−河合雅雄『子どもと自然』(1990/3、岩波新書)−
https://www.iwanami.co.jp/book/b267932.html
【ポイント】
著者は、子ども時代には、36億年もかかって創り出された様々ないのち(自然)の中に自分を位置付けて考える機会が必要としています。
著者は1924年兵庫県生まれの霊長類学者。京都大学名誉教授、(財)日本モンキーセンター所長等を歴任し、2021年に逝去されました。
本書で著者は一貫して、人間(特に子ども)が自然に親しむことの大切さを訴えています。
農業と牧畜の発明によって自然を自らの手で改変することを覚えた人類は、やがて物質文明を急速に発展させ、自分たちをとりまく自然を大きく破壊してしまいました。子どもたちは森や道路など「仲間と遊ぶ場」から駆逐されて家の中に閉じ込められ、あたかも家畜のように精神を衰弱させられています。このような現状を著者は「ぬきさしならない危険な状態」「自らの手で墓穴を掘りかけている」としています。
緑のなかで私たちの心が休まるのは、先祖であるサルが森の中で樹上生活をしていたためとのこと。この記憶と自然への適応感覚(内なる自然)が、人類の存在の根本を形成しているのだそうです。
著者は、「われわれが住んでいる地球という星が、36億年もの悠久の時間をかけて創り出した様々ないのちが目の前にある。その中に自分の存在を位置付けて考えるとき、いのちの不思議と畏敬の念が呼び起こされるであろう。永遠のいのちの相にふれること、そんな機会を、子ども時代にぜひ持ちたい」と記しています。
自然や緑と触れる機会の乏しい大都市部は子どもを産み育てる環境として良好とはいえず、このことが低い出生率に現れているのかも知れません。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.294、2024年6月20日(木)[和暦 皐月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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