【ほんのさわり326】小泉英政『土と生きる-循環農場から』

-小泉英政『土と生きる-循環農場から』 (2013.9、岩波新書)-
https://www.iwanami.co.jp/book/b226230.html

【ポイント】
 成田空港反対闘争にも参加した著者は、「命つきるまで/土に向かえたら/何もいらない」と、自身の心境を述べています。

著者は1948年北海道生まれ。上京してベ平連の座り込み運動や成田国際空港反対運動に参加し、その後、千葉・成田市三里塚に移住して就農。現在は小泉循環農場を営んでいます。
 本書は、有機農業を始めて40年になる著者が、2週間おきに消費者に直送している野菜の段ボール箱に入れているワラ半紙1枚の「循環だより」をまとめたものです。

「芋名月」と題された珠玉のような一文があります。
 十五夜に当たる日、畑見学の人たちが来て出荷用の里芋(土垂・どだれ)を一緒に堀った時のこと。この年の里芋はとりわけ大きく、土を落とすために皆でどすんどすんと地面に落とした後、夕刻になって芋こさえ(子芋を外す作業)をしていると、東の空に「くれない色の満月」が昇ってきたそうです。著者は「何とその日にふさわして仕事をしたことか。里芋畑の上にも皆でしばし見とれた十五夜お月さん輝いた」と記しています。

新規就農後、様々な試行錯誤を続けていた著者がたどり着いたのが「循環農業」でした。輸入穀物に依存した鶏糞等を用いない、農業用ビニール等も極力使用しない、代わりに里山の落ち葉たい肥を「大地の母乳」として使用するという農法です。
 著者にとって有機農業とは、手間のかかる、地を這うような下手な農業であり(スマートという言葉とは真逆です)、「命と環境を守る創造的な非暴力直接行動」と位置付けています。
 著者は東京電力福島第一原発事故(一時、落ち葉たい肥も使用できなくなりました)の後、「命つきるまで/土に向かえたら/何もいらない」ことを再認識したそうです。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.326、2025年10月6日(月)[和暦 葉月十五日]
  https://food-mileage.jp/2025/09/17/letter-324/
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