【オーシャンカレント308】「令和の米騒動」

【ポイント】
 「令和の米騒動」は解消しましたが、産地や生産者に対する消費者の理解と実践がなければ、将来的に安定的な米の生産・供給基盤を維持していくことはできません。

食料・農業・農村政策審議会 食糧部会資料(2024年10月)より

昨年8月、大都市圏を中心に米がスーパー等の店頭から消えました。連日のようにテレビのワイドショーは空になった米の棚の映像を放映し、「令和の米騒動」という言葉がマスコミを賑わせました。

もともと端境期であるこの時期の米が例年以上に品薄になったのは、供給面では23年産米が高温障害などで精米歩留まりが低下したことに加えて、需要面では輸入食品等が値上がりする中で米には割安感があったこと、インバウンド(訪日外国人)消費が増加したこと、さらには8月8日の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表等により消費者の買い込み需要が発生したことにあります。販売機会を逃さまいとする、流通業者による確保競争もありました。
 その後、2025年産米の収穫期を迎え、いつしか「令和の米騒動」という言葉も聞かれなくなりましたが、多くの気づきや教訓を残しました。

ひとつは、米の消費量は大きく減少(ピーク時の4割程度)しているものの、消費者の多くは現在も米を「主食」と見なしているということです。主食が消えたからこそ、多くの消費者がパニック的な行動に走ったのです。
 一方、米の生産については、需要が長期的に減少を続ける中で綱渡りのように翌年の需要量を見通し、ギャップ分については他作物への転換するという政策を推進してきました。しかしこのような方法では、想定外のリスク(気候変動、地震等)に十分に対応できないことが明らかになったことです。

現在、量的な需給ひっ迫は解消したものの、価格は高い水準のままで推移しており、消費者の米離れに拍車をかけるのではという危惧する声も出ています。
 私たち消費者としては、せっかく米の重要さに気付いたのであれば、米の生産者や産地の現状(農家の減少・高齢化、厳しい経営状況、荒廃農地の増加等)に対する理解を進め、上昇している生産コストの一部を進んで負担していくことが必要と考えます。ちなみに常に新鮮なものを求めるという消費者ニーズに応えるため、店頭の米も精米後一定期間が経過すると廃棄されるという現状もあるそうです。
 消費者の理解と実践がなければ、将来的に安定的な米の生産・供給基盤を維持していくことはできません。その意味で、昨年が転機となった年として記憶されることを期待したいと思います。

[参考]
「令和6年端境期における需給状況に関する分析」(2024年10月、食料・農業・農村政策審議会 食糧部会資料)
 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/2410/attach/pdf/241030-5.pdf

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.308、2025年1月14日(火)[和暦 師走十五日]
  https://food-mileage.jp/2025/01/26/letter-308/
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