【ほんのさわり No.217】野中郁次郎ほか『知識創造企業』

−野中郁次郎、竹内弘高『知識創造企業』(新装版、2020.12、東洋経済新報社)−
 https://str.toyokeizai.net/books/9784492522325/

1995年に英語で発表され、世界10カ国語以上に翻訳された経営学の記念碑的な名著が、四半世紀ぶりに新装版として再刊されました。
 本書が画期的とされ、今なお影響力を失っていないのは、イノベーションのメカニズムを知識創造という面から解明した点にあります。

知識には「形式知」と「暗黙知」があります。
 前者は言葉や数式で表せる(マニュアル化できる)ことから容易に伝達・共有できるのに対して、後者は個人の経験や主観に深く根差しているため、言語化して他人に伝達することは困難なものです。例えば直観や勘、技能、ノウハウと呼ばれるものです。

野中らは、暗黙知を共有化するためには、個人対個人、あるいはグループの中での濃密で直接的なコミュニケーション(徹底した対話や討論、体験共有等)が不可欠としています。そして、個々人の暗黙知を形式知化し、組織内で共有すること(共感知化すること)こそが、イノベーションの原動力となるとしているのです。

イノベーション(新結合による革新)が必要とされるのは企業経営に限られる訳ではなく、例えば地域社会づくり等も同様です。
 こう考えてくると、新型コロナウイルスの脅威は生命や健康面にとどまらず、直接的なコミュニケーションの機会を減殺させることで社会全体の活力を長期的に削いでいくという面でも深刻なものとなるかも知れません。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.217、2021年5月12日(月)[和暦 卯月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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