【ポイント】
いざという時の最後の命綱という政府備蓄米の本来の役割を損なうことなく、米の円滑な流通を確保するための難しい運用が求められています。

1993(平成五)年は記録的な冷夏と日照不足に見舞われ(2年前のフィリピン・ピナツボ火山の大規模噴火が原因との説も)、作況指数は74という大凶作となりました。2年前も作況指数95と不作であったことから在庫水準も低く、アメリカやタイから米の緊急輸入を行う事態となりました。
この「平成の米騒動」を受けて、95年に旧食糧管理法に代わる「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が施行され、このなかで政府備蓄米制度が創設されたのです。
これは10年に1度の不作にも耐えられるよう100万トン(2か月分)を目安に備蓄するもので、従来、大凶作や連続する不作、あるいは災害等の緊急事態しか放出できないこととされていました。
しかしながら、昨年夏以降、米の小売価格の高騰が続く中、本年1月、審議会への諮問・答申を経て、米の円滑な流通に支障が生じていると判断された場合には、1年以内に同量を買い戻すことを条件に、放出(集荷業者に販売)できるように運用が見直されました。
これを受けて、これまでに2回にわたって合計21万トンの備蓄米が市場に放出され、3月下旬から小売店頭での販売が始まっています。しかしながら全国のスーパーでの米の平均価格は3月最終週まで13週連続で値上がりしており、政府はさらに放出を続ける予定とのことです。ただし、いざという時・食料危機時の最後の命綱という政府備蓄米の本来の役割を損なうことのない運用が求められます。
いずれにしても、米の生産・流通構造に関しては、異常気象の頻発や国内生産基盤のぜい弱化など過去には想定できなかった構造変化が生じていることは間違いありません。
[データの出典]
農林水産所HP「食料・農業・農村政策審議会食糧部会 資料(令和7年1月31日開催)」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/250131/250131.html
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.314、2025年4月12日(土)[和暦 弥生十五日]
https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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