【ブログ】投票率と食料自給率(雑談)

2024年10月27日(日)に投開票された第50回衆議院議員総選挙は、自公が過半数割れという結果に。能登の復興、経済対策など懸案は山積しており、多数派工作に費やしている時間はないはずですが。

ところで投票日の前日、個人のフェイスブックに以下の2つのグラフを掲載しました。

図1の赤い折れ線グラフは、1967年以降の衆議院議員総選挙の投票率の推移を図示したものです(なお、参議院議員通常選挙も同様のかたちとなっています)。

 1967年(昭和42年)1月29日に行われた第31回総選挙(佐藤栄作首相による「黒い霧解散」)。その後、1990年頃までは70%台ないし60%台後半で推移していたのが、1996年の第41回(橋本龍太郎首相による小選挙区・比例代表並立制の導入された最初の選挙)では急落し60%を割り込んでしまいました。
 2005年の第44回(小泉純一郎首相による郵政選挙)、2009年の第45回(鳩山由紀夫代表の民主党が大勝し政権交代)には70%近くまで回復したものの、近年50%台というかつてない低い水準に低迷しています。
 今回の投票率は53.85%と前回から2.08ポイント低下し、戦後3番目の低さとなっています(グラフの矢印の部分)。

一方、青色の折れ線グラフは食料自給率(カロリー(供給熱量)ベース)の推移を示しています。投票率のグラフと同様に低下傾向で推移しており、あたかも投票率と食料自給率の間には強い「相関」があるかのように見えます。

しかし、このグラフでは、投票率と食料自給率との間の「因果関係」については何ら説明されていないことに留意が必要です。どちらも単に時系列にみて低下しているというトレンドを示しているに過ぎないとも思われます。
 したがって、このグラフによって「食料自給率を向上させるためには投票に行くことが必要」等と主張することはできません。まるで「統計でウソをつく」典型的な例題のようなものです。

それでは、図2はどうでしょうか。
 これは過去の直近の総選挙(2021年、第49回。岸田文雄首相による解散)の都道府県別の投票率と、カロリーベース食料自給率の値をプロットしたものです。

このグラフからも、投票率が高い都道府県ほどカロリーベース食料自給率が高いという傾向が見て取れます。

これも因果関係がある訳ではなく、、食料自給率については当然ながら農村地域の方が高くなりますが、農村地域では地縁・血縁関係が比較的濃厚に残っている等の理由から投票率も比較的高くなっている、ということを示しているだけかもしれません。
 ちなみに近似直線の決定係数は0.14であり、統計的に因果関係があると証明できる数値ではありません。

しかし、食料自給率が同じ程度に高い山型県(147%)と青森県(120%)とでは投票率には大きな差があります(山形県64.34%、青森県52.93%)。
 また、投票率がそれほど変わらない北海道(58.79%)の食料自給率は223%もあるのに対して、東京都(投票率57.21%)は0%でしかありません。
 当然ながら、都道府県ごとの選挙区事情等にも大きな違いがあると思われますが、これら背景等を綿密に分析することによって、投票率の差の理由、さらには投票率と食料自給率との関連の有無を探ることができるかも知れません。

ひるがえって考えてみれば、生命を維持するために不可欠な食料が安定供給されることは、政治の基本的な目的の一つと言えます。
 国民の政治への関心が低くなり投票率が低下することは、「飽食の時代」が当たり前になって、食料そのもの(あるいは生産者、産地、風土・環境等)に対する国民の関心が低下していることと、関連があるのかも知れません。産地や生産者に近い農村地域の住民の方が、食を含めて社会的な現状や課題に対する関心が高く、投票率が高くなっている事情があるのかも知れません。
 であるとすれば、今回の総選挙の低投票率は、食料自給率の観点からも大きな問題となるかも知れません。
 なお、個人的には、投票に行かない(投票を拒否する)ことの権利も認められるべきものと考えています。重要なことは、投票に行かない若い層を批判することではなく、彼女・彼らに、政治や社会的な課題により強い関心をってもらうような方策をとることです。取りあえず私は、食や農の現状や課題について情報発信を続けていきたいと思います。

(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997