【ブログ】『さとにきたらええやん』上映会と学習会

2025年1月19日(日)の午後、埼玉・川越の雑貨店ソコノワの店先で月1回のマルシェが開催されていました。

 鳩山町で有機農業を営なむTackfarmも出展。ちなみに “tack”とはスウェーデン語で「ありがとう」の意味だそうで、今年は大学等とも連携して様々な企画をされているとのこと。楽しみです。
 この日はルッコラ、にんにく、ジンジャーエールを求めさせて頂きました。お隣のパン屋さんでは菜の花とチーズのパンも。
 いずれも美味しかったです。ご馳走様でした。

その後は東京・板橋へ。
 東武東上線・上板橋で下車し、曇り空の下、30分ほど歩いて蓮根市民センターへ。知らない街を歩くことは楽しみです。

 隣接する公園では子ども野球の試合中。D51やコッペル(!)の蒸気機関車も展示されていました。

この日、14時から開催されたのはドキュメンタリ映画『さとにきたらええやん』の上映会。主催はSDGsいたばしネットワークです。
 主催者の一人である森良さんは会場で埼玉の農産加工品などを販売。

 上映に先立ち、森さんから、上映会の趣旨等について「地域共生社会を考える」と題する資料を用いて説明がありました。

そして上映開始。
 日雇い労働者の街・大阪市西成区釜ヶ崎にあるNPO法人「こどもの里」を舞台にした涙と笑いのドキュメンタリー(2015年)です。

 オープニングは自転車で駆け抜ける商店街の活気、行き交う大阪弁。ラップ音楽ライブの様子。
 会場からは何度も笑いが起こりますが、登場する子ども達は障がい、国籍、親の暴力、不登校など、様々な困難を抱えています。時にはケンカしながら、施設の人たちに見守られながら、入学、卒業、就職等と成長していく様子が描かれていきます。
 真冬の夜、リヤカーにカイロや食べものを載せて路上生活者を訪ね、話しかけていく「子ども夜回り」の様子には心が打たれました(現実に多くの人が命を落とされているそうです)。

当日の資料、映画のパンフレット、「こどもの里」のパンフレット等

上映に引き続き、「こどもの里」理事長の荘保共子(しょうほ・ともこ)さんのお話会が開催されました(文責・中田)。
 映画にはデメキンのあだ名で登場、誰よりも大きな声で子ども達、親たちと交流する姿が描かれていました。脳梗塞で倒れ緊急入院された様子も描かれていましたが、1か月で退院し後遺症もないそうです。

 映画から10年後、泣き虫だった男の子は高校3年生になり、いじめを受けていた少年は地元のNPOに就職し野宿者の支援活動に従事しているとのこと。
 街の様子も大きく変わり、日雇い労働者や路上生活者の数は大きく減った一方、ベトナムやインドネシアなど外国人が増加しているそうです。

「こどもの里」の運営については、学童保育など利用できる助成金等は活用しつつ、多くは寄付に支えられているとの説明も。

最後に荘保さんは、
 「子どもたちの生きづらさは10年前と変わっていない。子どもたちは本当に一所懸命生きている。それを思うと涙が出そうになる。私自身の生き方、考え方を変えてくれた子どもたちに感謝している」と語られました。

翌20日(月)19時からは、デイサービスおむすび(板橋区仲宿)を会場に「親にも寄り添う子どもど真ん中のまちづくり」と題する学習会が開催されました(なんと2日連続!)。
 しっかりとした雨が落ちています。

森良さんをコーディネータに、前半は改めて荘保さんによる講演。50枚以上のスライドを準備して下さっていました。

荘保さん
 「映画に描かれている通り『こどもの里』はごちゃごちゃ。この混沌とした場が、安心感と人を信じる力につながる。地域・まちに子どもたちの居場所をつくる必要がある」としつつ、国際的な情勢(国連の「子どもの権利宣言」(1959年)等」、西成での独自のネットワークづくり等の取組みについて紹介して下さいました。
 一方で、日本全体としては諸外国に比べて対応は立ち遅れているとも(子どもの貧困率、自己肯定感等の多くの統計数値を援用)。

 また、「子どものくせに」「わがまま」「生意気」「権利の前に義務を教えるべき」といった「大人の壁」が、ネグレクトと過干渉につながっていると厳しく指摘されました。

そして「子どもたちは生まれる場所は選べないけれど、これからの自分の人生は選ぶことはできる。私たちは、全ての子どもたちが『生まれてきてよかった』と思えるように、その手助けをしていきたい」と結ばれました。

後半は、話のなかでも紹介された「こどものけんり なんでやねん!すごろく」を実際に体験。絵も子どもたちが描いたそうです。

 “なんでやねん”のマスに止まった人は「なんでやねんカード」を1枚引いて読み上げます。例えば「公園で遊ぼうとしたらゲートボールのおじさん達からじゃまだと言われた」「学校で家が貧しいから進学をあきらめるように言われた」など、実際に子どもたちが体験したことが基になっているとのこと。
 読み終わったら全員で「なんでやねん!」と突っ込みます(荘保さんは見事な身振り!)。

 キラキラの宝石が置かれたマスに止まった人はその宝石がもらえ(実際にはお菓子と交換)、子どもの権利条約カードを1枚引いて条文を読み上げます。遊びながら権利条約を学べる掛けです。

全員から発言、意見交換。
 「大阪弁はすごい。なんでやねんに当たる標準語はないのでは」「楽しかった。学びの良いきっかけになる」「権利条約の条文は心に刺さった」「日本は障がい者権利条約への対応も遅れているのでは」「WHOの定義する『健康』も理解されていない」等のコメント。

荘保さんからは、
 「子どもをみて大人が変わっていくことが必要。子どもはしんどさを口には出さない。話をよく聴きながら、まちづくりを進めていってもらいたい」と発言されました。
 最後に、参加者の発言をホワイトボードに書き起こしていた森さんからは
 「ネットワークづくりのためには、概念から入るのではなく、目の前の人とちゃんと向き合うことが必要」等のまとめがありました。

その後は引き続き懇親会に。
 福祉関係に携わっているらしい若い男性は、熱心に荘保さんにアドバイスをもらっていたようです。22時過ぎに終了して外に出た時には、雨は上がっていました。

 板橋における取組みの広がりに、これからも注目したいと思います。
 高島平で子ども食堂を運営されている男性と知り合うこともできました。2023年3月以来、久しぶりに高島平に足を運んでみようと思っています。

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」(月2回、無料)
 https://www.mag2.com/m/0001579997