【メルマガ】F.M.Letter No.313-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.313◇
  2025年3月29日(土)[和暦 弥生朔日]
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◆ F.M.豆知識  食料消費と食料自給率の長期推移
◆ O.カレント  米の作況指数について
◆ ほんのさわり 井出留美『私たちは何を捨てているのか』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 いよいよ年度末、私事で恐縮ながら農水省の再任用も終了です。40年以上の間、公私にわたり本当に多くの方に支えて頂いたことに、心よりお礼申し上げます。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

-長期的な食料消費の変化と食料自給率の推移-

【ポイント】
 食料自給率が長期的に低下してきた最大の要因は、消費者の食生活(食の選択)の変化にあります。

3月30日(日)の「令和の百姓一揆」(イベント情報欄参照)には、私も「農業問題は都市住民の問題」と染め抜いた幟を掲げて行進に参加する予定です。なぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのかを端的に表わしたグラフが、リンク先の図313です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/03/313_gekihen.pdf

折れ線グラフにあるように、1960年度にはカロリーベースで79%、生産額ベースで93%あった食料自給率は、2022年度はそれぞれ38%、58%へと大きく低下しています。食料自給率(消費量/国内生産量)が低下したということは、すなわち国産農産物に対する需要が減少し、代わって輸入食料に対する需要が増加したことを示しています。このことが、正に現在の農業の現場が危機(農業所得の低迷、担い手や農地の減少)に直面している原因に他なりません。

それでは、私たち消費者が意識して積極的に輸入食品を選択してきたかというと、そういう訳ではありません。
 棒グラフは、食料自給率に大きな影響を及ぼす主な3品目の1人当たり食料消費量(注)の推移を示したものです。2022年度の消費量を1960年度と比べると、米は約4割の水準へと大幅に減少した一方、畜産物や油脂の消費量は3~4倍へと急増しています。つまり、食の洋風化が急速かつ大幅に進行したのです。これほど食生活パターンが激変した国は先進国の中では日本だけです。
 米は国内で自給が可能です。一方、畜産物や油脂については、その生産に必要となる飼料(とうもろこし等)や原料(大豆や菜種)の大部分を輸入に依存しています。
 つまり、私たち消費者の食の選択(洋風化)が、結果として、食料自給率の低下につながったのです。

(注)
 統計用語としては正確には「供給純食料」であり、家庭で発生する食品ロスを含んでいるため摂取量(実際に食べた量)とは異なります。

[データの出典]
 農林水産省「食料需給表」から作成。    
 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/zikyu_10.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

-米の作況指数について-

【ポイント】
 米の収穫量は1.7mmのふるい目ベースで把握していますが、作況指数については都道府県ごとに最も多くの農家が使用しているふるい目(1.8~1.9mm)ベースで算定しています。

農林水産省HP「水稲収穫量調査と生産現場の実感について」より。

米の作況指数とは米の作柄の良否を表す指標で、10アール(1000平米)当たりの「平年収量」に対するその年の収量の比率で表されます。なお、平年収量とは気象などが平年並みに推移すると仮定した場合の予想収量のことで、直近30年間の実収量や気象データによる傾向値を基に、毎年、算出(変更)されます。

その年の収量については、無作為抽出した全国で約8000筆(ひつ、登記簿上の土地の単位)の田のなかの3か所(計3平米)で稲を刈り取り、実測することにより求めています。
 前号で説明したとおり、収穫量(主食として供給される可能性がある全体量)については、ふるい目1.7mmベースで把握していますが、作況指数については都道府県ごとに最も多くの農家が使用しているふるい目幅(1.8~1.9mm)をベースに算定しています。
 しかしながら、作況指数(昨年産は101)についても実感と異なるという声も出でいることから、統計の仕組みについての意見交換等を続けていくことが必要です。

[データの出典]
 農林水産所HP
「令和6年産水陸稲の収穫量」
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kome/suiriku/r6/syukaku/index.html
「水稲収穫量調査と生産現場の実感について」
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/attach/pdf/index-88.pdf

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

-井出留美『私たちは何を捨てているのか-食品ロス、コロナ、気候変動』(2025年3月、ちくま新書)-
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076779/

【ポイント】
 著者は食べものを捨てることは自分のたましいを捨てることであり、目の前の食べものとどう向き合うかは自分自身の生き方そのものあるとしています。

著者は外資系食品工業の広報やフードバンク活動に携わった食品ロス問題ジャーナリスト。
 本書では、現在の日本及び世界における食品ロス問題の深刻さが様々なデータで示されています。例えば食品ロスのために失われている1年間の金額は日本で4兆円、世界で2.6兆ドル。日本での一般廃棄物処理費用は2兆円で、うち4割は生ごみ。コンビニ1店舗当たり1年間に468万円の食品を廃棄。
 また、食品ロスを排出源とする温室効果ガス排出量を国に見立てると、中国、米国に次いで3位になるとのデータも。

さらに、昨年8月スーパーの棚から米が消えた時も、その裏側では大量の精米が廃棄されていたという事実。スーパーでは精米後1か月を目安に商品棚から撤去するという商習慣があるそうで、米の安定供給のために必要なことは、まずはロスを減らすことではないかと訴えています。さらに、恵方巻の完売店舗率は激減しているという独自の調査結果も紹介されています。
 一方で、食品ロス削減に向けた世界及び日本各地の先進的な取組みも多数紹介されています。

著者によると、食品ロス削減は経済面(ごみ処理費用等の削減)、環境面(温室効果ガス排出量の削減)、社会面(教育や雇用の機会確保)で大きな効果があるとしていますが、著者が本当に訴えたいことはこれら金額や数字で表されるものだけではありません。
 道元の『典座教訓』やドラマ『北の国から』等を引用しつつ、「食品ロスを出すということは生きもののいのちを無駄にすること、自分のたましいを捨てること」「目の前の食べものとどう向き合うかは、自分自身がどう生きるかということ」と訴えているのです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 14年目の3.11は「学生が生産者を応援する会」第3弾[3/16]
 https://food-mileage.jp/2025/03/16/blog-565/

〇 ぶらり街なか散歩(東京・新宿区落合)[3/17]
 https://food-mileage.jp/2025/03/17/blog-566/

〇 複合災害の被災地から、希望の芽を育む女性たち(鈴木純子さんトークイベント)[3/20]
 https://food-mileage.jp/2025/03/20/blog-567/

〇 第6回 東雲会(於 千葉大学松戸キャンパス)[3/25]
 https://food-mileage.jp/2025/03/25/blog-568/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します(敬称略)。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

〇「令和の百姓一揆」トラクター行進
 日時:3月30日(日)14:00~
 場所:青山公園~明治神宮会館
 主催:令和の百姓一揆実行委員会
 (注)予想以上の大人数になった場合、行進は農業者中心となるそうです。
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/profile.php?id=61571764336699

〇「Present Tree in くまもと山都2025」植樹ツアー
 日時:4月12日(土)~13日(日)
 場所:熊本・山都町
 主催:NPO環境リレーションズ研究所
 (詳細、問合せ等↓)
 https://blog.presenttree.jp/2025/01/16/15309/

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
 「この季節、日本人みんなが寅さんになるね」
 「えっ、どういうこと?」
 「桜(さくら)のことが気になりますから」

 過去のアーカイブは以下に掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.314は4月12日(土)[和暦 弥生十五日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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