【メルマガ】F.M.Letter No.228

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.228◇
 2021年10月20日(水)[和暦 長月十五日]
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◆ F.M.豆知識  年齢別にみた投票と社会変革に関する価値観
◆ O.カレント  石川敏之さん(ゆっくり農縁)
◆ ほんのさわり 石渡博明『いのちの思想家 安藤昌益』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 総選挙が公示されました。私たち自身が国のカタチを選択する投票日は10月31日(日)です。取りあえず投票には行こうと思っています。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−年齢別にみた投票と社会変革に関する価値観−

シンクタンク株式会社・山猫総合研究所(三浦瑠麗代表)は、2017年衆院選および2019年参院選の結果について、18歳以上の男女を対象にインターネットによる価値観調査を行いました(回答者2060人)。
 その結果を分析したレポートでは、有権者の投票行動に最も影響したのは安保・憲法に関わるイデオロギーであり、成長重視か分配重視かはそれほど大きな影響を与えなかったこと、日本国民のなかには党派を超えた幅広いコンセンサス(自由貿易、女性問題等)が存在すること等が明らかとされています。

 リンク先の図228は、本調査結果の一部を抜すいしたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/10/228_katikan.pdf

これによると、「選挙で投票しても何も変わらない」という考えには、全体で56.4%が賛成し38.2%が反対していますが、年齢別にみると、年長者よりも若い世代にそう感じる人が多くなっています。
 また、「短期的に混乱があったとしても変革が必要だ」については、全体で60.2%が賛成し26.2%が反対していますが、年長者になるほど賛同者は多く、若年層では反対とする者あるいは態度を保留している(どちらともいえない/わからない)者の割合が大きくなっています。

これらの結果から、若い世代は政治参加や社会変革に向けての意識が低いと断じることはできません。
 レポートによると、幸運な高度経済成長期を生きた高齢世代に比べると、若い世代は所得が右肩上がりに伸びる経験をしたことがないため、現在の社会はアンフェアである、政治家等は自分たちのことを分かってくれないといった気持ちが強いのではと分析しています。

[資料]
(株)山猫総合研究所「日本人価値観調査2019」
  https://yamaneko.co.jp/reports/research2019/

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−石川敏之さん(ゆっくり農縁)−

石川敏之さんは神奈川県のご出身。
 生協で食品関係の業務に携わられているうち、次第にスローライフに魅了されるようになり、ブータン旅行をきっかけに早期退職され、当時住んでおられた東京・八王子市を中心に、様々な市民活動に参画されるようになりました。
 活動内容は、伝統野菜の普及、映画の自主上映、市民エネルギーなど幅広いものでした。

そのうちに石川さんは自らも農業生産者になりたいとの思いが強くなり、多摩地方を中心に農地を探した結果、4年ほど前、東京・あきる野市に「ゆっくり農縁」を開園されたのです。
 JR武蔵増戸駅から徒歩10分弱、住宅に囲まれた400坪ほどの農園では、農薬や化学肥料は使用しない、極力、人の手を加えないという「自然農法」で、野菜やハーブを栽培されています。多くは固定種(伝統的に継承されてきた種)です。
 作物の種類は年間で優に100を超えるそうで、地元の飲食店や消費者に喜ばれており、サツマイモ掘り等のイベントも予定しているそうです。

農「園」ではなく農「縁」という名称には、石川さんの思いが込められています。
 石川さんは、この「場」をきっかけとして、多くの方たちとの「ご縁」を結び、紡いでいきたいと考えておられるとのこと。「ローカル」の強みです。
 石川さんとゆっくり農縁の今後の展開に、大いに期待したいと思います。

[参考]
 ゆっくり農縁
 https://www.facebook.com/slownouen
 石川さんが登場されたテレビ朝日「人生の楽園」(2021.6/12)
 https://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/sphone/backnumber/?pid=0269

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−石渡博明『いのちの思想家 安藤昌益』(2012.11、自然食通信社)
 http://www.amarans.net/3022

かつて「忘れられた思想家」と称されていた安藤昌益については、現在は農山漁村文化協会による労作『安藤昌益全集』(全21巻)等により、その思想の全貌を知ることが可能となっていますが、昌益の著作はもともと難解で、入門書的なものがないかと探していたところ、農文協・農業所センターで出会ったのが本書です。
 著者は1947年神奈川・横須賀市生まれの「在野」の昌益研究家で、「安藤昌益の会」の事務局長も務められています。

本書は、昌益の没後250年と「発見者」狩野亨吉の没後70年を記念して、2012年2月から8月にわたって『北鹿新聞』(昌益と亨吉の郷里である北秋田の地域紙)に連載された記事をベースに、昌益の思想や人物像が分かりやすくまとめられています。

昌益の思想は、絶対平等主義と徹底的な平和主義(軍備の全廃)に象徴されます。
 そのキーワードである「直耕」(ちょっこう、てずからたがやす)とは、農民による農業労働をはじめ、生産のための直接労働全般を指す言葉で、自然界の生命循環にもつながるものです。
 そして、自ら生産しない聖人や為政者を「不耕貪食の徒」(搾取者、寄生生活者)と強烈に批判し、農耕を軸に自然と一体となった平等な世の中(自然の世)を理想としています。そのためにも、搾取・支配・抑圧の手段としての武力・暴力を否定しているのです。

封建制の江戸時代中期に昌益のような思想家がいたこと自体驚きですが、現代の「科学万能主義」「経済合理至上主義」にも対抗しうる先駆的な思想として、大いに注目されます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 緊急事態宣言の解除後は神田川クルーズから[10/9]
 https://food-mileage.jp/2021/10/09/blog-338/

○ 八幡名子さんが巻き寿司に巻き込んでいるもの(第5回 食と農の市民談話会)[10/11]
 https://food-mileage.jp/2021/10/11/blog-339/

○ ゆっくり農縁(東京・あきる野市)[10/12]
 https://food-mileage.jp/2021/10/12/blog-340/

▼ 筆者が企画・進行役を務める食農市民談話会(全6回)の最終回です。
 まだ少し先ですが参加者募集中です。
 ○ 第6回 食と農の市民談話会
 日時:11月 9日(火)19:00 〜21:00
 話題提供:平賀 緑さん(京都橘大学准教授)
 『食と資本主義の歴史ー人も自然も壊さない経済とは?』(仮題)
 場所:オンライン
 主催:NPO 市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeetings/
 (参考)平賀緑さん『食べものから学ぶ世界史』(2021.7、岩波ジュニア新書)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b584818.html

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 連続ウェブ講座2021第6回 地球温暖化
 講師: 江守正多さん(国立環境研究所)
 日時:10月26日(火)18:00〜19:00
 場所:オンライン
 主催:原子力資料情報室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://cnic.jp/39435

○ ゆっくり農縁で裸足ウォーキング&収穫祭
 日時:10月31日(日)10:00〜
 場所:ゆっくり農縁(東京・あきる野市)
 主催:(一社)日本ウォーキングインストラクター協会 MAKO
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/561448795124541/

○ 第41回 衆議院総選挙、最高裁判所裁判官国民審査
 日時:10月31日(日)7:00〜20:00
 (時間は投票所によって異なる場合があります。期日前投票は20日(水)〜30日(土))
  取りあえず投票には行きましょう。
 (詳細↓)
 https://www.soumu.go.jp/2021senkyo/index.html

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「農薬や化学肥料など文明の利器を使えば、もっと楽でしょうに」
「まあ、痩せ(野生)我慢です」

コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.229は11月5日(金)[和暦 神無月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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