【ほんのさわり343】横山 勲『過疎ビジネス』

-横山 勲『過疎ビジネス』(2025.7、集英社新書)-
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1273-a/

【ポイント】
 小規模自治体を狙い公金を食いものにする「過疎ビジネス」と、機能不全に陥った「限界役場」の実態が生々しく描かれています。

「新聞労連ジャーナリズム大賞」を受賞するなど大きな話題となった本書ですが、ここで紹介することには躊躇がありました。というのは、本書で主に取り上げられているのは福島・国見町ですが、熱心に地域づくりに取り組んでいる方も存じ上げており、さらには町そのものに「風評被害」をもたらす恐れがあるのではないかとの懸念があったためです。
 しかし、今回の国勢調査でもさらなる「過疎化」の進行が明らかとなるなか、「地方創生」の暗部を描く本書の意義は大きいものがあると思い、取り上げました。

本書は、青森県出身、宮城・仙台に本拠を置く河北新報社の記者が、2022年から約2年間にわたって河北新報朝刊に掲載した調査報道の記事がベースとなっています。
 取材(メールや録音データのタレコミを含む)を通じて、企業版ふるさと納税(最大9割が税額控除)を財源に、コンサルを通じて関連会社が事業を受注するという「寄付金還流」「課税逃れ」の出来レースの全貌が、企業や個人の固有名詞とインタビュー内容等により生々しく明らかにされていく過程は、あたかもサスペンスドラマを見るかのようです。

国見町の事業を請け負ったのは、東日本大震災後に立ち上げられた宮城県の名の知れた防災ベンチャー企業。総務省の地域力創造アドバイザーにも登録されている新進気鋭の社長は「ほとんどの自治体はやる気がない」「俺らの方が勉強している」「地方議員は雑魚」等と放言します。
 一方で、民間に丸投げしておいて、問題が発覚すると責任逃れにひた走る(首長を含む)「限界役場」のガバナンスの欠如も厳しく糾弾しています。
 結局、この報道をきっかけにして社長は退任、町長は選挙に敗れます。

著者は、「過疎ビジネス」にはマスメディアの怠慢にも責任の一端があると認めつつ、「新聞記者は社会全体の奉仕者」「被災地ど真ん中にある河北新報の記者は、理屈抜きで被災した住民の見方であらねばならない」と決意を述べています。
 ちなみに「河北」(かほく)という社名には、明治維新後、東北が「白川以北一山百文」と蔑視されたことへの反骨が込められているそうです。

出典:
 F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
 No.343、2026年6月15日(月)[和暦 皐月朔日]
 https://food-mileage.jp/2026/06/21/letter-343/
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