【メルマガ】F.M.Letter No.297-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.297◇
  2024年8月4日(日)[和暦 文月朔日]
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◆ F.M.豆知識  注視される8月の新潟県の気候
◆ O.カレント  過去最低水準にある米在庫量の意味
◆ ほんのさわり 寮 美千子(文)『ぼくが子どものころ戦争があった』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 間もなく立秋を迎えますが、全国的に猛暑はおさまりません。8月に入った今号も、引き続き米について考えます。戦中・戦後には「飢餓の時代」があったという記憶を新たにしつつ。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−注視される8月の新潟県の気候−

【ポイント】
 新潟県では、昨年の猛暑と水不足により米の品質が大きく低下しました、本年も昨年と同様、猛暑が続いており、8月の気候が気掛かりです。

昨年産の全国の米の作況指数は101と平年並み、1等米比率は60.9%(本年3月末時点。2022年産は78.5%)となりました。しかし都道府県別にみて最もシェアの大きい(8.3%)新潟県では、作況指数は95の「やや不良」となり、一等米比率は14.8%(2022年産は73.9%)と大きく低下しました。これが現在の米価格「高騰」の背景となっています(前号参照)。
 新潟県においては、昨年12月、有識者によって構成される研究会が要因分析と次年度以降の対策についての報告書を公表しました。これによると、品質低下の要因は“災害級の異常気象”ともいえる8月の高温と渇水とのことです。
 リンク先の図297は、一昨年末から今年7月にかけての新潟県内の4か所(高田(上越市)、十日町市、新潟市、相川(佐渡市))の気温と降水量等の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/08/296_niigata.pdf

昨年の気温(平均気温、最高気温)についてみると、いずれの地域においても7月は平年より1〜2℃高い水準だったのが、8月に入って平年を3〜5℃と大きく上回る高温に見舞われたことが分かります。3度の台風等によるフェーン現象もありました。一方、8月の降水量は平年の1〜19%にとどまりました。
 さて、今年の7月の気温は、いずれの地域でも昨年と同様、平年より1℃以上高くなりました。一方、降水量には恵まれたものの、1〜2月の降雪量が少なかったことの影響も懸念されます。
 新潟県では、品種構成を含む作付計画づくり、施肥管理、水管理等の対策に万全を期しているところですが、仮に今年も昨年と同様の気象となった場合には2年連続の不作となり、さらなる価格高騰や品不足等の事態となる恐れも否定できません。
 私たち消費者としては、新潟県における8月の気候を注視しつつ、産地や生産者の努力をサポートしていくという視点が必要です。

[データの出典]
 気象庁「過去の気象データ検索」を用いて作成(右上のバナーからダウンロードできます)。
 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php

(参考)
 新潟県「令和5年産米に関する研究会」
 https://www.pref.niigata.lg.jp/site/nouen/r5inasaku-kenkyukai.html

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−最低水準にある米在庫量の意味−

【ポイント】
 米の在庫量は過去最低水準にあるものの、当面の需給がひっ迫している訳ではありません。しかし、米の1人当たり収穫量は、終戦直後の半分以下となっています。

出典:食料・農業・農村政策審議会 食糧部会 資料(2024年7月30日開催)より(抄)

米の本年6月末時点の民間在庫量は、前年から41万トン少ない156万トン(速報値)となりました。これは比較可能な1999年以降で最も低い水準です。
 この要因は、昨年産米の高温・渇水の影響により品質が低下(精米歩留まりの低下)したことに加えて、食料品全体の価格上昇が続く中で米には「値ごろ感」があったこと、訪日外国人よるインバウンド需要の増加から消費がやや増えたためです。
 一部マスコミは「令和の米騒動」などと、米価格の上昇と店頭での品不足をあおるかのような報道をしていますが、農林水産省は過去の在庫水準(需要量との比較)からみて需給がひっ迫している状況ではないと説明しています。私たち消費者には、過度の買いだめに走らないなど冷静な行動が求められます。

しかし、問題の本質は別のところにあります。
 昨年の米の収穫量は717万トンでしたが、これは飢餓にさいなまれた1946年の912万トンを2割以上下回っています。一方、人口は当時の7575万人から1億2435万人へと1.6倍へと増加していることから、1人当たりの米の収穫量は半分以下となっているのです。
 にもかかわらず、現在の私たちが「飽食」を謳歌できているのは、私たち自身の食生活の変化(嗜好)を反映して、大量の小麦、大豆、畜産物(飼料穀物)等が輸入されているためです。
 しかし今後は、世界的な気候危機、戦争や紛争等のリスクがあることから、これまでのように安定的に大量の食料を輸入し続けていける可能性は小さくなっており、国内で自給できる米の生産を安定的なものとする必要があります。そうでなければ、終戦直後のような厳しい飢餓の時代が再来する事態も否定しえないのです。
 今、私たちの「主食」である米のことを考えるためにも、改めて戦中・戦後の日本の食料事情について思いを馳せる必要があるのではないでしょうか。

[参考]
 食料・農業・農村政策審議会 食糧部会 資料(2024年7月30日開催)
 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/240730/240730.html
 (「参考資料1 ポイント」の冒頭等に在庫量の数値があります。)

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−田中幹夫(原作)、寮美千子(文)、真野正美(絵)『ぼくが子どものころ戦争があった−「いくさの少年期」より』(2024/7、ロクリン社)−
 https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=258550

【ポイント】
 実話を基にした絵本。淡々とした文と絵が、79年目の8月に、改めて平和や食べものの大切さを教えてくれます。

1933年福井県生まれの原作者(弁護士)の体験を基にした絵本。帯には「戦争体験を語れる最後の世代から、これからの日本をつくる世代へどうしても伝えたいこと」とあります。
 太平洋戦争が始まったのは、田中少年が8歳、国民学校初等科三年生の時でした。登校すると全校生徒を前に校長先生が「1億火の玉になって戦いましょう」と訓示。シンガポール陥落を祝う提灯行列で、日の丸を掲げて先頭を歩いた時は、大いに誇らしく思ったそうです。
 ところが暮らしはどんどん悪くなっていきます。食べものは「配給制」になり、おやつがなくなり、ご飯もろくに食べられなくなりました。学校の花壇はつぶされてイモが植えられ、やがて校庭もぜんぶ耕して畑になりました。
 そして空襲、終戦。福井市でも2万6千世帯のうち2万2千の家が焼け、1576人もの人が亡くなりました。そのなかには親戚や友達も。焼け野原で、田中少年はいつもお腹を空かせていたそうです。
 1945年12月の終業式の日に行われた、召集されて戦死した先生たちの慰霊祭。
 校門の向こうに確かに見えた亡き恩師の姿に、田中少年は「ぼくたちは、戦争のない国をきっときっと、作ります」と誓います。淡々とした文章と絵が、心に響きます。

間もなく79年目のヒロシマ・ナガサキの日、終戦記念日を迎えます。食べものの大切さも、忘れてはならない教訓の一つです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 「おいしい未来をつくる読書会 #1」など[7/22]
  https://food-mileage.jp/2024/07/22/blog-524/

○ 青木美希さんを囲む集い−なぜ日本は原発を止められないのか?[7/30]
  https://food-mileage.jp/2024/07/30/blog-525/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

○ 「食の総合科学」研究会
  課題本:真田純子『風景をつくるごはん』
 日時:8月6日(火)10:00〜12:30
 場所:オンライン
 主催:NPO市民科学研究室
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/csijrgfood_202404

○ おいしい未来をつくる読書会 #2
  課題本:アリス・ウォータース『スローフード宣言』
 日時:8月25日(日)20:00〜21:30
 場所:オンライン
 主催:おいしい未来をつくる読書会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://foodsystems4peace-2.peatix.com/
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* 高坂 勝さん(SOSA Project)が、東京新聞の連載で本メルマガのデータ(「農家が多いと出生率上昇?」)を紹介して下さいました。嬉しいことです。有難うございました。
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/343273

* 米令寺忽々のコツコツ小咄。
 五輪の熱戦も個人的には今一つ。ウクライナやパレスチナのことが頭から離れません。
 過去(古くなってしまいました)のアーカイブは、以下に掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.298は8月18日(日)[和暦 文月十五日]に配信予定です。節目の300号が近づいてきました。
 正確でより役に立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』(今年は北斎手帳)を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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