【ほんのさわり】古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?』

-古沢広祐『今さらだけど「人新生」って?-知っておくべき地球史とヒトの大転換点』(2024.3、WAVE出版)-
 https://www.wave-publishers.co.jp/books/9784866214306/

【ポイント】
 著者は、人間自らが引き起こした自滅の危機を免れるためには、世界全体の地球市民的な連帯と、グローバル資本主義の変革が不可欠としています。

著者は1950年東京生まれの國學院大學客員教授、農学博士。
 人新世(じんしんせい・ひとしんせい)とは、驚異的なスピードで発展してきた人間の科学・技術・文化、そしてグローバルな経済活動が世界に大きな脅威を与えている現代を表す地質学上の用語です。
 特に1950年頃を境に、大気中のCO2濃度の増大、熱帯雨林の消失、エネルギー使用量が「大加速化」し、微妙なバランスの上に成立している地球環境に甚大な脅威を与えているのです(いくつもの急角度のグラフが印象的です)。
 また、スケールの大きい地球史の観点から、生物は危機を迎えるたびに飛躍的に進化してきたこと(例えば「カンブリア爆発」)、ひ弱なホモ・サピエンスだけが道具の使用や他者との協調(コミュニケーション能力)により環境適応能力を高めて生き残ってきたことなども紹介されています。
 現代で急速に進みつつあるAIに象徴されるトランスヒューマニズム(超人間主義)については、新たな道具による飛躍的な進化の可能性を認めつつも、「自己や人間存在への洞察を欠いた幼児的自己拡張の現れ」ではないかと否定的です。

 最後に著者は、人間自らが引き起こした自滅の危機を免れるためには、世界全体の地球市民的な連帯と、グローバル資本主義の変革(「資本」の制御と適正利用)が不可欠と結論づけます。そして宮沢賢治の『農民芸術概論』を引用しつつ、「かつて賢治が想い、願い、祈った世界を、私たちもまた共鳴しながら可能な限り実現していけたら」と願っています。

[参考]
拙ブログ「渋谷発! 食・農・SDGsが地域を変える!!(古沢先生の講演会の模様)
 https://food-mileage.jp/2025/03/02/blog-562/

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.312、2025年3月14日(金)[和暦 如月十五日]
  https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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