2025年10月4日(土)は、小雨の中を東京・浜松町へ。浜離宮公園の緑の向こうに都立産業貿易センターの高層ビルがそびえ立っています。
2日からこの日までの3日間、第10回オーガニックライフスタイルEXPOが開催されていました。
無料になる事前登録を失念しており、1000円を支払って入場。
オーガニックに関わる様々な企業や団体が出展。すごい人です(HPによると、3日間で約2万人の入場者があったとのこと)。

様々なセミナーやイベントも同時開催されています。
私のお目当ては、15時30分から開催された「家庭菜園から始める気候変動対策~種と多様性が育む未来の食」と題するセミナー。
登壇者は、坂田奈菜子さん((一社)SEEDS OF LIFE institute)と澤登早苗先生です(恵泉女学園大学名誉教授、自由学園講師、NPO・Life Lab Tama代表)。なお、文責は中田にあります。
まず、坂田さんから気候変動の現状について説明。
国立環境研究所の A-PLAT(気候変動適応情報プラットフォーム)という有用なサイトも紹介して下さいました。
澤登先生はご自身の農場の様子について紹介して下さいました。近年の乾燥・高温によってキウイフルーツは不作が続いている一方、乾燥に強いブドウは結構いいそうです。なかなかデータだけでは実感できない気候変動が、身近なものであることが理解できました。
澤登先生からは、種子を海外に依存していることの具体的な問題点についても説明がありました。
輸入している種子の多くは日本の種苗会社が海外で生産しているものですが、澤登先生によると、日本の育成品種であっても採種地の環境が日本と異なるため特徴が出にくくなること、紛争や防疫問題等から輸入できなくなるリスクがあること、海外での採種は交雑を完全に回避することが困難になっているとのことです。

多様性の重要性についても強調されました。かつてバナナの主力品種であったグロス・ミチェル種は病害によって壊滅したそうです。
澤登先生は「私たちは食べたいものを食べる権利があり、伝統的な品種を守っていくことは豊かな食を実現していくことにつながる」として、家庭菜園でも種採りができると話されました。
最初は買ってきた種でも、採り続けることによってオリジナルのものができるそうです。将来、気候変動に伴って役に立つかもしれない遺伝子の多様性の保全に貢献するとも。
恵泉女学園大学の教育農場の様子もスライドで紹介して下さり、消費者自らが農業、食料生産にかかわること(「自産自消」)の大切さも強調されました。
農業には大変さと面白さがあり、消費者にとっても生きていく基本になるとのこと。恵泉女学園大学の教育農場には恵泉菜という、アブラナ科のこぼれダネから出た雑種もあるそうです。

最後にフェイスブックのグループページ「恵泉女学園大学の教育農場を次世代に繋ぐために」を紹介して下さいました。
同大学は少子化に伴って2024年度からの学生募集停止のために、今いる学生が卒業した後は閉校となる見通しとなっているなか、有機栽培による実習が行われてきた教育農場を「次世代に繋きたい!」と願う人々の集りとのことで、賛同する人は「どなたでも大歓迎」だそうです。私も早速、参加させて頂きました。
もとより気候変動や生物多様性の問題は全地球的な課題であり、個人として何か取り組もうとしても、正直、無力感を禁じえません。
しかしこの日のセミナーは、家庭菜園という身近なところから、解決に向けてできることが個人としてもあることを示唆してくれた貴重な内容でした。ただ1時間と短く、質疑応答の時間がなかったことは残念でした。
セミナーの後は、NPO日本オーガニックコットン協会のブースを訪問。子どもたちが糸繰り体験を楽しんでいます。
翌日、福島・いわき市へのボランティアツアーに参加することもあり、国内におけるオーガニックコットンの栽培の現状等について話を伺いました。オーガニックコットンは現在100%近くを輸入に依存しているものの、国内での栽培も徐々に増えてきているとのことです。
洋綿の方が製品化しやすいこと、コットンの有機JAS認定の仕組みがないこと等についても教えて頂きました。

最後に「安心農業」のブースに立ち寄って、養蜂GAP認証商品である「はちみつ漬け落花生」を求めさせて頂きました。
養蜂GAP(Good Agricultural Practices, 「よい農業の取組」)は、いつも銀座での勉強会でお世話になっている高安さんご夫妻が尽力して制定されたものです。
このイベント、今回は1つのセミナーしか参加できませんでしたが、オーガニックに関係する様々な取組みをされている方が多数参加されており、次の機会にはもっとじっくりと時間を取って参加したいと思いました。
17時を回り、多くの人が会場からいっせいに吐き出されて小雨の中をJR浜松町駅に向かいます。その波の中に身を置きつつ、胸の中にモヤモヤが芽生え、次第に大きくなってきました。
中山間地域など地方では多くの集落が消滅し、インフラの整備が(災害からの復旧さえ)ままならなくなっているなか、東京ばかりはきらびやかな開発が続けられている現状。一極集中の象徴のような近代的な、エアコンも効いた快適な高層ビルでの、本来は最も対極にあるはずのオーガニック(もちろん大規模・商業的な取組みも多数ありますが)関連のイベント開催。もちろん多くの人に来ていただき、オーガニックを広めていくためには、東京ほどふさわしい場所はないのでしょうが・・・。
(ご参考)
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
https://food-mileage.jp/
メルマガ「F.M.Letter-フード・マイレージ資料室通信」
https://www.mag2.com/m/0001579997
フェイスブック「フード・マイレージ資料室(分室)」
https://www.facebook.com/foodmileage
第5回 食と農の未来フォーラム(10月27日(月)19時~)のご案内
講師:佐久間 建先生、藤崎美智子さん
テーマ:「ハンセン病問題を基礎から学び、紙芝居『わたしの命の物語』から生きやすい社会について考える」(仮題)
https://peatix.com/event/4608742/view
