【ブログ】食べものの「合理的な価格」について

2025年2月22日(土)。
 亡き母の誕生日に、好きだった赤ワインとチーズケーキをお供えしました。
 この日は、天気晴朗なれど風強し(まだ『坂の上の雲』を引きずっているようです)。

 3月30日(日)の「令和の百姓一揆」に向けて、初めてノボリというものを作ってみました。反グローバル運動の一環なのに Am〇zonに注文するのも変な話ではありますが、自由に注文できる文字は、故・山下惣一さんのお言葉をお借りしました。
 当日はこれを掲げてトラクター行進の後を歩こうと思っています。

 いつもの通勤コースで東京・千代田区の日比谷図書文化館へ。特別展示「実録・桜田門外の変」が開催中です(3月24日(月)まで)。

桜田門外の変が起こったのは、安政七年三月三日(1860年3月24日)のこと。
 変の様子を詳細に描いた様々な絵図や、関連する古文書(各地に残された記録)が展示されています。映像や多数のパネルも。

左から井伊家上屋敷跡で発掘された瓦や食器、新撰東京名所絵図より、近江商人とのかかわりに関する展示。

14時からは関連講座(日比谷カレッジ)として「彦根藩世田谷領の人々と桜田門外の変」が開催されました。地下1階の大ホールは満席です。
 講師の角和裕子さん(世田谷区立郷土資料館学芸員)が、「変」の直後や一か月後の葬儀の時の世田谷領(彦根藩の飛地領)の人々の様子を、代官の妻が遺した日記などの史料を元に分かりやすく説明して下さいました。準備して下さっていたレジュメなど資料も丁寧で、当時の様子が目に見えるようでした。

15時30分に終了した後は、冷たくて強い風のなかを徒歩で東京駅へ。。
 KITTE 丸の内1階アトリウムでは、この日まで4日間、期間限定の「値段のないスーパーマーケット」がオープンしていました。
 消費者自らが値段をつけて購入することで、食品の供給に係る背景やコストについて考えるきっかけにしてもらおうという農水省主催のイベントです。
 様々な食品の生産・流通コストが上昇している中、「合理的な価格の実現」は、昨年改正された食料・農業・農村基本法にもうたわれ、現在、新規立法も準備中です。

予想していた以上の大盛況でした。
 若いカップルや親子連れが熱心に展示を見て、野菜や納豆などを手に取ってレジに並んでいます。果たして本当に「合理的(フェア)な価格」で買ってくれているのか、疑問に思ってスタッフの方に聞いてみると「実際の値段はまちまち」とのこと。ちなみに1円から買えるそうです。
 折から米や野菜が高騰を続ける中、生産者、消費者双方にとって何をもって「合理的(フェア)な価格」とみなすのか、なかなか難しい課題です。

JR、京王線を乗り継いで、めじろ台駅に到着したのは17時30分頃。
 GoogleMapを確認すると、徒歩10分ほどのところに万葉公園というのがあったので立ち寄ってみることに。高台にあり、暮れなずむ八王子市街が望めました。園内には万葉集の歌碑もあるそうですが、暗くなってきたので(寒いし)探すのは断念。

だしの和食・あじなお」に到着したのは18時前。
 旬の食材を用いた優しい出汁の料理が味わえる和食店で、私は2021年12月以来です。

この日は、≪あじなお生産者サミット≫~前夜と称する一夜。
 生産者の方とご一緒し、少人数で優しい料理を楽しもうという、あじなおのご主人こだわりの企画のようです。
 壁には、お店で使用している食材の生産者の方たちの顔写真が、プロフィールとともに貼り出されています。

この日、ご一緒させて頂いた生産者の方はお二方。
 お一人目は、ぶぅふぅうぅ農園(山梨・韮崎市)の中嶋千里さん。
 放牧豚肉と平飼い卵を生産しておられ、自前の加工場もあるとのこと。1970年代に仲間とともに新規就農され、現在も消費者グループとの取引やオーガニックニックスーパーで販売されているほか、ネットショップも運営されているそうです。食品工場から出る副産物(エコフィード)を利用すること等で、飼料の国産率は80%とのこと。
 また、アニマルウェルフェア(動物愛護)の普及にも尽力されています。

もうお一人は、いがきのうえん(東京・瑞穂町)の井垣貴洋さん。
 東京都における新規就農者第一号で、野菜を自然栽培で栽培。販売は宅配が中心とのことです。水、土曜日(農業に大切な「水と土」)には直売や見学会なども実施されているとのことで、一度お訪ねしたいと思っています。

左はぶぅふぅうぅ農園のHP、右は東京NeoFarmersのHPのHPより。

さて、この日の特別コースの献立は以下のようなものでした(若干、うろ憶えのものもあります)。
 前菜として天然岩もずく(青森産)の出汁酢、ぶぅふぅうぅ農園の放牧豚の頬肉と野菜の寒天寄せ、ごま豆腐、カンパチの白子、青菜のおひたし、刺身こんにゃく、金柑の甘露煮、干し柿バターなど。見た目も綺麗です。
 根菜の茶わん蒸しホタテあんかけ、檜原村産舞茸と水菜など季節野菜の沢煮椀にも、いがきのうえんの野菜が使われています。。

ぶぅふぅうぅ農園の放牧豚のスペアリブ(バルサミコ酢仕立て)は、ほろほろと柔らかく美味です。マコモダケやサツマイモなどの天ぷら、ヒラメの昆布〆や熟成カンパチ等のお造り、里芋のお饅頭、出汁茶漬け。
 デザートの天然イチジクのシャーベットは、自然栽培の紅茶を添えて出して下さいした。

いずれも「顔のみえる」食材ばかり。本当に優しく、美味しい品々でした。
 丁寧な料理法もちろんですが、何より、生産者の方と親しく懇談させて頂きながらの食事は、贅沢で、美味この上ないものでした。ちなみにコースは料理のみで8000円と、正直、毎日のように手が出るものではありません。しかしこの日は十二分に「合理的な」値段でした。

都会の市民にとっては、食べものの生産現場(産地や生産者)は、目に見えない遠いものになってしまっています。そのなかで、このように生産者や食材にこだわった飲食店があることは、本当に貴重で有難いことです。
 これから ≪あじなお生産者サミット≫ がどのように展開していくのか、大いに期待したいと思います。

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
 https://www.mag2.com/m/0001579997