【ほんのさわり】吉田千亜『孤塁』

-吉田千亜『孤塁-双葉郡消防士たちの3・11』(2023年1月、岩波現代文庫)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b618320.html

【ポイント】
 原発事故のために他県消防の応援も得られないなか、生まれ育った地域を守り続けた福島県双葉消防本部の125名の消防士の活躍と葛藤の様子が描かれています。

著者は1977年生まれのフリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材とサポートを続けられている方。本書は2020年に本田靖春ノンフィクション賞を受賞、2023年には文庫化されています
 本書は、2011年の地震・津波被害者の救助や原発事故による避難誘導等に当たった福島県双葉消防本部の125名の消防士の約半数を対象に、一人ひとりに対する綿密なインタビュー取材を行った記録です。
 原発事故により避難指示が出されたため他県消防の応援も得られず、家族との連絡も取れず、ポケット線量計が鳴り続けるなか、不眠不休で生まれ育った地域の「孤塁」を守り続けた地元消防士のぎりぎりの苦闘と葛藤の様子は、今、読んでも胸が震えます。「原発事故で撤退しなければ助けられた命があったかも知れない」と悔やむ声も。

著者は、彼らの「忘れないでほしい」「教訓にしなくてはならないようなことは二度と起きてほしくない」といった話を伺うたび、恐怖で鳥肌が立ち自分の無力さを思いつつも、「バトンを渡す」という思いで書き続けてきたそうです。そして「どうか、このバトンをあなたも受け取って下さることを願う」と記しています。
 さらに「文庫本によせて」の中では、「原発回帰を打ち出す日本は、まるで2011年、多くの人々の人生を根こそぎ奪った出来事を忘れてしまったかのようだ」と嘆いています。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.304、2024年11月15日(金)[和暦 神無月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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