◇フード・マイレージ資料室 通信 No.316◇
2025年5月12日(月)[和暦 卯月十五日]
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◆ F.M.豆知識 木材供給量と木材自給率の推移
◆ O.カレント 木質バイオマス発電について
◆ ほんのさわり 幸田 文『木』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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天地には陽気が満ち、風薫る季節となりました。「さらさら青葉の明けてゆく風」(山頭火)。今号は「木」の特集です。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-木材供給量と木材自給率の推移-
【ポイント】
近年、木質バイオマス発電施設での燃料材需要の増加等により、木材自給率は上昇傾向にあります。

日本の国土面積に占める森林の割合は66%と、OECD加盟国の中ではフィンランド、スウェーデンに次ぐ第3位となっています。それでは「森林大国」日本の木材自給率はどうなっているでしょうか。
リンク先の図316は、日本の木材供給量(国内生産及び輸入)と木材自給率の推移を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/05/316_mokuzai-1.pdf
1950年代後半には6,000万立法メートルを超えていた国産材の供給量は、丸太の関税撤廃や円高の進行に伴い輸入が増加したことにより減少傾向で推移し、2002年には1,692万立法メートルまで減少しました。
しかしながら、この年を底として近年は増加傾向に転じ、2023年には3,444万立法メートルと2002年の約2倍の水準となっています。この背景には、国内における森林資源の充実、国産材利用の増加、特に木質バイオマス発電施設での燃料材利用の増加があります。
逆に、増加してきた木材の輸入量は、環境保護の観点から天然林伐採や丸太輸出を制限・禁止する国が増えたため、1996年の9,045万立法メートルをピークに減少傾向に転じています。
これらの結果、低下を続けてきた木材自給率は2002年の18.8%を底に上昇に転じ、23年には43.0%となっています。
供給量の内訳をみると、近年は国産、輸入ともに燃料材が増加していることが注目されます。そもそも1960年代頃までは木炭や薪が燃料として用いられていましたが、輸入石油等に依存する「エネルギー革命」によりほとんど使われなくなっていました。
ところが近年、木質バイオマス発電施設の増加を背景に、燃料用チップやペレットというかたちでの燃料材に対する需要と供給量が増加しているのです。
[データの出典]
農林水産省「木材需給表」から作成。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/240927.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-木質バイオマス発電について-
【ポイント】
真に持続可能で循環型の木質バイオマス発電を普及させるためには、国内における未利用木質資源の利用促進の観点が不可欠です。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/community/dl/08_07.pdf
バイオマスとは生物資源(bio)の量(mass)のことで、これら再生可能な生物由来の有機性資源のうち木材からなるものを「木質バイオマス」と呼びます。
木質バイオマスには、樹木を伐採する際に発生した枝などの林地残材、製材工場から発生する樹皮やのこ屑、さらには住宅の解体材や街路樹の剪定枝など様々なものがあります。
木質バイオマス発電の特質は「カーボンニュートラル」であることです。
つまり、樹木等の植物は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収・固定するため、木材のエネルギー利用は大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えません。このためFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の対象とされたこともあって、近年、木質バイオマス発電施設数は増加傾向にあり、2025年3月末現在、全国で244か所が稼働しています。
一方、林地残材の利用は増加しているものの、現在も3割程度にとどまっています。
先日、山梨県の中山間地を訪ねましたが、かつては木炭や薪として有効利用されていたであろう丸太や枝が森林内に放置されていました。チップ輸入の増加が海外の森林資源や環境に悪影響を及ぼしているとの指摘もあります。
真に持続可能で循環型の木質バイオマス発電を普及させるためには、国内における未利用木質資源の利用促進の観点が不可欠です。
[参考]
林野庁HP「木質バイオマスエネルギーの利用推進について」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-幸田 文『木』(1995年12月、新潮文庫)-
https://www.shinchosha.co.jp/book/111612/
【ポイント】
文章の達人である著者による、樹木と自然への畏敬の念を記したエッセイ集です。

著者の幸田 文(あや)は、1904年、文豪・幸田露伴の次女として東京に生まれました。本書は、樹木に逢って感動をもらいたいと全国をめぐった著者の、樹木や自然に対する畏敬の念が綴られたエッセイ集です。
そもそも著者が草木に心を寄せるようになった切っ掛けの一つは、幼少期における父の「教え」だったとのこと。露伴は三人きょうだいのそれぞれに木を与え、木の葉の当てっこをさせたそうです。著者は、何でも当てる出来のいい姉(後に早世)への嫉妬心が草木への興味をより強くしたと、告白しています(『藤』)。
また、著者は「私は咲きだそうとする花、ひろがろうとする葉に一番心を引かれる」としつつ、山地の崩壊や川の荒れを目撃し、樹木(立木のいのち、材としてのいのち)にも寿命があることを知ります。「紅葉、黄葉ほど美しい別れ、老いの終わりはほかにあるまい」とも記しています。
ちなみに映画『パーフェクト・デイズ』には、役所広司演じる主人公が行きつけの古書店で本書を求めるシーンがあります。女性店員(犬山イヌコ)は会計をしながら「幸田文はもっと評価されなきゃだめよねえ。同じ言葉使ってんのに、どうしてこんなに違うのかしらねえ」と語ります。
その文章の達人である著者は、1990年、86歳で亡くなりました。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 本木上堰 春の浚い/雑木林再生ボランティア(福島・喜多方市山都)[5/8]
https://food-mileage.jp/2025/05/08/blog-575/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇「写真で伝えるパレスチナのいとなみ」
高橋美香&安田菜津紀トークイベント
日時:5月15日(木)18:00~20:00
場所:ブックハウスカフェ(東京・神田神保町2)及びオンライン
主催: ブックハウスカフェ
(詳細、問合せ等↓)
https://bookhousecafe.jp/event/content/1818
注:同会場で「パレスチナの猫」写真展開催中(5/7~27)
〇 お寺発!これからの日本社会とコモンズ / フォーラム
日時:5月16日(金)15:00~17:30
場所:神田寺(東京・千代田区外神田3)
主催:リタ市民アセット財団
(詳細、問合せ等↓)
https://rita.or.jp/forum-commons/
〇 ふくしまオーガニックコットンボランティアツアー2025【種まき編】
日時:5月18日(日)7:45東京駅集合
場所:福島・いわき市
主催:(有)有限会社リボーン
(詳細、問合せ等↓)
https://reborn-japan.com/domestic/14812
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「雨ニモマケズ、関税(風)ニモマケズ」
「社長、ご決意をお聞かせください」
「国産300万台を堅持(賢治)します」
トヨタはものづくり技術と雇用維持のために国内生産300万体制を「ぶれずに守る」とのこと。
過去のアーカイブは以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.317は5月27日(火)[和暦 皐月朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガの全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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