【ほんのさわり】井出留美『私たちは何を捨てているのか』

-井出留美『私たちは何を捨てているのか-食品ロス、コロナ、気候変動』(2025年3月、ちくま新書)-
 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076779/

【ポイント】
 著者は食べものを捨てることは自分のたましいを捨てることであり、目の前の食べものとどう向き合うかは自分自身の生き方そのものあるとしています。

著者は外資系食品工業の広報やフードバンク活動に携わった食品ロス問題ジャーナリスト。
 本書では、現在の日本及び世界における食品ロス問題の深刻さが様々なデータで示されています。例えば食品ロスのために失われている1年間の金額は日本で4兆円、世界で2.6兆ドル。日本での一般廃棄物処理費用は2兆円で、うち4割は生ごみ。コンビニ1店舗当たり1年間に468万円の食品を廃棄。
 また、食品ロスを排出源とする温室効果ガス排出量を国に見立てると、中国、米国に次いで3位になるとのデータも。

さらに、昨年8月スーパーの棚から米が消えた時も、その裏側では大量の精米が廃棄されていたという事実。スーパーでは精米後1か月を目安に商品棚から撤去するという商習慣があるそうで、米の安定供給のために必要なことは、まずはロスを減らすことではないかと訴えています。さらに、恵方巻の完売店舗率は激減しているという独自の調査結果も紹介されています。
 一方で、食品ロス削減に向けた世界及び日本各地の先進的な取組みも多数紹介されています。

著者によると、食品ロス削減は経済面(ごみ処理費用等の削減)、環境面(温室効果ガス排出量の削減)、社会面(教育や雇用の機会確保)で大きな効果があるとしていますが、著者が本当に訴えたいことはこれら金額や数字で表されるものだけではありません。
 道元の『典座教訓』やドラマ『北の国から』等を引用しつつ、「食品ロスを出すということは生きもののいのちを無駄にすること、自分のたましいを捨てること」「目の前の食べものとどう向き合うかは、自分自身がどう生きるかということ」と訴えているのです。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
  No.313、2025年3月29日(土)[和暦 弥生朔日]
  https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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