学講座をモグリで聴講したこと等を懐かしく思い出しました。

毎回充実しているこの連続講座、次回(第5回ョは2月12日(金)19時から、「薬害と統計学・疫学-増山元三郎、高橋晄正を主にして」とのテーマで開催される予定です。

さて、1月10日(日)には同じ市民研の新年交流会に参加。例年恒例のイベントですが、今年は初めてオンラインでの開催です。

 この日はパソコンの前に上堰米のお酒(福島・喜多方市)、埼玉・小川町の野菜、それに今回の交流会のために会員の和田さんが提供して下さったリストを参考にして作った手羽中の炒め物を並べてスタンバイ。

18時30分にスタート。
 上田代表の進行でそれぞれ乾杯、自己紹介に続いて雑談風に意見等の交換に。コロナの影響もあり食べ物についての話題が多く出されました。

 市民農園で野菜を作っておられる方からは専門家の指導が欲しいの話。援農に行かれている方からは、高齢の農家の方は農薬を使わないと労力が大変と言っているという話。直売所の残留農薬検査について疑問を呈される方。
 法人化して機械化することによって農薬を減らせるのではないかとの意見も。

 一方、海外経験の豊富な方も多く、日本のメーカーがフランスでワイン醸造を始めたこと、イギリスでは新自由主義的な政策によりスーパーの品数が豊富になったこと、中国の料理の種類の多さや東南アジアの食生活の豊かさ等を紹介して下さった方も。

実は事前に上田代表から「こちらで買って応援しよう-オススメの食材の購入先のリスト」作成の依頼があり、個人的な知り合いを含めてリストを作成して送ったところ、すぐにウェブサイトに掲載して下さっていたのです。
 そしてこの日(前日も)、何人もの方がこのリストを参考にして実際に食材を求めて下さっていました。本当に嬉しかったです。

 上田代表は、ポケマルで購入したサツマイモ(10kg!)で、ご自身で作られた芋羊羹を頬張られました。上堰米のお酒を求めて下った方は、棚田や水路のことに思いを馳せつつ美味しく飲んだと感想を言って下さいました。

 この日の会でも、改めてリストの内容について説明する機会を頂きました(資料はこちら)。

 あわせて私見として、「応援」することは大事だが、自分はむしろ消費者の方が生産者に助けられているという意識があること、有機農業については消費者は安全性との関わりばかり気にするが、環境問題や持続性の観点から世界的にも注目されていること等について話すとともに、大江正章さんの新著(ご遺稿)『有機農業のチカラ』(2020.10)を紹介させて頂きました。

参加者の方からは、「レイチェル・カーソン『沈黙の春』を読んで子どもの健康が心配になった。故郷で農薬が空中散布されているのをみて怖かった経験がある」「食べものの生産のプロセスや生産者の思いを知ることで、モノと思いをひとつにして捉えることが大切では」等の意見等を頂きました。

 関連して上田代表からは、「食の分野に限らず、市民研としては、今は見えにくくなっている様々な問題を見えるようにする場を作っていきたい」という表明もありました。

 ほかに市民科学クイズ(難しい!)など楽しいプログラムで盛り上がった交流会は、2030過ぎに終了。直接、会えなかったのは残念でしたが、一方、オンラインだから参加できたという大阪在住の方もいらっしゃいました。
 テレワーク等も話題となっていますが、対面とオンラインを上手に組み合わせていくことが重要であることを実感した次第。