【ブログ】都市農業/農地の重要な役割-東京都農業委員会 職員研究会

2024年8月末の日本列島は、強大かつ異様に速度の遅い台風10号に翻弄されました。
 8月29日(木)は、休暇をとって東京・新宿へ。熊本県に上陸した台風からかなり離れている関東地方でも、断続的に強い雨が落ちてきます。
 自宅玄関前のプランタのスダチにも雨粒。生育は昨年より1か月ほど早いようです。

JA東京南新宿ビルへ。直売スペース(アグリパーク)では新潟・十日町の物産展が開かれており、絶品枝豆とされる「つまりちゃまめ」を求めさせて頂きました。
 3階の会議室へ。JAのマスコット・笑味(えみ)ちゃんもきちんと手洗いをしています。

この日15時30分から開催されたのは、東京都農業委員会の職員研究会(全体研究集会)。参加者はオンライン参加も含めて50名ほどです。

あいさつに続き、永年勤続会員の表彰式。
 この日は、農業を5年以上担当されている25名の方に一人ひとり表彰状が授与されました。 

続いて「研究」として、私から「フード・マイレージ-より豊かな未来の食のために」と題して説明をさせて頂きました。

 表紙には、先日訊ねた新潟・上越市大賀集落の棚田の写真。残念ながら作付けされていない農地が増えている様子も説明させて頂きました。東京の方にこそ、中山間地域の現状の一端を見て頂きたいと思ったのです。
 自己紹介に続いて、フード・マイレージの概念と意味、輸入食料のフード・マイレージの国際比較等について説明。

当日の説明資料より(以下、同じ)。

地産地消によるCO2排出量削減効果の試算事例(ケーススタディ)も紹介。
 今回はにんじんについて、東京・清瀬市産、徳島・藍住町産、中国産(輸入品)を比較。
 10kgのにんじんを、ここ(JA東京南新宿ビル)まで運ぶ場合のCO2排出量を試算すると、東京産の場合は中国産の場合に比べて約2kg削減されることになります。エアコンの温度設定(1日当たり110g)やテレビ利用時間を減らす(同22g)など「家庭できるエコ」の取組みと比べても、相当の削減効果があることが分かります。

さらに、フード・マイレージ指標の限界(輸送機関によるCO2排出量の大きな違い、そもそも輸送に限定された指標であること)と、メリット(日々の食生活が地球環境と繋がっていることに気付くヒントになること等)について、説明させて頂きました。

続いて「余話」的に、都市化が進んでいる地域ほど出生率が低いこと、農家が多い農村地域ほど出生率が高いというデータも紹介。
 関連して速水 融先生の「都市アリ地獄説」を紹介したことは、東京都の方たちには挑戦的だったかもしれません。

また、最近、ニュースとなっている店頭における米不足に関連して、これまで自給率が低下してきたのは米の消費量が減少してきたためであることを説明するとともに、「生産者が減る中で米不足はいつでも起こりうることを、国民全体でしっかり認識する必要がある」との鈴木宣弘先生(東京大学大学院)の言葉を紹介させて頂きました。

「おわりに」として、以下のように説明させて頂きました。
 「現在の食や農が抱える様々な課題(自給率の低下、中山間地域等における不作付け地の増加、ロスの増大等)の背景には、食(食卓、消費者)と農(産地、生産者)との間の距離が拡大してしまったことがある。消費者にとって食べ物は、お金さえ出せばいくらでも買える単なる『商品』になってしまっている」

 「一方で、東京都のカロリーベース自給率は0%でしかないが、都市農業/農地には、新鮮で安全な農産物の供給や防災空間の確保など多様な役割がある。さらには、都市住民の農業への理解の醸成という重要な役割がある。
 都市農業には税制など特有の困難な課題もあり、職員の皆さんのご苦労も多いことは承知しているが、大都会・東京の消費者に農業の大切さを伝えていくという面でも、ますますのご活躍に期待したい」と話させて頂きました。
 僭越ながら、エールを送らせて頂いたつもりです。

私の話が長くなったこともあって質疑応答の時間はなく、都市農業/農地政策の最前線で活躍されている参加者の皆様のご意見を伺えなかったのは残念でした。

 お声を掛けて下さった事務局次長/業務部長の松澤さんはじめ、東京都農業会議の皆さまに感謝申し上げます。

(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997