【メルマガ】F.M.Letter No.303-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.303◇
  2024年11月1日(金)[和暦 神無月朔日]
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◆ F.M.豆知識  消滅(無人化)の可能性がある集落の割合
◆ O.カレント  RMO(地域運営組織)とは
◆ ほんのさわり 小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 総選挙で与党が大敗し政局が混乱していますが、能登の復興や経済対策等の懸案が山積するなか、多数派工作に費やす時間はないはずです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

-消滅(無人化)の可能性がある集落の割合-

【ポイント】
 人口が特に少ない、あるいは高齢化が著しい集落については消滅可能性が高くなっているものの、全国的に多くの集落が消滅するといった状況はみられません。

中山間地域など過疎地域では人口の減少、高齢化が進行し、近い将来に消滅する恐れのある「限界集落」が全国的に増加していると言われています。
 リンク先の図303は、過疎地域において消滅(無人化)の可能性がある集落の割合を類型別に示したものです(市町村を通じたアンケート結果)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2024/10/303_kaso2.pdf

これによると、人口9人以下の集落では「10年以内に消滅の可能性あり」が14%、「いずれ消滅の可能性あり」が38%となっており、65歳以上人口の割合が75%以上の集落についてはそれぞれ10%、29%となっています(「無回答」を除いて集計)。
 このように、人口が特に少ない、あるいは高齢化が著しい集落については消滅可能性が高くなっていますが、これら特に条件が不利とされる集落においても50~60%は存続すると予想されているのです。
 さらに、過疎地域全体に占める人口9人以下の集落の構成比は4.4%に過ぎず、65歳以上人口の割合が75%以上の集落については5.5%に過ぎません。
 つまり、特に厳しい条件下にある集落は全体からみれば少数であり、少なくとも全国的に集落がどんどん消滅するといった状況はみられません。
 (本稿の分析は、「ほんのさわり」で紹介させて頂く小田切徳美先生のご著書を参考にさせて頂きました。)

[データの出典]
 資料:総務省「過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査(最終報告)」(2020年3月) から作成。
 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei10_02000066.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

-RMO(地域運営組織)とは-

【ポイント】
 今後、農用地の保全、地域資源を活用した農泊や農福連携等の推進体制づくりなどの面で「農村RMO」の展開が期待されます。

出典:総務省HP「地域運営組織」より。

RMO(Region Management Organization、地域運営組織)とは、過疎化・高齢化が進む中山間地域等で、地域で暮らす人々が主体となって、地域での生活を支える様々なサービスの提供を担っている事業主体です。アルファベットの略称には馴染みがありませんが、「○○地域づくり協議会」といった名称のものがこれに当たります。
 総務省の調査によると、2023年度には全国で7,710組織があり、2016年度に比べ約2.5倍に増加しています。組織形態としては法人格を持たない任意団体が90%、自治会・町内会を構成員とする組織が78%となっています。
 また、具体的な活動内容としては、現在は祭りや運動会等の運営、健康づくり、地域の美化・清掃、防災活動等が多く、農業・農村に関する活動を行っているRMOは多くはありません。
今後は、農用地の保全、地域資源を活用した農泊や農福連携等の推進体制づくりなどの面で「農村RMO」の展開が期待されます。

参考
 総務省ホームページ「地域運営組織」
 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/chiiki_unneisosiki.html
 農林水産省ホームページ「農村型地域運営組織(農村RMO)の推進」
 https://www.maff.go.jp/j/nousin/nrmo/index.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

-小田切徳美『にぎやかな過疎をつくる-農村再生の政策構想』(2024年8月、農山漁村文化協会)-
 https://toretate.nbkbooks.com/9784540231841/

【ポイント】
 農村は簡単には消滅しない強靭性を有しており、各地における「にぎやかな過疎」づくりの取組みは、人口減少下でも地域で幸せに住み続けるための日本全体のモデルとなるものです。

著者は明治大学農学部教授で、農村政策論、地域ガバナンス論の分野における第一人者です。
 日本の農村は、いわゆる「限界集落論」にみられるように、しばしば消滅、撤退という議論の対象とされていますが、著者は、「関係人口」等のデータも引用しつつ、集落は消滅しそうにみえて、そう簡単に消滅しない強靭性を有しているとしています。
 このことから、中山間地域等から「賢く撤退すべき」とする「農村たたみ論」については強く批判し、コンパクトシティという言葉自体が誤用であるとも指摘しています。

さらに、農村は、都市にはない持続的な内発的発展のモデルとなりうる地域であるとし、各地における特定地域組合制度等の活用による「にぎやかな過疎」づくりの事例が多数紹介されています。一方で、KPI(重要業績評価指標)を必要以上に重視する政策が「むら・むら格差」を顕在化させているという問題点も指摘しています。

なお、タイトルの「にぎやかな過疎」とは、2013年に放映されたテレビ金沢のドキュメンタリ番組から借用したとのこと。その舞台であり、著者もしばしばフィールドワークで訪れている能登半島が、本書執筆中の本年1月に大地震に見舞われました(さらにその後、9月には豪雨により大きな被害を蒙りました)。
 そのようななか、国の財政制度等審議会で「能登半島の今後の復旧・復興にあたっては、将来の需要減少や維持管理コストも念頭に置きながら検討することが必要」といった議論が行われたことについて、著者は「被災地を対象に財政の論理を振り回す状況には驚きを禁じ得なかった。この国は大丈夫かという強い疑問が浮かんでいる」と、冷静な記述ながら、強い怒りを表明しています。
 なお、本書の各章の末尾には非常に分かりやすい「農村再生キーワード」も掲載されているなど、農村再生や地域づくりに関心のある方にとっては必携の書と言えます。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 食肉市場祭り、「ふくしま再生の会」報告会[10/22]
 https://food-mileage.jp/2024/10/22/blog-542/

○ 「今夜はご機嫌」、ふくしまマルシェ(新宿)など[10/29]
 https://food-mileage.jp/2024/10/29/blog-543/

○ 投票率と食料自給率(雑談)[10/30]
 https://food-mileage.jp/2024/10/30/blog-544/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

〇 阿蘇世界文化遺産登録推進東京シンポジウム
 日時:11月11日(月)15:00~17:50
 場所:東京ドームホテル(東京・文京区後楽1)
 主催:阿蘇世界文化遺産登録推進東京シンポジウム事務局
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.cp-entry.com/aso2024/

〇【第207回霞ヶ関ばたけ】
 おいしいとは何か? 「味なニッポン戦後史」から食のリテラシーについて考える。
  ゲスト:澁川祐子さん
 日時:11月16日(土)9:30~11:15
 場所:官民共創HUB(東京・港区虎ノ門1)
 主催:霞ヶ関ばたけ
 (詳細、問合せ等↓)
 https://kasumigasekibatake-207.peatix.com/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄-世界ぜんたいの平和と幸福を祈りつつ。

「過疎は深刻な課題ですが、かえって自由に活動できる可能性は大きい地域だと感じています」
「条件フリー(不利)地域ですね」

 過去のアーカイブは以下に掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.304は11月15日(金)[和暦 神無月十五日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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