【メルマガ】F.M.Letter No.233

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.233◇
 2022年1月3日(月)[和暦 師走朔日]配信
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◆ F.M.豆知識   DID(人口集中)地区人口割合と農家割合の推移
◆ O.カレント  食と農の市民談話会 Seson2
◆ ほんのさわり ポール・B・トンプソン『食農倫理学の長い旅』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 新型コロナウイルスが感染拡大の兆しを見せるなど不穏な年明けとなりました。本年も「食と農の間の距離」を少しでも縮めることを自らのテーマとしていきます。どうぞよろしくお願いします。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、2022年も和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に登録下さった皆様に配信させて頂きます(和暦では師走に入ったばかりです)。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−DID(人口集中)地区人口割合と農家割合の推移−

「食と農の間の距離」が拡がってしまい、多くの消費者が産地や生産者のことを「自分ゴト」として意識できなくなったった要因・背景には様々なものがありますが、その一つは単純(かつ明白)なものです。
 リンク先のグラフの緑の折れ線グラフは、総世帯数に占める農家世帯の割合の推移です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/01/233_DID.pdf

1960年には農家は全世帯の26%以上を占めていました。言わば全人口の1/4以上は農家出身だったのです。ところがこの農家の割合は大きく低下し、現在は4%弱と、農家は本当に少数派となってしまっています。

一方、赤い折れ線グラフは、総人口に占めるDID(人口集中)地区人口の割合です。
 これは1970年には半分強だったのが、農村部から都市部への人口移動が進んだ結果、現在は約7割となっています。見回しても、生産者の姿や農業生産の現場は見えなくなっているのです。
 このような事情が、農業や生産者のことを身近に感じられなくなった背景の一つであることは間違いないと思われます。

[データの出典]
 総務省「国勢調査」
 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521&tstat=000001011777
 農林水産省「農(林)業センサス」   
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/past/stats.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−「食と農の市民談話会」Seson2−

食と農の課題を「自分ゴト」とすることで「食と農の間の距離」を縮めるきっかけとすることをねらいに、2021年6〜11月にかけて「食と農の市民談話会」を開催しました(全6回。別に番外編として「放談会」も開催)。各回、ユニークで先進的な活動をされている方から話題提供を頂き、毎回20名以上の参加者を交えて談話(意見交換など)を行うことができました。
 本年1〜3月にかけで、以下によりSeason2 を開催します。
 ざっくばらんな会ですので、「食べものや一次産業のことに何となく関心はあるけど、よく知らないな〜」といった方を含め、多くの方の参加をお待ちしています。

・第7回 2022年1月18日(火)
 「有機農業の意義と可能性」(仮題)
  話題提供:浅見 彰宏さん(福島・喜多方市山都、ひぐらし農園、福島県有機農業ネットワーク理事長)
 (参考)https://aizuasaichi.com/higurashi-farm/

・第8回 2022年2月15日(火)
 「『限界集落』での暮らしとなりわい」(仮題)
  話題提供:赤木(谷内)美名子さん(新潟・上越市大賀、農業、もんぺ製作所)
 (参考)https://monpeseisakusho.com/

・第9回 2022年3月15日(火)
 「漁協で働くということ」(仮題)
  話題提供:森 歩(あゆみ)さん(兵庫・香美町香住、但馬漁業協同組合(JF但馬)勤務)
 (参考)https://www.jftajima.com/

申し込み等はこちら(NPO市民科学研究室HP)(市民研の正会員等の方以外は事前に参加費の支払い(500円/回)が必要です)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeeting02_202201/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−ポール・B・トンプソン『食農倫理学の長い旅−<食べる>のどこに倫理はあるのか』(2021年3月、勁草書房)−
 https://www.keisoshobo.co.jp/book/b557039.html

原著のタイトルは“From Field to Fork − Food Ethics for Everyone”。
 食農倫理学(Food Ethics)という言葉は私は初めて聞きましたが、農場から食卓まで全ての人にとっての「良い食」について考察する分野のようです。

大部で、しかも必ずしも読みやすいとは言えません。それは「良い食とは何か」という単純な答えを与えてくれていないためです。
 例えば動物福祉の関係では、放し飼いされた鶏は本性に基いて「つつき合い」をして弱い個体にストレスや暴力を及ぼす面があること、菜食主義の主張は食の多様性(肉を食べるささやかな喜び等)を無視(軽蔑、礼を失)した簡略化を伴っていること、遺伝子組換えなどバイオテクノロジーは世界の貧困層の飢餓の克服(社会的公正の実現)という面では非常に有用であること等が論じられています。
 また、「たちまち多くの人を惹きつけた」フードマイルについては、「単純に説得力に欠けているためバブルは弾けた」ものの「より環境的に持続可能な消費の選択を目指す」思考を刺激したものと評価しています。
 さらに、都市部の人々の「フードリテラシー」(その食べものがどこから来ているのか、どのように生産されているかについての一般知識)の喪失に強い懸念が表明されています。

著者によると、現在の食や農については、市場や生産性、規模拡大を重視する「産業哲学」と、地産地消やスローフード、小規模農家を尊重する「農者(アグラリアン)哲学」がせめぎ合っているとのこと。
 しかし著者が重視しているのは二分法ではなく、拙速な議論を避け、問題が交差する点で出会った誰とでも(反論を受けても)忍耐と敬意をもって「寛容な対話」を行い、つながりや摩擦を探っていく姿勢であるとしています。
 間違いなく座右の書の一冊となるであろう本と巡り会えた幸福感を、年初に味わうことができました。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 森田ミツと井深八重[12/20]
 https://food-mileage.jp/2021/12/20/blog-354/

○ 番外編「食と農の市民放談会」[12/30]
 https://food-mileage.jp/2021/12/30/blog-355/

○ 2021(令和三)年も暮れます。[12/31]
 https://food-mileage.jp/2021/12/31/blog-356/

▼ 縮小社会研究会(京都市)で、フード・マイレージについて話題提供させて頂きます。
 第60回研究会「フード・マイレージについて」
 日時:1月17日、19:30〜21:00
 場所:オンライン
 (詳細、問合せ等↓)
 http://shukusho.org/data/60announcement.pdf

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 今夜もご機嫌@銀座で農業
 日時:1月6日(木) 18:30〜19:30
 場所:中央区立環境情報センター(東京・京橋)[予定]
 主催:Slow Food Ginza
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/635499994474204

○ 奥沢ブッククラブ第75回
  課題本:平賀緑さん『食べものから学ぶ世界史 』
 日時:1月10日(月) 19:00〜21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/1027085238023540

○ 食と農の市民談話会(Season2、オーシャン・カレント欄参照)
 日時:1月18日(火)19:00〜21:00
 話題提供:浅見 彰宏さん(福島・喜多方市)
 「有機農業の意義と可能性」(仮題)
 場所:オンライン
 主催:NPO市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeeting02_202201/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「牛乳や乳製品は、当たり前の日常に欠かせなくなったね」
「ニュー(乳)ノーマルね」

お節にも乳製品を。
 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.234は1月18日(火)[和暦 師走十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます(そろそろ2022年版を求めないと)。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 発行システム:『まぐまぐ!』
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 バックナンバー
  https://food-mileage.jp/category/mm/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  https://food-mileage.jp/
 (新年からカバー写真を山梨・北杜市の冬みず田んぼに変更しました。)
 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
  https://food-mileage.jp/category/blog/