【ブログ】Present Tree in くまもと山都2025

2025年4月11日(金)は、1年ぶりに熊本へ。
 13時過ぎに阿蘇くまもと空港に到着。快晴です。昨年と同様、妻の友人であるHさんがお忙しいなか出迎えて下さいました。前日は荒れ模様の天気だったとのこと。
 今年は水前寺成就園を案内して下さいました。偶然お会いした外国人ツアー客の案内係をされているという女性に勧められ、新しくできたお洒落なカフェ/ギャラリーで水前寺菜のお豆腐、南関揚げの稲荷ずし等を頂きました。
 古今伝授の間から眺める庭園の風景。心地よい風。9年前の熊本地震直後に訪ねた際には大きく減っていた池の水も、今は満々とたたえられています。

夜は熊本時代の旧友たちと再会、美味しい料理や日本酒を頂き(過ぎ)ました。
 有難いことです。

ちなみにこの日宿泊したホテルの洗面所には「熊本市の水道水は100%阿蘇の天然地下水」との表示。熊本は水資源の豊かな地で、海外の半導体メーカーにも人気(?)です。

翌4月12日(土)から2日間、“Present Tree in くまもと山都2025” が開催されました。
 天気は下り坂との予報のなか、参加者約30名は朝10時に阿蘇くまもと空港のロビーに集合、バスで山都(やまと)町に向かいます。
 今年もコーディネータは寺崎 彰さん(ECO九州ツーリスト)。役場勤務を経て現在は九州脊梁山地トラッキング等のガイドをされている方です。

主催者の鈴木敦子さん(認定NPO法人 環境リレーションズ研究所 理事長)がマイクを取られました。
 「プレゼントツリーとは、自分や大切な人のために樹を植えて、地元と共にその後10年間育てていくというプロジェクトで20周年を迎えた。これまで国内59か所、海外2か所に42万本を植樹している。森づくりを通して地域を丸ごと元気にしていきたい。今回のツアーも盛りだくさんで、植樹とは直接関係のないようなプログラムあるが、これは皆様に山都町の素晴らしさを実感してもらいたいため。ぜひ、お買い物も」等の挨拶。

 続いて参加者一人ひとりから自己紹介。ほとんどの方は山都のツアーは初めてのようです。また、製紙業やバイオマス、CSR関係など企業の方が多いのも、一般のボランティアツアーとはやや様子が異なります。

間もなくバスは山都町に到着。
 昨年2月の九州中央自動車道の開通によりアクセスは格段に良くなりました。以前は南阿蘇をぐるっと遠回りしていたのですが、阿蘇の景観が楽しめなくなったのは少々残念です。
 最初の目的地である通潤酒造(株)に到着したのは、11時15分頃。

寛政蔵では、山下泰雄代表が待っていて下さいました。熊本地震で大きな被害を蒙った県内最古の酒蔵が、お洒落なカフェに改築されています。
 山都町産の食材をふんだんに使ったランチ。ジビエのソーセージも添えられています。グラスで日本酒も頂きました。ご馳走様でした。

 直売所には、クレヨンしんちゃんのお母さん・みさえさんラベルの梅酒も販売されていました。みさえさんはアソ市出身だそうです。

国宝・通潤橋へ。放水まで少し時間があったので、一人で浜町の街なかをぶらり散歩。
 山都町観光文化交流館(やまと文化の森)では細川流盆石展が開催されていました。あちらこちらに八朔祭りの「大造り物」が展示されています。
 13時に放水開始。白糸台地に農業用水を引くために造られたアーチ型水路橋から噴出する水を、170年後の今も、惣庄屋・布田保之助の像が見守っていました。

清和文楽館には、ルフィとチョッピ―の造り物。「ONE PIECE」の作者・尾田栄一郎は熊本出身で、コラボした文楽も上演されているそうです。
 文楽人形の操り方などの説明に続き、「日高川入会花王・渡し場の段」を鑑賞。終了後は人形とともに記念撮影にも応じて下さいました。

1万5千年の歴史があるとされる弊立神宮へ。パワースポットとしても著名です。初めて本殿の奥にある「水玉の池」まで降りてみました。清澄な水が湧き出ています。

馬見原(まみはら)は、宮崎との県境に近い古くからの交通の要衝です。この地出身の寺崎さんの案内の声(自慢話)も高くなります。落ち着いた中心商店街で、若い方の手づくりドーナツ、昔ながらの商店のクジラの竜田揚げなどを求めさせて頂きました。

ごかせ温泉・木地屋に到着したのは17時頃。雨が落ちてきました。
 ゆったりと温泉に入り、地元産食材を中心とした美味しい食事とお酒(私は麦焼酎)。終わり頃には鈴木代表が紹介して下さり、「令和の百姓一揆」のフライヤーを説明させて頂きました。

 食事の後は、地元のアマチュア写真家(本人曰く「こちらが本業」)の方による星や暦についてのお話会。ちょうどこの日は弥生の満月です。晴れていれば屋外で天体観測会の予定だったのですが(一昨年は、文字通り降るような星空を堪能することができました)、残念でした。

一晩中、強い風と雨の音。朝になっても収まりません。
 ところが朝食を終えてバスが出る8時半頃には、雨はやみ、雲は切れ、陽まで射してきました。鈴木代表は自他ともに認める「晴れ女」ですが、今回も、その神通力が遺憾なく発揮されました。

途中、休憩のために立ち寄った「道の駅通潤橋」の売店には、くまもとグリーン農業(熊本県独自の認証制度)の野菜等も販売されていました。山都町は、有機農業生産者が日本一多いそうです。

植栽地に到着したのは9時50分頃。今年のツアーは、事務局の皆さんの尽力もあってスケジュールが予定より早め早めに進んでいます。この日からの参加者の方たちと合流。
 時折り日が射してきますが、元は茶畑だったという斜面には強くて冷たい風が吹きつけます。

 開会式では、まず鈴木代表から地元の方たちに向けて「ただいま~」と第一声。「プレゼントツリーの取組みは20周年を迎えたが、30周年もこの山都で迎えたい」とも。
 続いて山都町の副町長、熊本県副知事、地元の地権者代表や森林組合の方から挨拶を頂きました。県立矢部高校の林業科学科の生徒さん達の姿も。本プロジェクト立ち上げ時の立役者である前町長も顔を出して下さっていました

森林組合(この日に植えた木を、今後10年間、管理して下さいます。)の方による実演指導の後、班ごとに分かれて植栽を始めます。
 風が冷たく傾斜も急ですが、雨が降ったせいもあって土は柔らかく、作業自体は困難ではありません。

目を上げると、白糸台地の雄大な光景が目に入ります。遠くには九州脊梁山地の雄姿も。
 ところどころ、皆伐されたままで植林されていない林地が見えます。

バスで中央公民館に移動。
 地元の方たちによる、地元の食材を用いた食事・交流会。茶農家であり、熊本の有機農業運動のリーダーでもある下田美鈴さんが、竹に盛り付けられた料理の説明をして下さいます。

下田円美(まろみ)さんからはお味噌汁などの説明。発酵食や、山都町の食料自給率の高さ等についても紹介して下さいました。
 寺崎さんからは、九州脊梁山地の魅力について動画を交えて説明。素晴らしい「絶景」です。

 30年以上にわたって生きもの観察を続けて来られた藤吉勇治さん(矢部郷自然観察会)は、希少な生きもののスライドを映写しながら、「山都町の豊かな自然を未来の子どもたちにも残していきたい」と話されました。

山都でしかの鳥越靖基さん(神奈川県出身、趣味はバンドとのこと)は、日本及び山都町の有機農業の現状、学校を作り人材育成にも取り組んでいること等を紹介されつつ、「調和を重視する有機農業は音楽にも通じる。この街を奏でることが自分のテーマ」と話されました。

最後にロクシタンジャポン(株)の方からのプレゼン。
 これまでに5000本以上の苗木の寄付や有機JAS取得の支援等を行っているそうで、この日も多くの方が参加されています。スキンケアやボディケア製品の植物由来の原材料の持続的な調達と生物多様性の保全に尽力されている企業の姿勢に、大いに感じ入りました。
 参加者一人ひとりに、化粧水などの手土産まで準備して下さっていました。

この日は地元産品の販売会も行われました。
 目の前で生産者の方が説明して下さり、美味しいお料理も頂いた参加者の皆さんは、列をなして購入されていました。わが家は毎年恒例のしもだ茶園の冷茶水出しパック、なかはた農園のいちご等を求めさせて頂きました。

14時半に食事・交流/販売会は終了。
 スタッフの方を中心に床を掃除して(靴の泥は落としてきたつもりでしたが、やはりかなり汚してしまいました)、机や椅子を元の配置になおして公民館を後にしました。

 バスは16時過ぎにあそ熊本空港に到着、ここで解散です。最初から最後まで同行・ガイドして下さった寺崎さん、スタッフの皆さん、南阿蘇交通のバスの運転手の方、お世話になり有難うございました。
 ちなみに東京に着くと強い雨。熊本も翌日は荒れ模様になったようです。鈴木大明神の神通力に改めて恐れ入った次第。

今年も熊本・山都町の豊かさに触れることができたツアーでした。
 ところで4月14日(月)に総務省が公表した人口推計によると、日本人の減少幅は過去最大となり、都道府県別にみると増加したのは東京都と埼玉県だけです(熊本県は前年比0.69%の減)。
 過疎の進行により消滅した集落跡地では、森林の半分以上が放置されているという調査(2020年、総務省)もあります。
 一方、人口の集中が進む東京都(0.66%増)のカロリーベース食料自給率は「0」%。日本の社会は、非常に不均衡でいびつな姿となっているのです。

 私自身も東京に住む一人の消費者として、どのようにすれば社会を1ミリメートルでも前に進めることができるのか、考え、実践していければと思っています。

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
 https://www.mag2.com/m/0001579997