◇フード・マイレージ資料室 通信 No.327◇
2025年10月21日(火)[和暦 長月朔日]
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◆ F.M.豆知識 増加する「超加工食品」
◆ O.カレント Cha cotton(ちゃ こっとん、埼玉・川越市)
◆ ほんのさわり ディンプルビー、ルイス『食べすぎる世界』
◆ 情報ひろば 第5回「食と農の未来フォーラム」の開催について
(10/27、無料)
ブログ更新、イベント情報等
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空が澄み渡り月が冴え冴えと美しくなる長月に入りましたが、天候不順が続いています。レモン彗星は観察できるでしょうか。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-増加する「超加工食品」-
【ポイント】
いわゆる「超加工食品」の消費が、長期的に大きく増加しています。

「超加工食品」が注目されています。これは加工食品のなかでも特に工業的な製法で作られ、家庭では使わないような多くの糖質、脂肪、添加物が含まれているもので、安価でおいしいという利便性がある一方で、健康面で様々な悪影響があると指摘されています。
「超加工食品」の定義・範囲については定まったものはありませんが、リンク先のグラフは、家計調査から「超加工食品」と思われるもの(カップ・即席めん、魚肉練製品、加工肉、マーガリン、調味料、菓子類、調理食品、炭酸飲料)の消費額の長期的な推移をみたものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2025/10/327_chokako.pdf
これによると、1世帯当たり年間の食料全体の支出金額は1965年の232,305円から2024年の1,079,228円へと4.6倍に増加しているなか、「超加工食品」については同期間に47,852円から356,910円へと、7.5倍へと大きく増加しています。
先述したように「超加工食品」についての定まった定義・範囲はないものの、家計調査からも加工度の高い食品の消費が大きく増加していることが分かります。
特に2010年代に入ってからは増加ペースが上昇しており、所得が増加せず労働環境が厳しくなるなかで、より安価で手軽な加工食品を求める消費者の行動を反映しているものと思われます。
[データの出典]
総務省「家計調査」(長期時系列表等)から作成。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.html
◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-Cha cotton(ちゃ こっとん、埼玉・川越市)-
【ポイント】
「小江戸」と呼ばれる川越にあるCha cotton(ちゃ こっとん)は、築70年の古民家をリノベーションした小さな喫茶室です。

徒歩で東武東上線・JR埼京線「川越駅」から約13分、西武新宿線「本川越駅」から約8分ほど、賑やかな繁華街から少し外れた閑静な住宅地の路地沿いに、小さな喫茶室 Cha cotton(ちゃ こっとん)があります。
店主の大久保浩美さんは、ふくしまオーガニックコットン関係のボランティア活動等でご一緒させて頂いている方。築70年の実家をリノベーションして、2024年9月18日の大安・満月の日に「田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たような空間」をオープンされました。ところが暖簾をかけたとたんに雨が降り始め、雷雨の日のスタートになったそうです。
白い漆喰の壁に囲まれた7.5畳の空間には、4人掛けと2人掛けのテーブル。
テーブルはお母さまが使っていた裁ち台で、大工だったお母さまの兄が花嫁道具として作ってくれたものだそうです。表面にはヘラやルレットの跡がたくさん残っています。食器や座布団などにも店主の趣味が反映されており、ゆったりとくつろげる場になっています。
また、年間を通じてニットカフェ(編み物レッスン)やオーガニックコットンのストラップづくり等のワークショップも開催されています。
控えめな大久保さんは、「身体に優しいお飲み物を用意して、ひっそり、こっそり、ご来客をお待ちします」と語っておられます。ぜひ足を運んでみてください。
[参考]
FBページ「Cha cotton ちゃ こっとん」
https://www.facebook.com/profile.php?id=61564685867896
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-ヘンリー・ディンブルビー、ジェミマ・ルイス『食べすぎる世界-なぜ私たちは不健康と環境破壊のサイクルから抜け出せないのか』 (2025.10、英治出版)-
https://eijipress.co.jp/products/2343
【ポイント】
私たちは食料システムのなかで、「食べすぎる」ことによって自らの健康にも地球にも多くの負荷を与えていることを明らかにする一方、そこから脱却する方法について提示されています。

著者のディンプルビーはイギリスの健康志向レストランチェーンの共同創業者で、サステイナブル・レストラン協会の共同設立者。2020年にはイギリス政府の依頼を受けて「国家食料戦略」を発表しました。もう一人の著者・ルイスは「ザ・ウィーク」誌の元編集者。
食料システムとは「食料の生産から消費に至るまでの流れと、その相互依存的な関係」のことで、「地球上で最も革新的で破壊的なシステム」だそうです。私たちは知らないうちにこの強大なシステムの歯車となっており、タイトルにあるように「食べすぎる」ことによって、自らが不健康となると同時に、地球環境にも大きな負荷を与えていると分析しています。
「超加工」食品についても紹介されています。これらは大量の糖質や脂肪を含み、家庭の台所には馴染みのない添加物を使用することで、見栄えや味が良く、長期保存も可能となり、製造コストも低いとのこと。人々は安くて手軽で不健康な「ジャンクフード・サイクル」に囚われてしまっており(食べ物を選択できていない)、現在、イギリスでは総エネルギーの55%は超加工食品から摂取しているとのデータも紹介されています。
また、本書には、食料システムこそが生物多様性を含む環境破壊等の最大の原因であること、長寿を実現している日本の素晴らしい食文化、土地に根ざして暮らす農家を大地の守り手に位置付けるべきなど、多くの示唆に富む分析や主張も含まれています。
現在、私たちは分かれ道に立っているとのこと。自らの体と地球を健全なものへと変えていくためには、市場における利益の追求と、政府の介入(加工食品の砂糖・食塩に対する課税、子ども向け広告の規制等)の両方が必要としています。
巻末に収録された「国家食料戦略」の概要は、具体策を検討していく上での多くのヒントに満ちています。また、ジャーナリスト・井出留美さんの日本語版序文も、ボリュームのある本書を読む際の分かりやすい手引きとなっています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼第5回「食と農の未来フォーラム」の開催について
食と農を取り巻く深刻な問題の多くは「食と農の間の距離」が離れてしまっていることに起因しています。
都会の一般市民(消費者)の皆さんを主な対象として、食と農の現場の課題を身近に感じ、自主的な行動変容につなげて頂くことを期待して開催する本フォーラム、これまで大友 治さん(本木・早稲谷 堰と里山を守る会、福島・喜多方市山都)、鈴木純子さん(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト、いわき市)、榊田みどりさん(農業ジャーナリスト)をゲストにお迎えしてオンライン開催してきました。
(趣旨、これまでの開催概要等)
https://food-mileage.jp/2025/10/17/251009_forum/
食と農は「いのち」の源です。第5回は「いのち」そのものについて考える会として、以下により開催する予定です。
(1)日時 2025年10月27日(月)午後7時~9時
(2)開催方式 オンライン(zoomを利用、参加費1000円)
(3)テーマ
「ハンセン病問題を基礎から学び、紙芝居『わたしの命の物語』から生きやすい社会について考える」(仮題)
(4)参加費 無料
ゲストの方のご厚意、また、一人でも多くの方に視聴して頂きたいという思いから、無料イベントに変更しました。多くの方のご参加をお待ちしています。事前の申し込みは不要です。当日、以下からお入りください。
登録リンク(注:終了)
https://us06web.zoom.us/meeting/register/cS4fLuhJTPazjHD5H24DSg
ミーティング ID 880 8354 5108、パスコード019768
なお、予定していたアーカイブ配信は行わないことになりました。ご了承ください。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 家庭菜園から始める気候変動対策[10/8]
https://food-mileage.jp/2025/10/08/blog-604/
〇 ふくしまオーガニックコットンボランティアツアーに思うこと[10/9]
https://food-mileage.jp/2025/10/09/blog-605/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 荒川砂村ビオトープ環境保全観察・学習会
日時:10月23日(木)10:00~
場所:荒川砂町水辺公園等(東京・江東区東砂)
主催:(一社)アクティブサポーターズ
(詳細、問合せ等↓)
https://sites.google.com/view/acsp-rssc/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0#h.qiadimsmqgkl
〇 今夜はご機嫌@所沢で農業 10月
日時:10月30日(木)18:30~20:00
場所:図書喫茶(カフェ)カンタカ(東京・東村山市)
主催:今夜はご機嫌 銀座で農業
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/810099041611750
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「将来は、空を翔けるトンボのような政権になるんだろうか」
「今はヤゴ(野合)だけどね」
個人のフェイスブックで週3日お披露目中。「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.328は10月21日(火)[和暦 長月十五日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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