【豆知識】「高騰」する米価格

【ポイント】
 米価格「高騰」等の報道が目立っていますが、過去の推移をみると現在の水準が安定的に継続するとは思えず、何より、生産コストを賄えていない状況が続いています。

7月16日に農林水産省が発表した6月の米の相対取引価格(2023年産米、全銘柄平均、速報)は、玄米60kg当たり1万5,865円となり、約11年ぶりの高値となりました。22年産米の通年平均価格と比べると約2000円(15%)上昇しています。某全国経済紙には「令和の米騒動か」などという不穏な見出しまで現れました。
 価格「高騰」の背景には、高温被害により23年産米の供給量が少ないことに加え、インバウンド(訪日外国人)による外食需要の拡大があるとされています。

それでは、現在の米の価格水準はどの程度高いのでしょうか。
 リンク先の図296は、米の相対取引価格と、需要量(供給純食料)、在庫量の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/07/296_kome.pdf

赤い折れ線グラフをみると、米の価格は年により大きく変動していることが分かります。2012年(東日本大震災の翌年)産米は高かったものの、2014年にかけて、さらに2022年にかけても下落傾向で推移しました。
 確かに現在は高い水準で推移していますが、ようやく2012年産並みに戻したというのが現実で、現在の水準が持続するかは不透明な状況にあることが分かります。もっとも、今年は新潟県等においては水不足が懸念されており、天候次第では不作となり、さらに高騰する恐れもあります。
 一方、下の折れ線グラフは、在庫量(緑色)と需要量(青色)です。
 米の価格は在庫水準とは負の相関がみて取れますが、需要は、価格水準とはほぼ無関係に減少傾向で推移しています。少なくともこれまでは、米の価格が下がったからといって(米が安くなったからといって)消費が増えることはなかったのです。

さらに重要なことは、現在の「高騰」している米価水準であっても、農家の生産コストを賄えていないことです。米の全算入生産費は全国平均で1万5,273円と、運賃や包装代が含まれている相対取引価格(1万5,865円)とほぼ同水準に過ぎません。

[データの出典]
 農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(資料編・価格編)、「食料需給表」から作成。
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/mr.html
 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/
(参考)
 令和4年産 米生産費(個別経営体)
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/noukei/nou_seisanhi/r4/kome/index.html

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.296、2024年7月20日(土)[和暦 水無月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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