◇フード・マイレージ資料室 通信 No.294◇
2024年6月20日(木)[和暦 皐月十五日]
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◆ F.M.豆知識 出生率と都市化との関連
◆ O.カレント 「都市アリ地獄説」
◆ ほんのさわり 河合雅雄『子どもと自然』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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七十二候は梅子黄(うめのみきばむ)。和歌山では梅が不作とのニュースが気掛かりです。明日は夏至を迎えます。今号のテーマは「出生率と都市化」としました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−出生率と都市化との関連−
【ポイント】
全国平均で過去最低を更新した合計特殊出生率は、東京都をはじめとする大都市部では特に低くなっています。
本年(2024)6月5日(水)、厚生労働省は「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を公表しました。
それによると、出生数は過去最低で17年連続で死亡数を下回るなど人口減少のペースが加速していることが明らかになり、また、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」(以下、「出生率」)は1.20となり、過去最低を更新しました。
出生率低下の原因には様々なものあると考えられますが、リンク先の図294は、出生率と、市街化区域内にある世帯の割合を都道府県別に示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/06/294_shusshou.pdf
これによると、2023年において最も出生率が低いのは東京都の0.99(初めて1を割り込み、都知事選の争点の一つにもなっています)で、最も高い沖縄県(1.60)とは0.6ポイント以上という大きな差があります。また、総じて西日本の方が出生率は高くなっています。
一方、東京都では世帯のほとんど(99.6%)が市街化区域内にあるのに対して、沖縄県では51.8%にとどまっています。
全体的にみると、市街化区域内にある世帯の割合が多いほど出生率は低いという傾向が見て取れます(本図は世帯についてのグラフですか、人口でも同様の傾向が見られます)。つまり、都市化が進んでいる地域ほど出生率は低くなっているのです。
少子化対策は日本全体にとって最重要の課題となっており、国としても様々な対策を講じていますが、人口集中の是正や分散の必要性については意識されていないようです。
[データの出典]
厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」、総務省「令和2年(2020)国勢調査」から作成。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/index.html
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/index.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−「都市アリ地獄説」−
【ポイント】
歴史人口学者の速水 融氏は「大都市は周辺の地域から人を引き付けておいて高い死亡率で人を殺してしまう」という「都市アリ地獄説」を唱えています。
以前にも紹介しましたが、歴史人口学者の速水 融(あきら)氏が唱えているのが「都市アリ地獄説」です。
速水氏は江戸時代の日本の地域別人口の動向を分析し、飢饉のあった年を除くとほとんどの地域で人口が増加しているなか、例外的に江戸、京、大阪という大都市を含む関東、近畿地方でのみ地域で人口が減っていることを明らかにしました。
このことについて、速水氏は「大都市は周辺の地域から人を引き付けておいて高い死亡率で人を殺してしまう」「江戸は住民にとって健康な地ではなく、周辺の農村地域から健康な人を吸い込まないと人口が維持できない」と分析し、「都市アリ地獄説」と命名しました。ヨーロッパにおいても同様の現象がみられるそうです。
江戸時代の日本では、江戸への人口流出により、特に北関東(現在の群馬、栃木、茨城)における人口減少が顕著だったのですが、その傾向は現在は全国に拡大しているかのようです。
[参考]速水 融『歴史人口学で見た日本』(ほんのさわり)
https://food-mileage.jp/2024/05/14/hon-291/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−河合雅雄『子どもと自然』(1990/3、岩波新書)−
https://www.iwanami.co.jp/book/b267932.html
【ポイント】
著者は、子ども時代には、36億年もかかって創り出された様々ないのち(自然)の中に自分を位置付けて考える機会が必要としています。
著者は1924年兵庫県生まれの霊長類学者。京都大学名誉教授、(財)日本モンキーセンター所長等を歴任し、2021年に逝去されました。
本書で著者は一貫して、人間(特に子ども)が自然に親しむことの大切さを訴えています。
農業と牧畜の発明によって自然を自らの手で改変することを覚えた人類は、やがて物質文明を急速に発展させ、自分たちをとりまく自然を大きく破壊してしまいました。子どもたちは森や道路など「仲間と遊ぶ場」から駆逐されて家の中に閉じ込められ、あたかも家畜のように精神を衰弱させられています。このような現状を著者は「ぬきさしならない危険な状態」「自らの手で墓穴を掘りかけている」としています。
緑のなかで私たちの心が休まるのは、先祖であるサルが森の中で樹上生活をしていたためとのこと。この記憶と自然への適応感覚(内なる自然)が、人類の存在の根本を形成しているのだそうです。
著者は、「われわれが住んでいる地球という星が、36億年もの悠久の時間をかけて創り出した様々ないのちが目の前にある。その中に自分の存在を位置付けて考えるとき、いのちの不思議と畏敬の念が呼び起こされるであろう。永遠のいのちの相にふれること、そんな機会を、子ども時代にぜひ持ちたい」と記しています。
自然や緑と触れる機会の乏しい大都市部は子どもを産み育てる環境として良好とはいえず、このことが低い出生率に現れているのかも知れません。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 福島第一原発の今と福島の人びとの思い[6/14]
https://food-mileage.jp/2024/06/14/blog-512/
○ プラネタリーヘルスダイエット(第203回 霞ヶ関ばたけ)[6/17]
https://food-mileage.jp/2024/06/17/blog-513/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ ゆるみの時間vol.4 −ゆるみと脱成長−
日時:6月30日(日)10:00〜11:20 ゆるみの時間
11:30〜12:30 高坂勝さんおはなし会
場所:縁ひらく庭 百才(ももとせ、東京・東村山市久米川町4)
主催:縁ひらく庭 百才
(詳細、問合せ等↓)
https://www.instagram.com/p/C7VHlz0yXlG/
○ 【祝!10周年!】オープンラボ2024
日時:6月30日(日)9:30〜11:15
場所:ご近所ラボ新橋(東京・港区新橋6)
主催:ご近所ラボ新橋
(詳細、問合せ等↓)
https://gokinjo-i.jp/240630-2/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
ウクライナとガザでの停戦が実現するまではお休みです。過去のアーカイブは以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
次号No.295は7月6日(土)[和暦 水無月朔日]に配信予定です。
正確でより役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今年は北斎手帳)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
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