◇フード・マイレージ資料室 通信 No.341◇
2026年5月17日(日)[和暦 卯月朔日]
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◆ F.M.豆知識 なぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのか
(4)米価高騰?=これまで長期間、低迷していた
◆ O.カレント 米の民間在庫量と政府備蓄量
◆ ほんのさわり 佐藤洋一郎『米の日本史』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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東京地方も連日の夏日、時折り雷雨も。今年も猛暑となるのでしょうか。
本メルマガは時の流れを体感して頂くため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-なぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのか-
(4)米価高騰?=これまで長期間、低迷していた 等
【ポイント】
一昨年以来、米価格が高騰し「令和のコメ騒動」が発生しましたが、米の価格は長期間にわたって低迷が続いていました。

「令和の百姓一揆2026」に際して個人で作成したチラシ「なぜ農業問題は都市住民(消費者)の問題なのか」の内容を紹介する最終回です(全体は以下)。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/03/260329__ikki.pdf
日本の食料自給率が低下したのは私たち消費者の食の選択の結果であり、最初に飢えるのは都市住民とも言われているなか、食料生産を担っている肝心の基盤(担い手、農地)は急速に脆弱化しています。
そのようななか、一昨年の秋頃から米価格が高騰し、いわゆる「令和のコメ騒動」が発生しました。リンク先のグラフは、米の価格の長期的な推移等を示したものです。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/05/341_ikki4.pdf
これによると、25年平均(全国、1994年=100)の米類の価格指数は150.8と、総合指数(116.6)、食料品総合指数(143.3)を上回っています。2024年以降急カーブで上昇しており、これが「令和のコメ騒動」を引き起こしたことが分かります。
しかし、それ以前についてみると、米類の価格は1994年(いわゆる「平成の大不作」の翌年。グラフはこの年を100として作成)以降、約30年間にわたり、総合指数、食料品総合指数を下回って推移していたことが分かります。つまり、今般の「高騰」は、ようやく米の価格が全体の物価上昇のテンポに追いついたことを示しているのです。
米価格が長期にわたって低迷したことにより、米生産農家はコストを賄えない状況が継続し、その結果、後継者が確保できず、担い手は大きく減少すると同時に高齢化が進行しているのです(前号の記事参照)。
なお、最近の米類の価格指数を月別にみると、2025年11月の163.9をピークに26年3月には153.0へと低下傾向になっています。それでも「令和のコメ騒動」以前と比べると「高止まり」していますが、私たち消費者は、生産者が生産を持続できるか否かという観点を忘れてはならないと思います。
さらにチラシでは、「食と農の間の距離」が拡大していること、この結果膨大な食品ロスが生じていること、私たちにできることについても訴えています。
[データの出典]
総務省「消費者物価指数(時系列データ)」から、1994年を100とした数値に換算(単純計算)して作成。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html
◆ オーシャン・カレント
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-米の民間在庫量と政府備蓄量-
【ポイント】
現在、米の民間在庫量は適正水準を大きく上回っている一方で、政府備蓄量は逆に適正水準を大きく下回っています。

4月30日に農林水産省が公表した資料によると、3月末の米の民間在庫量は277万トン(玄米ベース)と前年同月に比べて97万トン(54%)増加しました。3月末としては11年ぶりの高水準であり、適正水準とされる200万トンを大幅に上回っています。在庫率(全体の需要量に対する在庫量の割合)も前年同月の25%(過去最も低い水準)から39~40%へと、過去最も高い水準へと上昇しています。
さらに、米取引業者は向こう3か月の主食用米の需給を「緩んでいる」と見通しているなど、米価格の「暴落」を懸念する声も出ています。
一方、政府の備蓄米は、「令和のコメ騒動」への対応のために約59万トンが放出された結果、2年ぶりに買い入れを始めているものの、現在の備蓄量は約32万トンと、適正水準とされる100万トンを大きく下回っています。
いずれにしても現在の米の需給については、過去になかったような状況にあります。さらに、中東情勢等による肥料価格の高騰、今年の夏の高温予想など、多くの不安定要因を抱えていることにも留意が必要です。
[参考]
農水省プレスリリース「令和8年3月の米穀流通の動向(集荷、販売、民間在庫)」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/kikaku/260430.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
◆ ほんのさわり
-佐藤洋一郎『米の日本史-稲作伝来、軍事物資から和食文化まで』(2020.2、中公新書)-
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2020/02/102579.html
【ポイント】
育種学者である著者による、米と稲作に対する畏敬と愛情に満ちた書です。将来に向けて、米と稲作が再評価される必要性が訴えられています。

1952年和歌山県生まれの農学者(専攻は育種学)である著者は、本書において、米の歴史を独自の時代区分に沿って記述しています。これによって時代をアクリル板のように重ねて重層的に眺め、米と稲作の文化が何であったかを鮮やかに描き出すことに成功しています。
その時代区分とは、例えば水田稲作と米食が渡来した「気配と情念の時代」(おおむね弥生時代前半まで)、水田が国家経営されるようになる「自然改造はじまりの時代」(古墳時代、飛鳥時代)、米が貨幣となる「米食文化開花の時代」(戦国時代~江戸時代)、米が軍事物資になる「富国強兵を支えた時代」(明治時代~第2次大戦)等で、いずれの時代においても、庶民の米を食べたいとの切なる願望は共通しており(「米食悲願民族」)、米と稲作は社会のなかで何らかの特別な役割を与えられていたとします。
そして戦後から現在までは、米が食糧(かて)から一つの食料になった時代とし、「米離れ」(消費量の減少)もあって、米と稲作は分断され、行き場を無くしている時代と分析しています。
その上で将来に向けては、食料安全保障、地球環境・エネルギー問題への対応、社会が縮小するなかでの持続可能性の観点から、再び米と稲作への回帰が必要であり、そのための食育の重要性を強調しているのです。
ところで本書は、育種学者である著者の、米と稲作に対する畏敬の念と愛情に満ちています。
各地の在来品種を収集していた1980年代、田の持ち主が見当たらなかった場合は切手を貼った返信用封筒を入れた手紙を竹の棒で田に刺しておいたところ、穂を送ってくれた農家が何軒もあったという感動的なエピソードも紹介されています。
しかしその上で、全体として、米と稲作を特別視し過ぎているという違和感はぬぐえませんでした。東北地方における強引な稲作社会化が飢饉を発生させた等の負の側面についても公平に記述されているものの、例えば江戸時代に盛んに行われた新田開発についても、武蔵野台地等で開発されたのは水田ではなく畑でした。
また、戦後、食管制度の下で実施された「米偏重」の政策が、需要の変化に対応した農業生産構造の実現を妨げ、結果として食料自給率の低下を招いたという歴史的事実もあります。
これらの状況も踏まえた上で、日本社会だけではなく、世界の食料と農業の将来に向けても、日本の米と稲作は再評価されるべきと強く感じました。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 奥多摩森林ウォーキングセラピー[5/3]
https://food-mileage.jp/2026/05/03/blog-638/
〇 第11回路地裏シネマ『ラディカル・ラブ』上映会及びトーク[5/5]
https://food-mileage.jp/2026/05/05/blog-639/
〇 環境もコミュニティも再生する「かすかべ農園」訪問記(埼玉・春日部市)[5/8]
https://food-mileage.jp/2026/05/08/blog-640/
〇 都市農業の新たな可能性(「農あるまちづくり講座」フォローアップ講座)[5/15]
https://food-mileage.jp/2026/05/15/blog-641/
▼ 第10回 食と農の未来フォーラムの開催について
以下の通り開催しますので、多くの方の参加申込みをお待ちしています。
日時等:2026年5月28日(木)19:00~21:00、オンライン
内 容:「全村避難から16年目の飯舘村~原発事故からの『復興』のリアル」(仮題)
ゲスト:行友 弥(ゆきとも・わたる)さん
(元毎日新聞社、農林中金総合研究所、飯舘村地域おこし協力隊員、農政ジャーナリストの会会長)
参加費:1000円(申し込んで下さった方にはアーカイブを配信予定)
以下からお申し込み下さい。なお、Peatixを使用されない方は、本メールへの返信等で連絡ください。
https://peatix.com/event/4994630/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 坂田昌子さん「ゆるゆるガイドウォーク@高尾」
日時:5月19日(火)9:30~12:30
場所:東京・八王子市裏高尾
主催:ひょうたん たけし さん
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/706073015178970/
〇 第97回 縮小社会研究会「お金儲けしない経済学~縮小社会と経済」
講師:平賀緑さん(京都橘大学経済学部准教授)」
日時:5月22日(金)19:00~20:30
場所:オンライン
主催:縮小社会研究会
(詳細、問合せ等↓)
http://shukusho.org/data/97hiraga.pdf
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
こんな畑、これまで見たこと無かったです。ある意味、カルチャーショックでした」
「正確には、アグリカルチャー・ショックですね」
かすかべ農園の「混生密生」農法は、極限まで多様性を追求する、自然環境や人間の再生に向けたリジェネラティブ農法です。
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.342は5月31日(日)[和暦 卯月十五日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めてまいりますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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