【メルマガ】F.M.Letter No.320-pray for peace.

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.320◇
  2025年7月9日(水)[和暦 水無月十五日]
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◆ F.M.豆知識  小規模市町村の人口の現状
◆ O.カレント  本木・早稲谷 堰と里山を守る会
◆ ほんのさわり 高橋博之『関係人口』
◆ 情報ひろば  第2回「食と農の未来フォーラム」
         (7月23日、参加者募集中)
         ブログ更新、イベント情報等
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 全国的に猛暑続き、どうぞご自愛ください。1日1個の梅干がおススメです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/

-小規模市町村の人口の現状-

【ポイント】
 人口の少ない小規模自治体ほど近年における人口減少率が高く、同時に高齢化が進行しています。

(株)雨風太陽の高橋博之さん(「ほんのさわり」欄参照)によると、過疎は「慢性的な災害」であり、過疎地域はすでに「有事」に直面しているとのこと。東京圏への一極集中が進む中、地方の、特に小規模市町村では深刻な過疎化と高齢化が進行していると言われています。
 リンク先の図320は、この現状を総務省の統計を用いてに明らかにしたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/07/320_shokibo.pdf

下の棒グラフは、2020年から24年にかけての人口減少率です。
 この間、全国の人口は1.8%減少しており、日本は全体として人口減少局面に入っていることが確認できるのですが、これを自治体(市区町村)の人口規模別にみると、2024年時点で人口500人未満の自治体では8.5%減、500~1000人及び1000~3000人の自治体では8.9%減と、小規模市町村では相対的に人口減少率が大きくなっていることが分かります。
 一方、青い折れ線グラフは人口に占める20歳未満の者の割合で、全国平均は16.0%であるのに対して、500人未満の自治体では13.6%、500~1000人の自治体では13.2%、1000~3000人の自治体では12.1%と相対的に低いものとなっています。
 さらに、赤い折れ線グラフは80歳以上の者の占める割合で、全国平均は10.0%であるのに対して、500人未満の自治体では17.6%、500~1000人の自治体では18.2%、1000~3000人の自治体では17.7%と相対的に高くなっています。
 このように、基本的な人口統計からも、小規模市町村では人口が大きく減少すると同時に、高齢者の割合が高いことが確認されます。
 なお、詳細にみると、人口規模が同程度の自治体であっても人口増減率や高齢者率には大きな差が見られ、交流人口や関係人口の数の違いが背景にあるものと考えられます。

[データの出典]
総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(2024年1月1日現在)」から作成。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/

-本木・早稲谷 堰と里山を守る会-

【ポイント】
 福島・喜多方市の山間部にある本木上堰は、首都圏等からのボランティアと地域の農業者等との協働によって管理・保全されています。

画像:本木・早稲谷 堰と里山を守る会 FBページより

本木上堰(もときうわぜき)は、福島県会津地方の北部、喜多方市山都(やまと)町の本木・早稲谷地区にある水路です。急峻な山腹をめぐる水路の全長は6kmもありますが、高低差はわずか20mほどしかありません。今から300年近く前の元文元(1736)年に着工され、12年にわたる難工事を経て完成し、約14haの新田(棚田)が開発されたと伝えられています。
 しかしながらこの地区も、他の多くの中山間地域と同様、農業の担い手は減少・高齢化し、水路や棚田の維持も困難になりつつありました。そこで2000年頃から、都市部からの移住就農者が中心となって、冬の間に水路に溜まった土砂や落ち葉・枯れ枝等を除去するための堰浚い(せきさらい)ボランティアを募集することとなったのです。
 7名から始まったボランティアは口コミを中心に広まり、近年は首都圏等からの約50名が参加しています。リピーターが多いのが特徴です。

2005年に発足した「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」は、ボランティアの受け入れ、棚田オーナーの募集、棚田米の販売、棚田米を使った日本酒づくり、地元の子どもたちによる生き物調査等に取り組んでおり、2021年には日本農業賞(食の架け橋部門)奨励賞を受賞し、23年には「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選定されています。
 私もここ数年、ボランティアに参加させて頂いています。正直、作業はなかなかキツいのですが、毎年、美しい里山や棚田の風景、地元の方々による手料理の美味しさ等に魅了されます。

[参考]
本木・早稲谷 堰と里山を守る会 FBページ
https://www.facebook.com/sekitosatoyama

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/

-高橋博之『関係人口』(2025.3、光文社新書)-
https://shinsho.kobunsha.com/n/nc5b6b74cdda1

【ポイント】
 関係人口とは、その地域と様々なかたちで積極的に関わる人々のことで、今後の地域の内発的発展のために欠かせない人材とのこと。

著者は1974年岩手・花巻市生まれ。史上最年少の県議を2期務めた後、東日本大震災後は被災地を支援するために事業家に転身、「世なおしは食なおし」をコンセプトとする食材つき情報誌「東北食べる通信」の創刊、生産者から直接食材を購入できるスマホアプリ「ポケットマルシェ」の開発等に取り組んでこられました。
 「関係人口」とは、著者が東日本大震災の被災地支援を行う中で着想した言葉・概念とのこと。この「観光以上、定住未満」の人々のことを表す言葉は、今や地方創生を語る上で欠かせない概念となっている一方、著者は必ずしも本質が伝わっていないと感じ、「製造者責任」を果たすために本書を執筆したのだそうです。

著者によると、関係人口とは、拠点は地域外に置きつつ、地域や、その地域の人々と様々なかたちで積極的に関わる人々のことで、「都市と地方をかきまぜる」(都市のいいところと地方のいいところをフラットに見て再配列し、互いの課題を解決しながら、これまでにない新しい価値を一緒に生み出す)ためにも不可欠な人材のこと。
 また、分断している「消費者と生産者」「都市と地方」「人間と自然」を再びつなぎなおす役割も期待されているとします。

(株)雨風太陽は2023年12月、東証グロース市場に上場しました。社会性と経済性という二兎を追うために経済的財務諸表と別に社会的財務諸表という概念を開発し、2050年までに2000万人の関係人口を創出することを目指すとのことです。また、著者が提唱する「ふるさと住民登録制度」も社会に実装されつつあります。
 「世なおし」のために挑戦し続ける著者の姿には、これまでも直接・間接に大きな示唆と勇気を頂いてきました。「資本主義の舞台にちゃんと上がり、社会を変えるためにもがいてみる」という著者の覚悟と実践に、これからも注目していきたいと思います。

[参考]
株式会社雨風太陽 ホームページ
https://ame-kaze-taiyo.jp/

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。

▼第2回「食と農の未来フォーラム」の開催について
 食と農を取り巻く深刻な問題の多くは「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。本フォーラムは、都会の一般市民(消費者)の皆さんを主な対象として、食と農の現場の課題を身近に感じ、自主的な行動変容につなげて頂くことを期待して開催するものです。
 去る6月30日には、第1回を「食と農の未来フォーラムの開催についてーなぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのか」をテーマに開催し、多くの貴重な意見等を頂きました。
(第1回の模様)
https://food-mileage.jp/2025/07/04/blog-587/

第2回は、大友 治さん(本木・早稲谷 堰と里山を守る会、福島・喜多方市山都、「オーシャン・カレント欄参照」)をゲストにお招きして以下により開催しますので、多くの方々の申し込みをお待ちしています。

(1)日 時   2025年7月23日(水)午後7時~9時
(2)開催方式等 オンライン(zoomを利用)、参加費1000円。
    チケットを申し込んで下さった方には、終了後、アーカイブを配信予定。
(3)テーマ
   「江戸時代から山間部の棚田を潤す本木上堰の現状と課題」(仮題)
(4)内容
  主催者から中山間地域の現状等について説明 10分程度
  ゲストによるご講演  1時間程度
  質疑応答・意見交換 40分程度
(5)申込み方法
  以下からお願いします。
https://peatix.com/event/4488203/view
  なお、Peatixを使用されない方は、別途、メッセンジャーまたはメールで直接連絡下さい(メールアドレス foodmileage(アットマーク)jcom.home.ne.jp)。

(参考)フェイスブックのイベントページ
https://www.facebook.com/events/1057551099799929

 なお、第3回は以下によりオンライン開催する予定です。第2回フォーラム終了後、改めて募集します。
 (1)日 時  2025年8月26日(火)(予定)
 (2)ゲストとテーマ
  鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、いわき市)
   「原発被災地でオーガニックコットンを育てること」(仮題)

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 ぶらり赤羽プチ散歩(東京・北区、太田道灌像など)[6/27]
https://food-mileage.jp/2025/06/27/blog-585/

〇 実践から探る 都市農村共創社会(中山間地域フォーラム)[7/2]
https://food-mileage.jp/2025/07/02/blog-586/

〇 「食と農の未来フォーラム」がスタートしました。[7/4]
https://food-mileage.jp/2025/07/04/blog-587/

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

〇 第116回ブッククラブ『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス
 日時:7月14日(月)19:00~21:00
 場所:オンライン
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/608151228479896

〇 今夜はご機嫌@銀座で農業 7月
 日時:7月22日(火) 18:30~20:00
 場所:中央区立環境情報センター(東京・京橋)
 主催:今夜はご機嫌@銀座で農業
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/1222683629391027

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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「ワシントンに向かう飛行機の中で思いついたアイデアは、交渉を進める上でいい案だと思ったんだけどな」
「大臣、机上(機上)の空論でしたね」

 個人のフェイスブックで週3日お披露目中。過去のアーカイブは以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.321は7月25日(水)[和暦 閏水無月朔日]に配信予定です。
 正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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