自宅ベランダのゴーヤは、結局、大きくならないまま黄色くなり、ぐずぐずに柔らかくなってしまいました。残念。
3連休中日の2024年10月12日(日)は、山梨・上野原市の西原(さいはら)地区へ。年に1度の西原まつりの開催日は、今年は好天に恵まれました。
8時27分にJR上野原駅に到着、知人の車に同乗させて頂きました。会場のびりゅう館周辺には交通整理の係りの方も。たくさんの幟がはためいています。

9時過ぎに会場に到着。
今年も「しごと塾さいはら」として出展・参加させて頂きました。これまでは地元産食材を使ったビシソワーズ等の食べものの販売をしていたのですが、今回は、初めて無料体験コーナーを出展することに。
準備したのは、大豆を石臼で粉にひく体験と、雑穀(もちきび)の脱穀・選別体験です。
メンバーのうち何人かは、準備のために前日から泊まり込み。当日参加のメンバーを加えて総勢15名(2名は前日のみ)で会場の準備。しごと塾の活動内容の写真を掲示し、石臼を据え、農具には名前と説明の紙を付します。
開会前の最終ミーティングでは、体験の段取りや班分けなどを確認しました。

お手洗いや売店があるびりゅう館の入り口という、人通りの多い好立地。大豆を炒る香ばしい匂いが漂っているせいか、10時の祭りのスタート前から興味深そうにのぞき込む子どもたちも。
祭りの開会挨拶が始まらないうちから、フライイングで体験活動をスタート。たちまち何人かの子ども(とその親御さん)達で、ブースの前には人だかりができました。
頑張って重たい石臼を回し、きな粉が出てくるのを見て歓声を上げる子どもも。体験して下さった方には、きな粉の小袋をプレゼント。しかも挽いただけの粗いものと、ふるいにかけた「プレミアム」の2週類から選べます。

10時に正式に開会。
天候にも恵まれ、人口減と高齢化の著しい山間部の集落に、早くから多くの方が足を運んで下さいました。
会場には様々な飲食や物販のブース。例えばキビご飯のおむすび、せいだのたまじ(小ぶりのジャガイモの味噌炒め)等の伝統食や天然酵母パン。地元産の野菜や果物、舞茸等にも多くの人だかり。子ども達の体験コーナーも。
地元の大学のサークルの学生さん達は、野生鳥獣の骨とともに鳥獣被害の現状について説明するブースを出展。地元の川に生息する生きものの水槽を展示している方たちも。

ステージでは、オペラの歌とダンス、フラダンス、ジョイソーラン、太鼓の演奏などが次々と披露されます。
青空の下、半分に切った丸太を並べた臨時のベンチや芝生に多くの人が座り、食べものや飲物を片手に、思い思いに楽しんでいます。
ちなみに、休憩時間に頂いた小菅村のクラフトビールは絶品でした。
おっと、会場には、こなひき爺いも出没!?。体験コーナーのPRに回っているようです。

こなひき爺いが来場者に声を掛けつつ会場を数回りした後、ブースに戻ってみると、石臼の前には行列ができていました。
あらかじめ炒っておいた大豆(地元在来のせんごく種です)を、フライパンで加熱し(香ばしい匂いがかなり遠くまで漂います)、粗熱がとれてから石臼に投入。石臼は反時計回りに回すのですが、子ども達にはかなり重いようです。一方、軽々と回すお父さんも。
ゆっくり挽いた方がきめが細かくなるので、早いからいいという訳ではありません。タイパなどという言葉は、ここでは通用しません。
雑穀コーナーでも、多くの親子連れ等が体験を楽しんでくれました。
広げたシートの上でモチキビの穂を木づちで叩き、実を落として(脱穀して)いきます。このモチキビは、正にこの体験している場所で9月8日に収穫したものです。
脱穀したモチキビは唐箕(とうみ)に流し入れ、風を吹き付けてゴミと実を選別していきます。夢中になって風車のハンドルを回す子どもたち。飛んでくるゴミやほこりに思わず顔を押さえる子どもも。
唐箕の両脇に据えた手箕(てみ)で受けたモチキビは、さらに手で揺すってゴミなどを飛ばすのですが、これもなかなかコツが必要です。この地の食生活を伝統的に支えてきた雑穀は、収穫してからの手間が大変な作物です。

喜んでくれたのは、子ども達だけではありませんでした。
何人もの地元の高齢の方が「自分の家でも昔は雑穀をつくっていたので懐かしい」「これらの道具は今も残っているよ」等と声を掛けて下さいました。
きな粉は無料配布用の小袋しか準備していなかったのですが、なかには買いたいと仰って下さる方も。確かに試食してみると、味も香りも市販のものとは全く違います。
思いのほか体験は好評で、午後早い時間には準備していた大豆やもちきびは無くなってしまいました。体験できなかった皆様、すみませんでした。
ステージプログラムも進み、終盤にはプロ歌手も登場しました。
山梨出身の笛吹もも香さんは「恋いちりん」などを情感深く熱唱。
そしてメインゲストの伊藤咲子さんが、華やかなひまわり色の衣装でステージ上に。
さすが(元?)一流アイドルの貫禄。「木枯らしの二人」などヒット曲はもちろん、トークでも観客をどんどん引き込んでいきます。大いに盛り上がりフィナーレを飾りました。

最後にお楽しみの「福引き」が行われ、15時過ぎに今年のお祭りは終了。最後まで好天に恵まれました。
しごと塾メンバーは自分たちのブースだけではなく、会場のテントやパイプ椅子、ステージ前に並べられていた臨時ベンチの片付けなどもお手伝い。
すべて終了した後は、行きとは別の方にJR上野原駅まで送って頂き、17時21分発の電車で帰宅。心地よい疲労感と、ささやかな達成(自己満足)感。
今年も地元の方々には大変お世話になりました。有難うございました。

しごと塾さいはらとして、この地に通うようになって10年以上になります。
そばや雑穀の栽培・収穫・脱穀、水車や石臼での粉挽き、そば打ち、お茶づくり、竹かご作り、落ち葉掃きと冬ぶせ(来春の農作業に向けての土づくり)など、様々な伝統的な手仕事の技(技術と智恵)を、学ばせて頂いてきました。
しかし「雑穀の里」と呼ばれる西原でも、ライフスタイルや食生活の大きな変化に伴い、雑穀の生産者は少なくなり、肥料や燃料にするために山林の落ち葉や下枝を集めることもなくなってきたそうです。
そのようななか、去る9月23日(月)には、この地における雑穀の栽培を、弟さんとともに中心的に担ってこられた中川智(さとし)さんが、87歳で逝去されました。智さんは雑穀栽培だけではなく、地域の資源を最大限に活用した自給自足的な生活を送って来られた方で、その姿はNHKはじめ様々なメディアでも取り上げられています。
毎月のように通ってくる私たちをうるさがることもなく、優しく、時には素人の慣れない手つきに厳しい口調で指導して下さるなど、本当に多くのことを学ばせて頂きました。

右は西原祭り会場(16年10月9日、智さんは中央)。
そして、この日の西原まつり。
体験コーナーが大盛況だったのは嬉しい限りでしたが、一方で、伝承されてきた技が、この地でも珍しくなってしまっていることを如実に示していました。子ども達には「初めて」の、高齢の方には「過去の懐かしい」ものになっているのです。
現在こそ、西原の自給自足的なライフスタイルを学び直す必要があるのではないでしょうか。
しごと塾として、智さん達から学ばせて頂いてきた手仕事の技を、ほんの一部でも、これからも次の世代につないでいくことに貢献していけたら、これに勝る喜びはありません。
空の上からの「そんなんじゃ全然ダメだよ」といった声を意識しながら。
(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
https://www.mag2.com/m/0001579997