【ほんのさわり】柏木智帆『知れば知るほどおもしろい お米のはなし』

-柏木智帆『知れば知るほどおもしろい お米のはなし』(2025年6月、知的生きかた文庫)-
 https://www.mikasashobo.co.jp/c/books/?id=100892300

【ポイント】
 「お米ライター」の著者による、お米への愛がてんこ盛の力作。稲作の現場を知る著者ならではの貴重な情報も。

著者は1982年神奈川県生まれ。新聞記者時代に農業の現場の取材を続けるうちに「お米にハマって」退職。稲作農家、おむすびケータリング等を経て、現在は「お米ライター」として雑誌やテレビ等で積極的に情報発信されています。
 なお、この間、福島・猪苗代市の担い手農家の方と結婚して移住、その「現場感覚」も本書の重要な要素となっています。

本書には、お米がどこから伝わってきたか、日本史の中でお米がどのよう食べられてきたか、コシヒカリは福井県生まれであること、太る原因はお米のせいではないことなど、お米についてのうんちくがてんこ盛り。おいしいごはんの炊き方や農家直伝の卵かけごはんの食べ方など、実用的なノウハウも満載です。
 また、農家が国の減反政策などに振り回されてきたこと、単純に米農家は赤字とは言い切れないこと、高齢・兼業農家が農地を手放さないため新規就農者や若手農家に農地が集まらないことなどは、「現場感覚」を有する著者ならではの見解も述べられています。
 さらに、「令和の米騒動」の最大の理由は米不足にあるとし、「実際の生産量は統計よりも少ない」という農家の声があることも紹介されています。米の収穫量は統計理論に基づいて厳密に調査されているのですが、度重なる気候変動や変化する需要の実態等を十分には把握し切れていない面があるのかも知れません。

著者は、お米は日本の地形や文化をつくりあげてきた「日本の根っこ」であり、「食卓は産地等のほか過去や未来ともつながっている」とします。そして、国産のお米を食べて田んぼを維持していくことの大切さを訴えています。
 お米への関心が高まっている現在(残念ながら関心の対象が小売価格に偏っている現在)、ぜひ多くの方に読んで頂きたい本です。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.317、2025年5月27日(火)[和暦 皐月朔日]
  https://food-mileage.jp/2025/02/10/letter-309/
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