【ブログ】豆を煮る匂いのある街

2024年も10月に入り(早いな~)、東京地方はこのところ雨模様の日が続いています。

自宅近くに一画を借りている市民農園。
 菌ちゃん畝に植え付けた冬野菜の苗は、まあ順調。ネットを掛けていますが虫喰いがあります。品川カブ、ほうれん草、春菊に加えて、遅れて蒔いた大根の芽も出揃ってきました。
 ところが落花生は、葉が茂るばかりでほとんど花が着きません。ゴマは青いまま、それでも少しずつ刈り取っています。
 それより何より、作業をしていると夏の間はほとんどいなかった蚊が、ここにきて大襲来。カメムシも例年より多いような。

陽除けのためにベランダに這わせていたゴーヤは、今夏はほとんど収穫できなかったのですが、今頃になっていくつも実をつけ始めています。もっとも、これ以上大きくなるかどうか。
 遅れていたヒガンバナは、ようやく満開に。
 やはり季節のリズムがおかしくなっているようです。

ところで、自宅近くに高齢のご夫妻が経営されている小さなお豆腐屋さんがあります。
 朝の出勤時にお店の前を通りかかると、大豆を煮る何ともふくよかな匂いが漂っていて、気持ちが明るくなり、元気にしてくれます。

ある日も、木綿豆腐を一丁求めさせて頂きました。ちなみに私は絶対的な木綿派で、しかも紐でくくっても崩れないほどの堅いものが好みです(ここのは普通の堅さです)。

 声を掛けると、おばちゃん(おじちゃんのこともあります。)が水槽から手ずから豆腐をすくい上げ、プラスチックのトレイにのせて、さらにポリ袋に入れてくれます(お鍋を持ってくればいいのでしょうね)。
 これで180円。最近、10円値上がりしました。百円硬貨を2枚手渡してお釣りをもらいます。

帰宅して袋から出してよく眺めると、表面はデコボコしていて、いかにも手作り感があります。
 ちなみに左側の半分食べかけのものは、近所のコンビニで58円で買ったもの。外見はこちらの方がなめらかです。

その日の夕飯に、お鍋に入れて食べ比べてみました。
 右がお豆腐屋さん、左下がコンビニのもの。湯気のなか、見た目ではほとんど区別できません。
 食べてみました。お豆腐屋さんのものはやや食感がぼそぼそしますが、むしろ私には好みです。一方、コンビニの方は舌触りもなめらかで上品な感じです。
 で、肝心の味の方はと言うと、だいたい何でも美味しく頂ける(注:例外あり)味オンチの私には、正直、甲乙つけられませんでした。お豆腐屋さんのものはもちろん、コンビニの方も大豆の味と香りがしっかりと残っていて美味です。 

味や品質に大きな違いがないのに値段は3倍以上違うとなれば、普通の消費者は当たり前のように安い方を選ぶでしょう。

 下の図は、農林水産省「適正な価格形成に関する協議会(豆腐・納豆ワーキンググループ)」の資料から。
 消費者の豆腐の購入単価はここ30年の間に6割強に低下、豆腐製造事業者は同期間に3割以下にまで減少しています。しかも2021年から22年にかけて、原材料コストは3割以上上昇しています。

農林水産省「適正な価格形成に関する協議会(豆腐・納豆ワーキンググループ)」第3回資料より。

デフレで賃金も上昇しない中、消費者が食費を節約しようとするのは当然です。そのニーズに応えるために、安価な豆腐を供給してくれる大手メーカーの経営努力にも頭が下がります。

 しかし、私たち消費者は、いつまでも価格だけで商品を選択し続けていていいのでしょうか。
 私は、この近所のお豆腐屋さんが、もしさらに経営環境が厳しくなっても、いつまでも経営を続けていかれることを願っています。もし大豆を煮る匂いが町から消えると、何とも無機質で味気ない街になってしまうと思うからです。
 だから、いつもではありませんが(そもそもこの店は、夕方、早い時間には売り切れて閉めてしまいます)、これからも時々、このお店のお豆腐を求めさせて頂きたいと思っています。

(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997