【オーシャン・カレント】「一揆」とはなにか

【ポイント】
 一揆の本来の意味は「意識や行動をともにするグループ・組織」のことであり、武力による階級闘争や革命というイメージが付加されたのは近年(1960~70年代)のことです。

(画像は下記の「参考文献」より。)

「揆」という字にはもともと「はかる」という意味があり、派生して「教え」「方法」等の意味を含むようになりました。「一揆」という熟語は平安時代には単に「同一である」、鎌倉時代になると「心を一つにして」「一致団結して」という意味で使われるようになったそうです。つまり一揆とは、本来、意識や行動をともにするグループ・組織のことを意味していました。
 また、構成員の平等性主義が貫かれていることも特徴で、有名な傘連判状という署名形式も、首謀者が特定されないようにとの配慮だけではなく、参加者同士の対等性を表したものだそうです。

 江戸時代の百姓一揆も、初期は直訴や逃散といった非暴力的なものでしたが、中期から幕末にかけては大規模化し、強訴や打ちこわしといった実力行使も伴うようになりました。ただ、その場合でも刀や鉄砲など武器は使用されず、もっぱら鋤や鍬が用いられたとのこと。
 一揆の要求は、あくまで「お上」が「仁政」を取り戻すことにありました。一揆に武力による階級闘争や革命というイメージが付加されたのは1960~70年代以降で、これは現在は歴史学会でも否定されているようです。さらに一揆の象徴のようにイメージされている「竹槍蓆(むしろ)旗」についても、明治の自由民権運動者が前時代を否定するために作りだした虚像とのことです。
 なお、大規模な一揆が広がった時代は、天候不順による飢饉があったことも指摘されています。食糧不足は、いつの時代も(例えば2010年代の「アラブの春」も)政情不安につながるのです。

[参考文献]
呉座勇一『一揆の原理』(2015年12月、ちくま学芸文庫)
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480096975/
若尾政希『百姓一揆』(2018年11月、岩波新書)
 https://www.iwanami.co.jp/book/b378376.html

出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.310、2025年2月12日(水)[和暦 睦月十五日]
https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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