自宅近くに一画を借りている市民農園。
ゴマは密植し過ぎたせいか、草丈が伸びないまま花が着き始めました。コットンも大きくなりません。あれだけ獲れたキュウリはほぼ終了。枝豆は豊作です。
下左の写真は東村山市を南北に貫く府中街道。ほぼ往古の鎌倉街道上道に沿っており、写真の奥の方には、鎌倉に攻め上る新田義貞が幕府軍を破った久米川古戦場址があります。
その府中街道沿いに、緑に囲まれた古民家があります。ここが「縁ひらく庭・百才(ももとせ)」。築60年の日本家屋をリノベーションしたシェアスペースです。
2024年6月30日(日)の午前中、心身を整えるワークショップ・ゆるみの時間が開催されました。4回目となるそうです。後半、11時30分から開催された「おはなし会」のゲストは、髙坂 勝(こうさか・まさる)さんです。
髙坂さんは1970年神奈川生まれ。大手百貨店勤務を経て池袋にオーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(たまTSUKI)をオープン。2011年には千葉・匝瑳氏市で米作りや移住あっせんを行うNPO “SOSA Project” を設立、二地点居住を始め、2018年には完全移住されました。現在は関東学院大学で非常勤講師を務め、著書に『減速して自由に生きる-ダウンシフターズ』等があります。
私は「たまTSUKI」に何度かお邪魔したり、講演会をお聴きしたり。特に髙坂さんが共同代表を務められていた「脱成長ミーティング」では多くの学びを頂きました。
昨年6月に匝瑳をお訪ねし、古民家に泊まらせて頂いて以来の再会です。
快適な広い座敷に、参加者10名ほどが車座になりました。高い天井を見上げると見事な柱です。
20年ほどサラリーマン(人事関係)をされた後に退職し、現在は複数のバイトをされているという方。会社をやめて求職中という若い男性。訪問看護をされている方。都区内から来られた方や匝瑳での米作りに参加しておられる方など。
やっちさんが髙坂さんに語りかけるかたちで、「おはなし会」はゆるりと始まりました(文責・中田)。
農作業の経験がなかったやっちさんは、この日の髙坂さんとの対談のために田植えを体験されてきたそうです。「田んぼの中にたくさんの小さな生き物がいるのが見えて、驚いた」というやっちさんに、さっそく髙坂さんからは「それは素晴らしい超能力だ」とツッコミが入りました。ちなみに髙坂さんは、この家に住んでいるという座敷童に会うのが、東村山訪問の目的の一つだったとのこと。
やっちさんは、「髙坂さんから、豊かに、健康に生きるためのヒントを得ることができれば」と問いかけました。
髙坂さんは開口一番、
「自分は一所懸命生きているんだけど、力が抜けていると言われるんだよね」と笑いをとります。会場の空気がさらに和みました。
「オーガニックバーを始めて、自分もオーガニックの食材を食べるようになると、体がダルくなくなった。自分は理屈から入る人間だが、食べ物で体も心も変わるんだ、と実感した。自分で食べ物を作れることが最強と確信したのは、世界の格差と日本の未来の危うさを考えて。途上国から食を輸入することはその国の自給できる土地を奪うこと、そして日本でも格差が広がる中で食べ物を作れることは一番の安心になり、食が確保できれば収入小さくとも暮らしが成り立つので就職せずともナリワイ起業しやすくなるし、さらにはそうして自給率が高まればこの国の安全保障を高め、他国に進出侵略する必要を生まないための平和維持貢献、と考えて米作りを始め、自らも匝瑳に移住した」
「教えている大学生にアンケートをとると、近年、物は少ない方がいい、地方に移住したいとする大学生が急増している。若い人たちの意識を含め、社会の雰囲気は大きく変わってきていると実感している」
「私たちは生活の不安を煽られて投資を促されているが、そのカネは軍需産業を潤しているだけ。数字だけで相手の顔が見えていない。これでは循環とは言えない」
「マルチワーク(小さな複数の生業)という生き方が重要。国の農業白書や日本経済新聞なども半農半Xを取り上げるようになった」
やっちさんに促され、会場の参加者からも発言。匝瑳に米作りに通っておられる女性からは
「この3か月、片道3時間近くかけて通っているが、田んぼにいるのは本当に心地よい。自然な感覚。日常とのギャップが大きいことに戸惑うことになるのではという心配もあったが、意外と境目はないと感じている」との発言。
髙坂さんからは
「里山にいると色んな気づきがある。田んぼの雑草にも役割がある。自分で田んぼをやってみると、食うことには困らないという自信がつく」等の返答。
都内のある区の区議の女性からは
「日々、政治のいびつさを感じつつも、議会で環境問題等について質問している。すると行政はきちんと調べてまじめに答弁してくれる。市民の声が届いているという実感はある」等の発言。
最後に髙坂さんからは、
「やりたいことは、やりつくした感もある。唯一やり残しているとすれば、大げさだが『世界平和』の実現(笑)」
「自分は社会に対する怒りがあって、それに抵抗する姿を見せてきた。バー時代の週休3日制、半農半X、移住、マルチワークなど、自ら率先して行ってきた」
「これからの時代には声の大きいヒーローは必要ない。一人ひとりが主役となって、社会を暮らしやすいものに変えていく。皆さんもその一人になってほしい。一緒に楽しくやっていきましょう」と締めくくられました。
終了後も、多くの方が髙坂さんを取り巻いて質問などを浴びせていました。
この日の髙坂さんの話は、様々な悩みやモヤモヤを抱えている方たちに、それぞれのかたちで刺さったようです。
その後は、都合のつく7名ほどで駅東口近くにあるお蕎麦/うどん屋さんへ。細かい雨が落ち始めています。
髙坂さんは、地元名物の肉汁うどんの黒っぽい麺の色に驚きつつも、美味しいと食べて下さいました。
髙坂さん、今回も貴重でカゲキなお話を有難うございました。また、お目に掛かれるのを楽しみにしています。
それにしても「たまTSUKI」は、悩める人たちが(若い人も年配者も)気軽に足を運んで相談でき、周りの人にも話を聞いてもらえる貴重な「社会的インフラ」だったという思いを、改めて強くしました。
「たまTSUKI」も「脱成長ミーティング」も再開してもらえないかなと(たぶん無理でしょうが)、心の隅で期待している自分がいます。
(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、登録無料)
https://www.mag2.com/m/0001579997