−ナオミ・クライン『地球が燃えている−気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(2020.11、大月書店)
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b532892.html
『ショック・ドクトリン』で戦争や天災など大惨事に便乗する多国籍企業等の実態を暴いたジャーナリストが、本書では、略奪型資本主義から脱炭素社会へ転換するビジョン(グリーン・ニューディール)を示しています。
気候危機が深刻化するなか、著者はよく「気候変動を止めるために個人として何ができるか」という質問を受けるそうです。それに対して著者は「何もないというのが事実。あなたひとりでは何もできないのです」と答えるとのこと。
気候変動問題は、個人がライフスタイルを変えるだけでは解決できないと断言しているのです。
一方、危機の中心には地球上でもっとも裕福な20%の人々の「過剰消費」があるとも指摘しています。
そもそも貪欲な無制限の消費で成り立つ近代資本主義は、アフリカから盗み出された人々(奴隷)と先住民から盗み取った土地(植民地)に対する残忍な収奪から始まったもので。現在の私たちにも、火災時に避難することも困難なバングラデシュの工場で衣類を作っている女性や、コンゴでコバルトを採掘している子ども達の姿は見えなくなっています。
気候危機は、貧困や人種差別とも結びついているのです。
著者は、現に各地で取り組まれているコミュニティレベルの活動(再生可能エネルギー、コミュニティ支援農業やファーマーズマーケット、協同組合セクター等)を高く評価する一方で、気候危機に対応するには地域での活動だけでは不十分であるとし、路面電車や配電網に対する計画的な投資とともに、組織化されたグローバルな集団的な行動が必要であるとしています(子ども達による気候マーチも高く評価しています)。
著者は、ある若い環境活動家に語りかけます。
「世界への責任は一人の肩に懸かっているのではない。あなたはひとりではない。何百万人もの人がすでにかかわっている運動の一部。あなたはあなたが思う活動を行えばいい。そうすれば運動を長く持続することができる。それこそが必要なもの」
出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
No.230、2021年11月19日(金)[和暦 神無月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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