【オーシャン・カレント】最低水準にある米在庫量の意味

【ポイント】
 米の在庫量は過去最低水準にあるものの、当面の需給がひっ迫している訳ではありません。しかし、米の1人当たり収穫量は、終戦直後の半分以下となっています。

出典:食料・農業・農村政策審議会 食糧部会 資料(2024年7月30日開催)より(抄)

米の本年6月末時点の民間在庫量は、前年から41万トン少ない156万トン(速報値)となりました。これは比較可能な1999年以降で最も低い水準です。
 この要因は、昨年産米の高温・渇水の影響により品質が低下(精米歩留まりの低下)したことに加えて、食料品全体の価格上昇が続く中で米には「値ごろ感」があったこと、訪日外国人よるインバウンド需要の増加から消費がやや増えたためです。
 一部マスコミは「令和の米騒動」などと、米価格の上昇と店頭での品不足をあおるかのような報道をしていますが、農林水産省は過去の在庫水準(需要量との比較)からみて需給がひっ迫している状況ではないと説明しています。私たち消費者には、過度の買いだめに走らないなど冷静な行動が求められます。

しかし、問題の本質は別のところにあります。
 昨年の米の収穫量は717万トンでしたが、これは飢餓にさいなまれた1946年の912万トンを2割以上下回っています。一方、人口は当時の7575万人から1億2435万人へと1.6倍へと増加していることから、1人当たりの米の収穫量は半分以下となっているのです。
 にもかかわらず、現在の私たちが「飽食」を謳歌できているのは、私たち自身の食生活の変化(嗜好)を反映して、大量の小麦、大豆、畜産物(飼料穀物)等が輸入されているためです。
 しかし今後は、世界的な気候危機、戦争や紛争等のリスクがあることから、これまでのように安定的に大量の食料を輸入し続けていける可能性は小さくなっており、国内で自給できる米の生産を安定的なものとする必要があります。そうでなければ、終戦直後のような厳しい飢餓の時代が再来する事態も否定しえないのです。
 今、私たちの「主食」である米のことを考えるためにも、改めて戦中・戦後の日本の食料事情について思いを馳せる必要があるのではないでしょうか。

[参考]
 食料・農業・農村政策審議会 食糧部会 資料(2024年7月30日開催)
 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/240730/240730.html
 (「参考資料1 ポイント」の冒頭等に在庫量の数値があります。)

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.297、2024年8月4日(日)[和暦 文月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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