【ブログ】ブッククラブ、ICRP、宇沢先生のご著作など

冬場れの日が続いています。
 自宅近くに一画を借りている市民農園。この日は鎌で白菜を収穫。外葉をはがすと現れたみずみずしい白さが、目に沁みます(キャベツならぬ白菜の刃)。

少し前になりましたが、1月11日(月)の19時からは第63回ブッククラブにオンライン参加。
 参加者は少なかったのですが、それだけに濃密な(?)話し合いができたような。
 まず、前回のUさん(男性)のおススメ本の樋口耕太郎『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』について意見交換。沖縄は日本の縮図です。

 続いて参加者からのおススメ本。
 平川克美『消費をやめる』(えっ、「銭湯経済」!?)、高橋哲哉『犠牲のシステム 福島、沖縄』(福島にも沖縄にも個人的にご縁ができちゃったな。どれだけ自分ゴトとして考えられるだろう)、坂本司『アンと愛情』(デパ地下も時短営業中です)、アーレント『活動的生』(國分功一朗オシのアーレントはちゃんと勉強したいな)、花房観音『京都に女王と呼ばれた作家がいた』(西日本新聞社とは懐かしい。痛い目にも合わされたけど)。

 野澤亘伸『この世界を知るための重要な質問』を紹介して下さった方も。日本ユニセフ協会の現地視察に同行・撮影した本で、写真の迫力を思い知らされます(ちなみに私は長く日本ユニセフ大使であるアグネス・チャンさんのファンクラブ会員。今年も年賀状を頂きました(嬉!))。

 私は大江正章さん『有機農業のチカラーコロナ時代を生きる知恵』を渾身おススメ。ぜひ多くの方に読んで頂きたい本です。

さて、後半はこの日の課題本・斎藤幸平『人新世の「資本論」』について。

 〈コモンズ〉やSDGs批判(アヘン!)等に対して様々な意見や感想が出されましたが(私も、先日のメルマガに書いたような勝手なことを申し上げました)、Uさん(女性)の「シェア奥沢でのブッククラブ開催の意義を共有できました。やっぱり本は素晴らしい!」という感想がこの日のまとめに。
 シェア奥沢のような場こそが〈コモンズ〉であることは間違いないようです。

 そして、そのUさんによる恒例の絵本朗読は、長谷川摂子 (著)、山口マオ (イラスト)『十二支のはじまり』
 ほんと、ネズミってずるいな(私はネズミ年です)。

次回(第64回)の課題本はジョージ・オーウェル『1984年』。40年ほど遅れてオーウェルの未来予言が実現しつつあるのかも。
 2月8日(土)19時スタート、どなたでも参加できます。

さて、1月18日(月)の夕刻は、NPO市民科学研究室(市民研)の「市民科学入門講座」に参加。毎週月曜、無料でオンライン開催されています。

 この日のテーマは「国際放射線防護委員会(ICRP)の正体を探る」。
 講師は瀬川嘉之さん(高木学校、市民科学研究室会員)と柿原泰さん(市民科学研究室理事)。
 市民研では、2004年から低線量被ばく研究会を開催し、ICRPを含む原子力関係の議論を進めてきているそうです。


(以下、文責は中田にあります。)
 「ICRPとは放射線防護に関わる専⾨家(30か国250人以上)の集まり(イギリスの慈善団体)。その文書(昨年12月には、緊急時、⻑期汚染地域居住関連に関する文書が改定)は、政府や国際機関による放射線防護の枠組を規定している」

 「日本政府は文書のなかの数字しか使わない。年間1ミリシーベルトは法令で決めた線量限度だが、さらに低くするのが放射線防護の考え方。
 福島原発被害に関しては、賠償や⽀援が打ち切られ、事実上、帰還が強制されている現状。避難していた方が被ばくは少なくしやすい面もあり、避難を継続する権利が保障がされるべき」

「原発事故は、⼈を守るはずの国家、科学者による加害。加害を認め、責任を果たさせなければならない」

分かりやすく説明して下さいましたが、内容は専門的で、十分に理解できた訳ではありません。
 それでも、避難している方だけではなく、(「事実上、強制」されて?)実際に帰還して農業や地域づくり等に取り組んでおられる方に対する目配りも同時に必要かと感じた次第。

 なお、市民研では2月20日(土)、今回の文書改訂にも携わられたICRP委員(甲斐倫明さんと本間俊充さん)を招いての、3時間に及ぶ討論会を予定されています。
 この日のような批判的な意見が交わされるなら、刺激的な議論になりそうです。

さて、翌19日(火)は「宇沢弘文を読む-社会的共通資本から現代の課題を考える」と題するセミナーにオンラインで参加。
 コロナ禍のなかで故・宇沢弘文先生(1928~2014)が提唱した「社会的共通資本」に対する関心が高まる中、シリーズで開催されてきたセミナーの4回目です。

この日の講師はアートディレクターの北川フラムさん。
 1946年新潟・高田(現・上越市)生まれで、東京芸術大学を卒業された後、多くの芸術祭等のディレクター等を務められてきた方。
 「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」の実際の写真等をふんだんに使った講演は、興味深い内容でした。

 占部まりさん(内科医。宇沢先生の長女)との対談、会場及びオンラインからの質疑応答。
 「社会的共通資本は効率性の観点から計量不能なものであり、文化やアートも社会的共通資本に他ならない」というのが北川さんのお考えのようです。

ところで、このセミナーに参加するのに先立ち、宇沢先生の本を読み直してみようと本棚を探したところ、出てくる出てくる、新書だけで8冊もありました(『「成田」とは何か』は2冊も!)。
 ほとんど忘れていましたが、コピーや切り抜きが挟まれていたり、自分なりに勉強していたんだな~と。
 ちなみに宇沢さんは、社会的共通資本の具体例として真っ先に「農業・農村」を取り上げられています。

フリードマンら市場原理主義(学問的にも経済学的にもまったく無内容、支離滅裂)や排出権取引の反倫理性への批判は、現在も(だからこそ)鋭いものがあります。

 また、シカゴ大学時代のベトナム反戦運動との関わりと挫折、他の経済学者からの誹謗・中傷には無視で応えたこと、さらには成田問題に関わらないことは「自らの思想的、人格的アイデンティティを保つことはできず、癒しがたい傷を心に残すことになる」という心情の吐露など、人間らしいエピソードにあふれていることに改めて驚きました。

寒い日々が続きます。海の向こうの大国では厳戒下で新しい大統領が誕生。
 東京の新規感染者はやや減少していますが、全国の死者数は過去最多に。将来が見通せない不穏な日々が続いています。
 それでもソメイヨシノやミツマタの蕾はふくらみ、確実に訪れる春を待っています。