【ブログ】生活クラブ神奈川 職員研修

2024年6月18日(火)は、残念ながら予報が的中して強い雨に。
 前日も翌日も好天、よりによってこの日だけ悪天候という先月の能登と同じパターン。いよいよ「雨男」かも知れません。

 雨合羽を羽織り頑丈な傘を差して、早めに自宅を出発。お陰で予定よりかなり早く新横浜駅に到着したので、喫茶店で一休み、資料の確認。
 再び強い雨の中を10分弱歩き、会場のオルタナティブ生活館に到着。健康講座やカルチャースクールなど情報発信の拠点となっているモダンレトロな建物です。

6階の会議室で10時から開催されたのは、2024年度ユニオン合同研修。テーマは「食の自治」です。研修担当の一政信子さんとは、かねて東京・銀座での勉強会でご一緒する機会も多く、お声掛けして下さったのです(以下、受講生の発言等も文責は中田にあります)。

 受講生は、県内各センターに所属されている8名の方。
 まず、自己紹介を兼ねて事前課題(「日本の農業と食の未来に関して、今、一番課題と思っていることと、その解決のために必要と考えること」)の発表。入職2年目の方から30年のベテランの方まで。いずれも生協の最前線で、食料品の配達などに携わられている方ばかりです。
 一番課題と思っていることについては、食料自給力の低下、農家の高齢化、持続的とはいえない産業化した農業、安ければいいという消費者の意識等。
 解決策としては、新規就農者に対する国や自治体の支援、適正価格で食べる(買う)人を増やす、農業を身近に感じられる環境づくり等の発言がありました。
 レポートも写真やグラフを用いるなど力作ばかり。発表の内容からも、この日の研修に対する参加者の皆さんの意気込みの高さが伺えます。

中田からスライドを用いて説明。
 一政さんから特にリクエストがあったのは、食料・農業・農村基本法の改正の概要、「日本が飢える」についての鈴木宣弘さんと山下一仁さんの著書の論点の比較整理。いずれもなかなか手ごわいテーマでした。

当日の配布資料の表紙。全体はこちら

基本法の関連(第一部)では、まず、1961年の農業基本法制定時は連日、新聞でもトップで報じられていたのに対して、今回の改正ではほとんど報道もされなかったなど、そもそも市民の農業に対する関心、意識が希薄になっているのではないかと説明。
 基本法改正の背景、野党の修正案がほとんど反映されなかったこと、「合理的な価格形成」についての条文が新設されたこと、消費者の役割について内容が拡充されたことを説明。

 さらに、年度内に基本計画が策定される予定であり、パブコメ等の際には、ぜひ、皆さんの意見を寄せて頂きたい等と説明しました。

質疑応答と意見交換。
 「合理的な価格」について、「本当は生協の食品を買いたいが安いものを選ばざるを得ない」との組合員の声を紹介して下さった方。SNS用に写真だけ撮って食べずに捨ててしまう人もいるとの話。地元の食材を学校給食で使うことで自給率も上がるのではないか等の意見。
 基本法が改正されたこと自体知らなかったとする発言もありました。

 ここまでで12時30分を回り、昼食休憩。
 ワーカーズのお弁当を頂きました。自ら借りている畑で栽培・収穫したミニトマトを持参して下さった方も。見た目もつやつや、美味です。
 廊下にはSDGsと関連する活動内容(国産鶏種の飼養等)を示した興味深いポスターも掲示されていました。

13時30分から再開した第二部は、鈴木宣弘さん『世界で最初に飢えるのは日本』山下一仁さん『日本が飢える!』の論点を比較しつつ整理。
 一政さんのリクエストでしたが、私にはなかなか難しいテーマでした。そもそもお二人の著書(ベストセラー)を論評できる立場でもありません。ちなみにお二人とも農水省OBとして存じ上げている方で、特に鈴木さんとは同期入省で親しくさせて頂いています。

 私からは、まず、どちらも刺激的なタイトルだが、安心しきっている飽食状態の日本の消費者に対しては、いくら危機感を煽っても煽り過ぎることはないのではないかと発言。
 また、現状認識(日本農業の保護水準等)には大きく異なる部分はあるものの、水田農業の重視、直接支払いの拡充など共通する主張も多いこと等について説明。

 また、いずれにしても論調には100%正しいものも100%間違っているものもなく、単純に甲乙をつけることはできない。簡単に結論を得ようとせず、モヤモヤを抱えたまま自分で考えること(ネガティブ・ケイパビリティ)が必要では、とまとめさせて頂きました。

続く第三部はフード・マイレージについて。
 結局、すべての説明が終了したのは15時30分頃。長時間、聴いているだけでも大変ですが、研修生の皆さんはこれから個人の行動計画の作成。続いて2つのグループに分かれてのディスカッション。
 さらに、その結果を1枚の紙にまとめて発表です。グループの代表者だけではなく、全員から発言がありました。

受講生の皆さんから出された意見や提案は、以下のようなものでした(順不同)。
 「まず農業や食のことについて興味を持ってもらうことが必要。教育(食育)の役割が大きい」
 「農業はなかなか休みも取れないが、誰かがやらなければいけない重要な仕事。環境問題は重要だが、農業者の労働環境も重要」「調整区域内にあるため、廃業したくてもやめられないという農家もいる」
 「誰でも手軽に農業が始められるようにすることが重要では」「農業(農村)振興のためには景観や観光の視点も必要」

 「消費者が買い支えるという意識が必要だが、そのためにはより適切な表示も必要」「店舗でももっと産地をアピールすることで、地元産への愛着がわくのではないか」
 「魚も含めて、日本型食生活を取り戻すことが必要」「子どもができて食に対する関心が高くなった」

 「消費者の多くはいいものを食べたいと思っているが、収入面で制約がある。きちんと食べてくれる人が増えないのは、経済全体の問題ではないか」
 「農家に配達に行くと野菜をくれることがある。穫れ過ぎることもあるらしい。これらをフードドライブや物々交換で活用できれば、作る人のモチベーションにもなるのでは」

 「工業化が生態系を破壊してきた。成長を目指す社会システムを転換する必要がある」
 一政さんからも、JA横浜と連携して開設した農業体験農園の事例を紹介して下さいました。

 中田からも、適宜、コメントさせて頂きました。
 時間は17時近くになり、受講生の皆さんはこの後もまとめやアンケート記入が予定されていたようですが、失礼させて頂きました。雨はだいぶ小降りになっていました。
 長丁場の研修会でしたが、生協という「食」の最前線の現場で、組合員等と接する中で得られた経験に基づく貴重な意見や提言を聴くことができました。また、後日、詳しいアンケート結果も頂きました。
 私にとって得難い貴重な経験となりました。

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997