【ブログ】CSまちデザインツアー2024(1日目、福島・二本松から飯舘へ)

コロナ禍で中断していたNPO法人CSまちデザイン主催のスタディツアーが、5年ぶりに再開されました。
 2024年11月2日(土)は生憎の雨。7時前に自宅を出てJR大宮駅8時25分発の東北新幹線やまびこ175号に乗車(木曜日に1席だけ残っていた指定席がとれました)。連休初日ですが思ったほどの混雑ではありません。
 定刻の9時28分に福島駅着。構内には各市町村の物産の展示や環境省主催「飯館村長泥地区見学会」のポスターなど。早い時間から書店も開いていたので、福島関係の文庫本を1冊購入。

 10時に集合場所の西口改札前へ。今回の参加者は、CSまちデザインの近藤惠津子理事長を含めて16名(女性10名、男性6名)です。

2台のレンタカーに分乗して二本松に向かいます。雨が強くなってきました。
 最初の目的地である二本松営農ソーラー(株)に到着したのは11時過ぎ。
 が、全員分の長靴と大きめのビニール傘を準備して待っていて下さっていた代表の近藤 恵さんが、まず、ハウスのなかで以下のような説明をして下さいました(文責・中田)。

 「二本松営農ソーラーは、2019年、市民電力(ゴチカン)生協(みやぎ生活協同組合・コープふくしま)NPO環境エネルギー政策研究所(ISEP)の3者により設立され、2021年3月に竣工。約6500枚のモジュールにより約600世帯分の発電を行っている。
 営農型発電の基盤である農業生産を担当しているのが、農地所有適格法人(株)Sunshine。耕作放棄されていた6haの農地を取得してブドウ、エゴマ、大豆等を生産している」

 「営農型発電(ソーラーシェアリング)は世界でも最先端の取組みとして注目されており、国際会議も開催されている。バチカン市国の電力はすべて太陽光発電で賄われる計画になっている。
 ところが、日本の営農型発電は電力サイド主導によるものが多く、なかには農業生産はアリバイに過ぎないような事例もあるのは残念。行政も推進ではなく規制強化に注力しており、順番が逆になっている状況」

 両面が地面に垂直に立つ垂直営農ソーラーは、発電のピークを朝夕にずらすことができ、大型機械での作業も可能だそうです。

説明の後、施設を見学させて頂きました。残念ながら雨はさらに強くなってきます。長靴と大きなビニール傘を準備して下さっていて助かりました。

 ブドウは1haで、シャインマスカットなど7品種を栽培。
 今年は高温のため全国的にブドウの色づきが悪かったそうですが(参加者のなかには東京・世田谷のブドウ農家の方もおられました)、ここでは太陽光パネルで適度に遮光され、高温障害は回避されたとのこと。
 ネーミングライツのパートナー募集といったユニークな取組みも。最も多くつけられるのは、お孫さんの名前だそうです。

α-リノレン酸を豊富に含むエゴマは2021年から栽培しており、搾油して「太陽の有機エゴマ油」として、小麦は「Sunshine城(シロ)ビール」として、ななくさナノブルワリー(二本松市戸沢)で醸造して販売されているとのこと(オンラインショップでも購入できます(私も購入してみました))。
 
 ちなみにこの土地は元は水田(河川沿い)だったそうで、施設整備の際に出てきた無数の大小の石がパネルの脇に積み上げられていました。

4頭の牛(ジャージー種の雄)の放牧も行っています。仔牛は群馬県の神津牧場まで訪ねて行って譲ってもらったとのこと。

 見学終了後も参加者からは様々な質問が尽きず、近藤代表はその一つひとつに丁寧に答えて下さいました。
 近藤さんは東京出身、福島で有機農業を営んでいましたが東電福島第一原発事故によりいったん廃業。その後、発電と融合した新しいかたちの農業に挑戦されています。
 この日、配って下さった冊子『Sunshineの地図』には、「怒りではなく感謝と喜びの汗をかきたい。私たちの新しいスタイルの農場を見て、未来の地図を想像してみてください」との近藤さんの言葉が記されています。

ちなみに二本松営農ソーラーの取組みは、ドキュメンタリ映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』にも描かれているそうです(私はまだ観ていません。観なきゃ)。 

二本松駅近くにある市民交流センターに移動。地元出身の日本画家・大山忠作の美術館が併設されています。
 センター内にあるレストラン・杉乃家は大混雑。
 避難指示が続く浪江から移転してきた名店とのこと、なみえ焼きそばが名物とのことですが、私は川俣シャモの文字に惹かれて鳥そばを頂きました。熱くて美味です。
 入り口で名前を書いてからかなり待たされましたが、時間に余裕のある時は、待ってでも頂く価値は十分にあります。

想定以上に昼食に時間がかかってしまいました。
 いったん福島駅に戻り、ここでマイクロバスに乗り換えて飯舘村に向かいます(運転手さん、お待たせして申し訳ありませんでした)。

ほとんど日も落ちた16時40分頃に、いいたて佐藤いちご園に到着。経営者の佐藤 博さんがハウスで待っていて下さいました。
 2004年に2000平米のハウスを建設し、菓子店など業務用いちごの栽培に取り組んでいた佐藤さんですが、原発事故により福島市への避難を余儀なくされて生産は中断、販路もすべて失ってしまいます。
 しかし、佐藤さんは避難先から通いながら、自費でハウスの張替えや土壌の入替え等を行い、2014年には試験栽培・検査もクリアして、飯舘村における「営農再開第一号」となったそうです。かつての「お得意先」への出荷も再開でき、現在は関西にも出荷されているとのこと。
 冷涼な気候と冷たい水で栽培される「すずあかね」は、季節性の面からも貴重だそうです。

夕食会場の La Kasse に到着したのは17時20分頃。
 2022年6月、オーナーシェフの佐藤雄紀さん(Uターン者)が始められた本格イタリアン/フレンチのお店(値段はリーズナブル)。高台にあり、ロケーションも素晴らしいことと想像されました。

 陶芸家の方が使っていた工房をリノベーションした店内は、木がふんだんに使われており、中心には太い杉の大黒柱も。壁には「ふくしま再生の会・野草班」が撮影した花の写真がずらりと貼られています。
 飯舘産の食材を中心としたサラダ、手羽先と大根の煮物、カボチャとベーコンのパスタ(甘酒入り)等を美味しく頂きました。佐藤さんは「飯舘村の生産者さんとお客様が、飯舘の食材を使った料理をきっかけにつながっていければ」と語っておられました。
 ちなみに店名は「寄ってかっせ」「食べてかっせ」等の方言に由来するそうです。
 地域の方たちや来訪者が集う場が、ここにも新しくできていました。

ようやく雨も小降りになってきた19時30分過ぎ、この日の宿泊場所である「農業研修館きらり」に到着。
 本年7月にオープンしたばかりの快適な施設で、村では2030年までに30名ほどの新規就農者を新たに受け入れる構想があるそうです。

隣接する「きこり」の大浴場で暖まった後、集会室で有志(飲み足りない人?)による交流会。元毎日新聞社記者/農中総研研究員で、飯舘村に移住されたばかりの行友 弥さんが飲み物などを準備して下さっていました。
 そもそも今回のツアーそのものが、全行程にわたって行友さんがコーディネートして下さったものであり、同行して下さっています。

 新聞記者時代の最初の赴任地が福島だったという行友さんは、特に飯舘村には原発事故後も公私にわたって頻繁に通われて被災と復興の様子を目の当たりにし、新聞記事等で情報発信され続けてきました。そしてとうとう、ご自身も地域おこし協力隊に応募して飯舘村に移住されたのです。
 福島、飯舘村に対する行友さんの並みならない熱い思いに、改めて触れることとなった今回のツアーでした。(2日目に続く。)

(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997