-小原浩靖監督『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』(2022年9月公開)-
https://saibancho-movie.com/
【ポイント】
大飯原発の運転停止命令を下した元裁判長や、福島で太陽光発電農業を始めた農業者らによる脱原発に向けた活動を追ったドキュメンタリーです。
今回は本ではなく映画の紹介です。本作品は、相互に関連した2つのパートから構成されています。
「原発をとめる農家たち」のパートでは、原発被災地である福島で取り組まれている営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が紹介されます。「オーシャン・カレント」欄で紹介した近藤恵氏や仲間の若い農業者の皆さんの姿には、現地を見学させて頂いたこともあり、確実に明るい希望を感じることができました。
一方、「原発をとめた裁判長」のパートで描かれているのは、関西電力大飯原発の運転停止命令を出し、現在は脱原発の危険性を啓発する活動に取り組んでいる樋口英明・福井地裁元裁判長と、現在進行中の脱原発裁判に取り組む弁護士たちの姿です。
しかし本映画ではあまり強調されていませんが、東日本大震災後、初めての原告勝訴となった2014年5月の「樋口判決」(映画の中で河合弘之弁護士は「脱原発のバイブル」と評価)は、2018年7月の控訴審(名古屋高裁金沢支部)でくつがえされています。
さらに今年(2024年)に入ってからも、3月7日(木)には大分地裁が伊方原発3号機について、11月27日(水)には仙台高裁が女川原発2号機についての運転差し止め請求の訴えを棄却するなど、住民側の敗訴が続いています。
3.11後は裁判官の意識も変りつつあるとの評価もありましたが、現実には、日本で司法が原発を止めたという実績は皆無です。1992年の伊方原発訴訟最高裁判決の「国の審査指針は専門家による高度な専門技術的判断に基づいて作成されたものであることから、司法としては、見逃すことのできない誤りがない限り、司法は介入すべきではない」といった基本的な姿勢は、現在も堅持されているかのようです。
映画の中で河合弁護士は、伊方原発の広島地裁判決の見通しについて力強く語っておられました。明年3月に予定されている判決が注目されます。
(参考)
磯村健太郎、山口栄治『原発に挑んだ裁判官』 (2019/6、朝日文庫)
https://publications.asahi.com/product/21028.html
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.305、2024年12月1日(日)[和暦 霜月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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