-ヘンリー・ディンブルビー、ジェミマ・ルイス『食べすぎる世界-なぜ私たちは不健康と環境破壊のサイクルから抜け出せないのか』 (2025.10、英治出版)-
https://eijipress.co.jp/products/2343
【ポイント】
私たちは食料システムのなかで、「食べすぎる」ことによって自らの健康にも地球にも多くの負荷を与えていることを明らかにする一方、そこから脱却する方法について提示されています。

著者のディンプルビーはイギリスの健康志向レストランチェーンの共同創業者で、サステイナブル・レストラン協会の共同設立者。2020年にはイギリス政府の依頼を受けて「国家食料戦略」を発表しました。もう一人の著者・ルイスは「ザ・ウィーク」誌の元編集者。
食料システムとは「食料の生産から消費に至るまでの流れと、その相互依存的な関係」のことで、「地球上で最も革新的で破壊的なシステム」だそうです。私たちは知らないうちにこの強大なシステムの歯車となっており、タイトルにあるように「食べすぎる」ことによって、自らが不健康となると同時に、地球環境にも大きな負荷を与えていると分析しています。
「超加工」食品についても紹介されています。これらは大量の糖質や脂肪を含み、家庭の台所には馴染みのない添加物を使用することで、見栄えや味が良く、長期保存も可能となり、製造コストも低いとのこと。人々は安くて手軽で不健康な「ジャンクフード・サイクル」に囚われてしまっており(食べ物を選択できていない)、現在、イギリスでは総エネルギーの55%は超加工食品から摂取しているとのデータも紹介されています。
また、本書には、食料システムこそが生物多様性を含む環境破壊等の最大の原因であること、長寿を実現している日本の素晴らしい食文化、土地に根ざして暮らす農家を大地の守り手に位置付けるべきなど、多くの示唆に富む分析や主張も含まれています。
現在、私たちは分かれ道に立っているとのこと。自らの体と地球を健全なものへと変えていくためには、市場における利益の追求と、政府の介入(加工食品の砂糖・食塩に対する課税、子ども向け広告の規制等)の両方が必要としています。
巻末に収録された「国家食料戦略」の概要は、具体策を検討していく上での多くのヒントに満ちています。また、ジャーナリスト・井出留美さんの日本語版序文も、ボリュームのある本書を読む際の分かりやすい手引きとなっています。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.327、2025年10月21日(火)[和暦 長月朔日]
https://food-mileage.jp/2025/09/17/letter-324/
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