-平賀 緑『お金儲けしない経済学-食べものから考える<共(コモン)>の仕組み』(2026.4、岩波ジュニア新書)-
https://www.iwanami.co.jp/book/b10160906.html
【ポイント】
主流派経済学が無視してきた多種多様の非営利の活動に着目し、「身の回りから、小さく、分散して、自主的に動き始める」ことの重要さが強調されています。

著者は広島出身の京都橘大学准教授。著者による岩波ジュニア新書は、食の観点から資本主義経済の成り立ちやカラクリについて解説した『食べものから学ぶ世界史』『食べものから学ぶ現代社会』に続く3冊目で、本書では経済学そのものの限界と可能性について考察されています。
著者によると、経済は氷山に例えられるとのこと(ウェディングケーキモデルとも似た部分があります)。「主流派」経済学が対象としてきた商品市場や賃労働、営利企業等の領域は、実は海面上に浮かんでいるほんの一部分にすぎず、水面下には経済学が無視してきた多種多様な経済が「大きくどっしりと」存在していて、氷山全体を支えているというのです。多種多様な経済とは、例えば主に女性が担っている無償の家事労働、子育てや高齢者のケア、図書館、家庭菜園、協同組合等で、営利追及(お金儲け)を目的としないものです。
労働者協同組合や社会的連帯経済といった最近の新たな可能性についても解説されており、また、ポランニーから宇沢弘文まで関連する膨大な既存の文献についても分かりやすく紹介されています。
また、食べものは身近だからこそ様々な<共(コモン)>の仕組みを考えるきっかけになるとしており、「コモンズとしての食」と題する章もあります。
本書における結論も、前2著と同様、経済や食料システムという大きな問題の解決のためには「私たち小さな人たちが、身の回りから、小さく、分散して、自主的に動き始める」ことが原則であることは変わらなかったとのこと。
近代経済学を(少しでも批判的に)学んだことのある者にとっては、本書で紹介されている理論や考え方は必ずしも耳新しいものばかりではありません。
しかし、著者の国内外における市民活動等の体験と実践に裏付けられ、時には映画等も参照しながらの解説(「みどり節」)は分かりやすく、政治が「強い経済成長」を強引に推し進めようとしている現在こそ、多くの方に読んで頂きたい本です。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.340、2026年5月1日(金)[和暦 弥生十五日]
https://food-mileage.jp/2026/05/11/letter-340/
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