自宅近くに残されている平地林(都有地)は、野生らん等の自生地。
市民グループの方たちが長年にわたって保護活動を続けられています。この4月から私も仲間に加えて頂き、週2回の作業(今はクズの除去が中心)に参加しています(暑くなってきました)。
マヤラン、サガミラン、オオバノノトンボソウ、ヤブラン等の花が目を楽しませてくれています。ところが心無い人による盗採が後を絶たないそうで、皆さん、心を痛めています。ぜひ、やめてください(ここに掲載すること自体、かえって盗採を招くのではと躊躇しましたが)。

2025年6月29日(日)の午後は、東京・永田町の全国町村会館へ(暑か~)。
13時から、NPO中山間地域フォーラムと全国町村会の共催によるシンポジウム「多様な関わりによる新しい農村づくり~実践から探る 都市農村共創社会~」が開催されました。
180名以上の参加者で会場は満席です。

冒頭、生源寺眞一 中山間地域フォーラム会長から、
「本フォーラム設立から間もなく20年、2012年にはNPO法人格を取得し、これまですべて手弁当でシンポジウムの開催等の活動を続けてきた。中山間地域が条件不利という状況は変わらないものの、近年は、中山間地域は関係人口を引き付けて価値を生み出す存在といったように評価が変わってきた」等の開会挨拶がありました(本ブログの文責はすべて中田にあります)。
続いて、小田切徳美 副会長(明治大学)から「多様な『関わり』と農村」と題する解題。
「『関わり』は人、地域、国土の3スケールで論じることが必要。今日のシンポジウムは実践者による報告と、研究者/ジャーナリストのコメント(私の見方)をセットで行う。このシンポジウムが『解答ではなく解法を学ぶ』(生源寺会長の言葉)、『希望の解像度を上げる』(高橋博之氏の言葉)場となることを期待したい」等の内容でした。

最初の報告は、鈴木辰吉さん(しきしまの家運営協議会事務局長)から。
「日本の縮図のような愛知・豊田市において、地域の課題解決のために自治区が農村RMO(地域運営組織)を設立し、行動計画や『暮らしの作法』(「高齢者は生涯現役で地域のために尽くそう」等)を作成。2010年からの10年で40世帯が移住しソーシャルビジネス等を起業している。これまでの地域自治は住民自治のことだったが、これからは関係自治(地域住民と関係人口がともに主体となって地域課題を解決)という考え方が必要。「助けて」が普通に言える地域になりつつある」等の内容でした。
これに対して農業ジャーナリストの榊田みどりさんから、支え合い拠点の開設、財政面など安定的経営基盤づくりを模索しているところが「スゴい!」とのコメント。
続いて、上田昌子さん(飛騨市役所総合政策課)から「飛騨市における関係人口と共創するまちづくりプロジェクト」について報告。1.6万人の会員がいるファンクラブ、お互い様で困りごとを解決する「ヒダスケ!」等の取組み、東京大学等と行った関係人口の実態分析調査結果について報告して下さいました。
これに対して、平井太郎先生(弘前大学)から現地調査を踏まえたコメント。

休憩を挟み、中川玄洋さん(NPO法人bankup 代表)から、鳥取での中間支援組織の取組みについての報告。
「bankupは2002年、大学院生の時に設立。現在は9名の専従職員と約150名の大学生スタッフがおり、大学生を県内各地の農作業ボランティア(用水路の土砂撤去、防護柵設置等のボランティア)に派遣している。
ポイントは、つなぐ(出会いを提供)、翻訳する(違いを認識し意思疎通を図る)、伴走する(ゴールまで走る)こと」等の興味深い内容でした。
これに対して、筒井一伸先生(鳥取大学)から「行政の下請けではない、顔が見えている中間支援組織」等の評価がなされました。
後半は「各界からのコメント」として、まず、上入佐慶太さん(日本航空(株))から、青空留学(大学生と社員が一次産業の現場に「留学」するプログラム)、社内ベンチャーによる能登復興事業の概要等について報告。
続いて高橋博之氏さん((株)雨風太陽)から、ふるさと住民登録制度の現状等について、提案者の視点からの報告がありました。慢性的な災害である過疎に悩む地方と、人間性を喪失している都市住民の双方のメリットとなる制度とのことです。
(なお、この日、会場で高橋さんの新著『関係人口』を求めることができました。)
最後に、朝日健介 農林水産省農村活性化推進室長から新しい農村政策として、「農山漁村」経済・社会環境創生プラットフォームの立ち上げ等について説明。

休憩を挟んで、「実践から探る『都市農村共創社会』への接近」と題するパネルディスカッション。小田切先生をモデレーターに、鈴木さん、上田さん、中川さん、朝日さんが登壇。
鈴木さんからは、米を作り続けることが風景を守り続けることにつながること等について発言。上田さんからは、関係人口は移住と異なり複数の地域と関われるメリットがある等の説明。これにに対して小田切さんからは「飛騨市は計画からではなく観察から入っていることが注目される。これは現代の行政手法に対する批判」とのコメント。
中川さんからは「KPI等の数字を決めると一人歩きしてしまう。私たちは人生を扱う仕事を担っている。数字の裏にあるそれぞれの物語を積み重ねていきたい」等の発言。
さらに「中間支援組織が注目されているものの、現実には単価がついていっていない。仕事として成り立つように配慮してほしい。各省庁の支援措置も縦割りだが、受け皿となるのは全て自分たち」等とのホンネの発言がありました。

17時35分、石井勇人さん(中山間地域フォーラム運営委員、共同通信社)から、メディアの責任にも言及した挨拶でシンポジウムは終了です。
引き続き、会場を変更しての意見交換会(懇親会)。様々な地域から来られている方たちと名刺交換し、直接、お話しできるのがリアルのイベントの大きなメリットです。
限界集落、消滅自治体といった言葉に象徴されるように中山間地域の現状が深刻さを増しているなか、近年、中山間地域は関係人口を引き付けて価値を生み出す存在であることが再認識され、「都市・農山漁村共創社会」という言葉もあることなど、ステレオタイプではないではない様々な学びを頂くことができました。
一方、新たな農村政策の中で、ますます中間支援組織の役割が重視されているにも関わらず、運営に当たっての財政基盤、支援措置が十分ではないという、実践者の方からの言葉を聞くこともできました。
客観的な現状把握・分析と、それに基づく理念は大切です。しかし、美しい言葉で表現するだけでは、現在の中山間地域の課題の解決にはつながりません。現実に地域で実践されている方たちの言葉ほど重いものはないことを、実感することのできるシンポジウムでした。
登壇者、主催者・スタッフの皆様に感謝申し上げます。
(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
https://www.mag2.com/m/0001579997