【メルマガ】F.M.Letter No.240

去る2022年4月15日(金)[和暦 弥生十五日]、登録下さっている読者の皆様に以下のメルマガを配信させて頂きました。
 なお、ウェブ掲載にはタイムラグがあるため終了してしまったイベント等もありますので、よろしかったら以下から登録(無料)して頂ければ幸いです。
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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◇フード・マイレージ資料室 通信 No.240
 2022年4月15日(金)[和暦 弥生十五日]配信
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◆ F.M.豆知識  米の購入先の変化
◆ O.カレント  過去最高値を更新するFAO食料価格指数
◆ ほんのさわり 保阪正康『五・一五事件』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 武力侵攻開始から1月半を過ぎても、未だウクライナでの戦火はやみません。一刻も早い停戦を祈るばかりです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−米の購入先の変化−

ウクライナ危機により世界的に食料安全保障に対する関心・懸念が高まっていますが、日本の場合、主食である米が国内自給できていることは大きな強みです。
 その日本の消費者の精米の購入先をみると、スーパーマーケットが49.8%(2020年度、以下同じ。)と約半分を占めており、ドラッグストア5.7%、ディスカウントストア3.9%、生協7.0%、米穀専門店2.4%等となっています。また、生産者からの直接購入が5.0%、インターネットショップが9.7%あります。

リンク先の図240の横軸は、購入先のシェアの2017年度から2022年度への変化を示しています。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/04/240_nyushu.pdf
 
 最もシェアが大きいスーパーマーケットのシェアは49.7%から50.5%へとほぼ横ばいで、ドラッグストアは1.8倍(3.7%→6.6%)、ディスカウントストアは1.3倍(2.8%→3.8%)とシェアを高めており、逆に生協は0.8倍(8.1%→6.4%)、米穀専門店等は0.9倍(2.7%→2.4%)とシェアを落としています。

一方、縦軸は2019年度から21年度の3年間の平均購入価格を示しています。
 このグラフからは、相対的に安価なドラッグストアやディスカウントストアのシェアが高まっていることが分かります。つまり、米についても消費者の価格志向が高まっていることが伺えるのですが、これは、生産者に再生産可能な価格を保証するという観点からは好ましいことではありません。

近年、「脱成長」という言葉がもてはやされていますが、成長しない(所得が伸びない)ことは、結果として食料の安定供給に支障をもたらす恐れがあることにも留意する必要があるのではないでしょうか。

[資料]
 農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(2022年4月号、元データは米穀供給安定支援機構)
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/mr-133.pdf
 注:上記資料(消費4-2)より筆者作成。

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−過去最高値を更新するFAO食料価格指数−

FAOのウェブサイトより。https://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/

去る4月8日、国連食糧農業機関(FAO)が公表した2022年3月の世界の食料価格指数(2014〜16年=100)は159.3と、前月の141.4から17.9ポイント(12.6%)上昇し、1990年の集計開始以来、2か月連続で最高値を記録しました。

穀物は前月から17.1%上昇しており、特に紛争のためウクライナとロシアからの輸出が混乱していること等から小麦は19.7%、とうもろこし等の粗粒穀物は20.4%と高騰しています。
 さらに植物油についても、ウクライナ産ひまわり油の輸出減の影響により23.2%上昇しています。

これら世界の食料価格の高騰は、特に国内における食料供給基盤(自給力)がぜい弱なアフリカ、中東、アジア諸国においては深刻な政情・社会不安につながることが懸念されています。2011年、エジプトのムバラク政権を倒した反政府運動(アラブの春)の背景には、ロシア・ウクライナ産小麦の供給不安があったことが思い出されます。
 日本でも小麦や植物油の値上げが国民生活を直撃しているものの大きな社会不安となっていないのは、主食である米が国内自給できているという安心感によるものと考えられます。

[参考]
“FAO Food Price Index”(2022.4/8)
 https://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−保阪正康『五・一五事件-橘孝三郎と愛郷塾の軌跡』(2019.4、ちくま文庫)−
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480435873/

本書は、1939年北海道生まれで昭和史の実証的ルポルタージュの第一人者が、五・一五事件の首謀者とされた橘孝三郎に対する長時間のインタビューをもとに著したものです。1973年(当時、著者33歳、橘孝三郎80歳)の刊行から46年後に文庫化されました。

代表的な農本主義者の一人とされる橘は、水戸の出身。第一高等学校に進むも中退して郷里に帰り、自ら山野を開墾して家族的小農を基礎とする協同農業を実践しつつ、農村青年教育のための愛郷塾を主宰しました。
 「人類は大地の赤子」「農は真に人間の生きる道」「土から離れた人間が土を考えない教育を受け、そして国を動かしてゆく。こんな馬鹿なことがあっていいものか」等の言葉を遺しています。

昭和初期の松方デフレの下、恐慌と呼ばれるほど極度に窮乏しつつある農村の状況を憂えた橘は、1932(昭和7)年、若き塾生達を率いて決起します。昭和の軍国主義の幕開け・日本ファシズムの導火線と位置付けられる五・一五事件です。
 主導したのは一部の海軍将校でしたが、農本思想家としての知名度が高かった橘は首謀者と目され、現に事件後の裁判では、犬養首相を射殺した将校は禁錮十五年とされたのに対して橘は無期懲役の判決を受けています(後に恩赦)。
 このことが、戦後、「農本主義的特質が非常に優位を占めていることが日本ファシズムの特徴」(丸山眞男)と評価されることにつながったのです。

ただし、橘と塾生達がターゲットとしたのは、首相官邸などではなく変電所でした。
 東京中の電気を消し、暗黒にすることで、農村に犠牲を強いている現在の資本主義や、それによって成り立っている日常生活の異常さを都会人に気づかせることができるのではないか、という狙いだったようです。
 しかし、手榴弾の多くが不発に終わるなど準備不足もあって、街灯もネオンサインも、一瞬も消すことはできませんでした。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ Present Tree in くまもと山都2(2日目)[4/2]
 https://food-mileage.jp/2022/04/02/blog-370/

○ 全国に「ビレッジプライド」を![4/13]
 https://food-mileage.jp/2022/04/13/blog-371/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 脱成長ミーティング
 日時:4月16日(土)19:00〜21:30
 話題提供:高坂 勝さん、白川真澄さん
 場所:オンライン
 主催:脱成長ミーティング
 (詳細、問合せ等↓)
 http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/di22hui_kai_cui_jiang_zuo.html

○ 2022 URAYAMAi(裏山米)種蒔き
 日時:4月24日(日)10:00〜15:00
 場所:山梨・北杜市高根町
 主催:裏山公開版
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/693179151704812

○ 本木上堰 春の浚いボランティア
 日時:5月4日(水)8:00〜16:00
 場所:福島・喜多方市山都町
 主催:本木・早稲谷 堰と里山を守る会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/532340294902936

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 ウクライナの戦火がやむまでお休み中です(早く再開したいものです)。
 過去のバックナンバーは拙ウェブサイトに写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.241は5月1日(日)[和暦 卯月朔日]に配信予定です(戦火がやんでいることを祈りつつ)。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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