【ブログ】ソーラーシェアリングフェスティバル ~第3回全国大会~

2025年7月5日(土)も猛暑。
 この日13時から東京神保町の専修大学で、ひろげよう!次世代の未来をつなぐ農業と再エネ「ソーラーシェアリングフェスティバル ~第3回全国大会~ 」の1日目が開催されました。
 地下鉄から地上に出ると、大学の建物が多数。しばし迷った後に、最も駅に近かった会場の10号館にたどり着きました。

 15分ほど前に到着。エアコンの効いた会場の大教室はすでに多くの人で握っています。会場の前でQRコードを読み込み。これがこの日の資料です。
 ちなみにソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、農地の上に太陽光パネルを設置し、営農を継続しながら発電を行う取組みのことです。

主催者の(一社)ソーラーシェアリング推進連盟の西 光司代表による開会宣言に続き、来賓からの挨拶。
 農水省・西 経子審議官はソーラーシェアリングの中には不適切な事例があることにも言及。堅達京子氏(NHKエンタープライズ)からは大きな可能性がある等のビデオメッセージ。増川武明氏((一社)太陽光発電協会)からは世界的にも導入が進んでいる状況等の説明。さらに長島 彬氏(ソーラーシェアリング発案者)の挨拶の代読。
 千代田区長、千葉・匝瑳市長からは、7月5日に締結された連携協定の概要等について説明。匝瑳市長は耕作放棄地の復活に貢献している現地の状況についての紹介もありました。

続いて、「再生可能エネルギーで地域と農業を元気に」と題して高村ゆかり氏(東京大学)からの基調講演。
 ソーラーシェアリングのCO2削減効果に関する研究が進んでいることを紹介しつつ、再エネ導入の意義として、気候変動の抑制の効率的な対策であることのほか、エネルギー安全保障、貿易収支の改善、大気汚染の抑制等に資するなど多様な便益があることについて説明がありました。一方で地域と共生した再エネの導入が課題となっているとも。

2人目の基調講演者は寺島実郎氏((一社)日本総合研究所、多摩大学)。「都市農業への視座から」と題した講演は、大いに興味深い内容でした。

 冒頭、太陽光発電ブームのパラドックスとして、金儲け目当ての貪欲な人が跋扈していることは大迷惑との発言に続き、21世紀の日本経済の実体(埋没)をマクロ統計数値で紹介しつつ、30年前にピークアウトした工業生産力モデルから思いっきりパラダイム変換する必要があると強調。これはベターではなくマストであるとのこと。

 また、令和のコメ騒動にも言及しつつ、都市住民は食べ物は金を出して買うものと思っていることが基本的な問題であるとし、そのせいで家庭から236万トンもの食品ロスが発生しているとを指摘。今後、国民一人一人が食のサイクル(生産-加工-流通-調理)の中に主体的に関与していくことが必要と力説されました。学生たちに農業体験をさせると、わずか半年で農業に対する考え・人間そのものが変わるとも。
 最後に、日本総研が事務局を務めている都市型農業創生機構について紹介がありました。「食と農」を主眼とする未来型の基幹産業を創出することを目的としているそうです。

続くセッションは「初めて匝瑳を訪れた学生たちの率直な感想」。
 自分の周りでも農業は就活の対象にもなっていないが、実際に訪ねて将来性・可能性を感じたという男子学生。ソーラーパネルの下は風通しもよく、差し込んでくる光の美しさに感銘を受けたとの感想も。
 兵庫・宝塚にあるソーラーシェアリング市民農園で大学生たちが協働・環境学習をしていることを紹介するセッションもありました。
 充実したセッションが同時並行で複数の会場で開催されています。

15時からは、「望ましいソーラーシェアリング」と題するセッションとパネルディスカッション。
 農林水産省、環境省、資源エネルギー庁の担当者からの説明。営農が適切に継続されていない事例が多く⾒られること、地域との共生が重要であること等について説明がありました。
 (一社)再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)からは、モデル事業と支援策の説明。
 山川勇一郎氏からは、さがみこファーム(神奈川・相模原市)の実践事例について説明を頂きました。ソーラーシェアリングが広がっていくためのポイントは地域との共生と農業を主体とすること。食と電気を軸とした地域づくりを目指しているそうです。
 NPO環境エネルギー政策研究所(ISEP)からは、地域にとって望ましい太陽光発電・チェックリストについて説明。最後に弁護士の方から、日弁連が営農型発言を提言した理由について紹介がありました。温暖化は深刻な人権問題とのことです。

後半は、近藤 恵さん(推進連盟代表)を司会にパネルディスカッション。
 日本では「悪貨が良貨を駆逐」しているとの現状認識の下、ドイツ、イタリア、フランスでは農業中心の健全なソーラーシェアリングを保証するための基準(遮光率、作付面積等)が定められているのに対して、日本では収量要件しか定められていないこと等を踏まえて、望ましい規制やインセンティブ制度のありかたについて討論がなされ、参加者全員もアンケートに記入しました。
 実践者である山川さんからは基準等の形だけを整えても難しいのでは、とのコメント。また、仮に採点制度を導入した場合は誰が担うか(農業委員会に負荷がかかっている現状)等の課題があることが明らかになりました。
 翌日(2日目)もアカデミック、農業、脱炭素、設備等をテーマにした多彩なセッションが開催されたようです。

なお、近藤 恵さんの二本松営農ソーラー(株)は、昨年11月に見学させて頂きました。
 その時、原発事故で一度は農業をあきらめたという近藤さんの「怒りではなく感謝と喜びの汗をかきたい。私たちの新しいスタイルの農場を見て、未来の地図を想像してほしい」との言葉が、今も強く印象に残っています。

(ご参考)
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
 https://food-mileage.jp/
 メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
 https://www.mag2.com/m/0001579997