【メルマガ】F.M.Letter No.302-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.302◇
 2024年10月16日(木)[和暦 長月十五日]
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◆ F.M.豆知識  過疎化・高齢化が進む中山間地域
◆ O.カレント  雑穀の里・西原(山梨・上野原市)
◆ ほんのさわり 宮本常一『忘れられた日本人』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 「新米や天つちの和をこめた出来」
 食いしん坊の正岡子規が、新米の美味しさ、有難さをめでている様子が目に浮かぶようです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

-過疎化・高齢化が進む中山間地域-

【ポイント】
 大都市圏への一極集中が進む中、中山間地域等においては過疎化、高齢化が進行しており、その不均衡はさらに拡大することが懸念されます。

東京都など大都市圏への過度の人口・経済の一極集中が進む中で、中山間地域等においては人口・世帯数が減少するとともに、高齢化が進行しています。
 リンク先の図302は、国勢調査の市町村別の数値を農業地域類型別に組替え集計した結果です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/10/302_kaso.pdf

これによると、2015年から20年にかけての5年間で全国の人口は0.7%減少しましたが、これを農業地域類型別にみると、都市的地域のみは0.4%増加しているものの、平地農業地域では4.5%、中間農業地域では5.6%、山間農業地域では8.6%と大きく減少しています。山間農業地域でも特に平坦地が少ないと思われる「畑地型」(水田率30%未満)の市町村においては、9.3%と特に大きく減少しています。
 世帯数の増減率をみても、山間農業地域では3.6%(特に畑地型では4.7%)と大きく減少しています。
 また、2020年における人口に占める65歳以上の者の割合は、全国平均の29%に対して山間農業地域では40.3%となっています。また、世帯数に占める65歳以上の単独世帯の割合は全国平均の12.1%に対して山間農業地域では17.7%(特に畑地型では18.9%)と高く、今後、さらに人口や世帯数が減少することが予想されます。
 一方、15歳以上の就業者数に占める農林漁業就業者の割合をみると、中山間地域では農林漁業のウェイトが相対的に高いことが伺えます。

経済社会の工業化・サービス化が過度に「発展」し、東京圏等への過度の一極集中が進んだことにより、現在の日本の国のすがたはバランスを欠いた歪(いびつ)なものとなっています。そして、その不均衡はさらに拡大することが懸念されます。

[データの出典]
 資料:総務省「国勢調査」(都道府県・市区町村別の主な結果)及び農林水産省「農業地域類型」から作成。
 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&tstat=000001049104&cycle=0&tclass1=000001049105&tclass2val=0
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/chiiki_ruikei/setsumei.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

-雑穀の里・西原(山梨・上野原市)-

【ポイント】
 雑穀の里・西原に伝承されてきた技や知恵や食文化を、これからも受け継いでいくことが必要です。

石臼でのきな粉ひき体験、モチキビの脱穀体験には多くの方が参加して下さいました(2024.10/13、西原まつり)。

山梨・上野原市の山間部にある西原(さいはら)地区は、雑穀の里として知られています。耕地面積は狭く傾斜地が多いなど、条件が不利な地域です。
 このようななか、西原では雑穀を主食のひとつとするなど自給的な暮らしが営まれ、多くの手仕事の技や知恵、食文化が伝承されてきました。しかし、流通経済の発達と食生活の変化により、現在では西原でも雑穀を栽培しているのは数軒のみとなっており、さらに近年は鳥獣害の被害も深刻なものになっています。

中川 智(さとし)さんは、弟さんとともに西原における雑穀栽培を中心的に担ってこられた方です。10種類以上の雑穀を栽培し、先祖から受け継いだ種を守り続けている様子は、多くのテレビ番組やドキュメンタリ映画にも取り上げられました。
 その中川智さんが、去る9月23日(月)に87歳で逝去されました。
 中川さんを慕って10年ほど前に西原に移住・就農し、地域外のメンバーも応援団として巻き込んで西原の雑穀文化を次世代につないでいく活動をしている冨澤太郎さんは、告別式において、「いつまでも悲しんではいられません。智さんは私たちに貴重な種を残してくれたからです。『種はまかないと絶えてしまう』という言葉を胸に、智さんのもとに集う仲間と、智さんに気持ちを寄せる人たちが一丸となって、受け継いでいきます」と誓いを述べられました。

[参考]
 「お山の雑穀応援団」
 https://yamahatafarm.com/zakkoku/

なお、西原の雑穀は地元の交流施設・びりゅう館でも扱っています。
 http://biryukan.com/
 https://biryukan.stores.jp/(オンラインストア)

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

-宮本常一『忘れられた日本人』(1984年5月、岩波文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b246167.html

【ポイント】
 宮本常一は全国をくまなく歩き、古老たちから技や知恵、みんなで助け合って暮らしてきた様子などを丹念に聴き取り、記録してきました。忘れてはならないものがたくさんあります。

宮本常一は、1907年、山口・周防大島の海岸に近い農家に生まれました。大阪で小学校の教員をしていましたが病を得て帰郷、「百姓」として過ごし、戦後は大阪府農地部の嘱託として農地解放や農業協同組合創設等の指導に当たりました。個性豊かな宮本民俗学は、農業指導、農村調査から始まったとも言えます。
 宮本は、辺境と言われる地域を中心に全国をくまなく歩き(地球4周分とのこと)、各地の古老たちが語るライフストーリーを、写真とともに丹念に収集・記録しました。その密度の高い結晶(網野善彦の解説)に当たるのが、本書です。

村で取り決めを行う場合には、全員が納得するまで何日でも話し合ったこと(「対馬にて」)。
 農地解放で紛糾した寄り合いでは、ある古老の「一人暗夜に胸に手をおいて、私の家の土地は三代にわたって少しの不正もなく手に入れたものだ、と断言できる人があれば申し出て下さい」との言葉に、それまで強く主張していた人も口をつぐんでしまったというエピソード(「村の寄り合い」)。
 夜遅くまで田仕事をしている隣人のために座敷の灯りをつけたままにしておくといった助け合いの様子、稗や菜飯等の食生活の変化、機械導入により農業労働が劇的に変わったこと(「耕うん機なんど、くわえ煙草で田がすける」)等も記録されています(「名倉談義」)。
 「メシモライ」(船に預けられた孤児)として対馬に移住し、入江の大石を除去して船着き場を拓いた古老は「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」と語ります(「梶田富五郎翁」)。
 一方、島根県で農業振興に尽力した古老は「自然の美に親しみつつ自分の土地を耕しつつ、国民の大切な食料を作る、こんな面白く愉快な仕事がほかに何があるか」と記しています(「文字をもつ伝承者(1)」)

宮本は1981年、74歳で没しました。
 本書には「忘れてはならない」先人の技や知恵、助け合って生きていた暮らしの様子などが記録されています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 ふくしまオーガニックコットンボランティアツアー2024「収穫」編~さよなら天ぷらバス~[10/7]
 https://food-mileage.jp/2024/10/07/blog-538/

〇 豆を煮る匂いのある街[10/8]
 https://food-mileage.jp/2024/10/08/blog-539/

〇 つないでいくもの(西原まつり2024、山梨・上野原市)[10/15]
 https://food-mileage.jp/2024/10/15/blog-540/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

〇 東京食肉市場まつり
 日時:10月19日(土)、20日(日)10:00~16:00(20日は15時まで)
 場所:東京都中央卸売市場食肉市場(港区港南2丁目7)
 主催:(一社)東京食肉市場協会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.meat-market.tokyo/festival_2024/

〇 おいしい未来をつくる読書会 #4
  平賀 緑『食べものから学ぶ現代社会』
 日時:10月19日(土)20:00~
 場所:オンライン
 主催:おいしい未来をつくる読書会
 (詳細、問合せ等↓)
 https://foodsystems4peace-4.peatix.com/

〇 ふくしま再生の会 報告会
 日時:10月20日(日)14:00~17:00
 場所:東京大学弥生キャンパス 弥生講堂アネックス
 主催:ふくしま再生の会
 (詳細、問合せ等↓)
 http://www.fukushima-saisei.jp/info/20241014/3317/

〇 今夜はご機嫌@銀座で農業 10月
 日時:10月24日(木)18:30~19:45
 場所:中央区環境情報センター(東京都中央区京橋3)
 主催:今夜はご機嫌@銀座で農業
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/1074969674293323/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 個人のフェイスブックページに週3日(水~金)投稿しています。世界ぜんたいの平和と幸福を祈りつつ。
「このバスに乗ると、気分が高揚するね」
「アゲアゲだね。天ぷらバスだけに」

 過去のアーカイブは以下に掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.303は11月1日(金)[和暦 神無月朔日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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