【ブログ】被災地の現状と課題~ふるさとを想う歌人の視点

2026年6月17日(水)は東京・調布へ。
 同じ多摩地方ですが私が住んでいる市からは少しアクセスが不便で、道順を検索したところ、JR武蔵野線の府中本町駅から競艇場(ボートレース多摩川)行きの無料バスが出ていることを発見。
 これを利用しない手はないと、9時30分前に競艇場に到着。無料バスに乗せてもらった義理もあり3レースほど参加。競艇場は初めてでしたがなかなかの迫力です。スタンドも空いていて快適でした。

多摩川の堤防上にある「風の道」(遊歩道)を、徒歩で調布へ向かいます。川からの風は涼しいのですが、日陰の乏しい道を40分ほど。はあはあ。

住宅街に入り、「渡船場道」の石碑を過ぎて西部公民館に到着したのは13時50分頃(近くまで行って少し迷いました)。

ロビーでは「3.11から15年 キオク・つなぐ・未来」と題する展示が行われています。出展は東日本大震災・原子力災害伝承館(福島・双葉町)と、歌人の三原由起子さん(同・浪江町(なみえまち)出身)。

 14時からは、その三原さんの講演会「被災地の現状と課題~ふるさとを想う歌人の視点」が開催されました。
 個人的には三原さんのお話は、3.11のイベント(東京・高田馬場の歌声喫茶)、中野での『三角屋の交差点で』上映後のアフタートーク等で何度か伺っていましたが、改めてまとまったお話を聞きたいと思い、参加させて頂くこととしたのです。

講演会会場には30名ほどの参加者で満席。わざわざ横浜から来られた方もおられたようです。

定刻になり、主催者の方から、
 「記憶を伝えていくのも公民館の役割。東日本大震災から15年が経過して順調に復興が進んでいるかのようなイメージもあるが、今日は被災された方の生の声を聞いて頂くために企画した」等の開会挨拶。
 続いて三原由起子さんがマイクを取られ、「親戚になったような気持ちで聞いて頂きたい」と発言。今日もなかなかおしゃれな姿です(以下は中田の個人的な感想です。なお、文責は全て中田にあります)。

1979年、浪江町新町商店街の自転車屋兼おもちゃ屋さん(イメージとしてはドン・キホーテのようなお店だったそうです)に生まれた三原さん。地元の小中学校を経ていわき市の高校に進学、さらに東京の大学へ。
 短歌は高1の時から作り始め、県文学賞や全国コンクールで入賞した経験もあるとのこと。さらにNHKのど自慢で合格した経験もあるなど、なかなか活発な(目立つ)中高時代を送っておられたようです。
 その後、2004年に結婚された相手と2011年に詩歌文芸出版社(いりの舎)を立ち上げられ、現在に至っているとのこと。

この日は、代表作を記したレジュメを配って頂き、スライドも使って解説して下さいました。
 なお、これらの歌は歌集『ふるさとは赤』『土地に呼ばれる』(いずれも本阿弥書店)に所収されています。

「波のうねり車窓に顔寄せ眺めいる広く大きくなれそうな夏」
 16歳の時、故郷を離れていわき市の高校に電車(常磐線)通学していた時の希望に満ちた歌。恋愛をテーマにした歌もいくつか紹介して下さいました。

「ふるさとを凱旋するよう夕方の商店街を二人歩みぬ」
 結婚を決めた「彼氏」を実家に紹介するために帰京した時の、気恥ずかしくも誇らしい気持ち。

そして2011年3月11日。
 「iPad片手に震度を探る人の肩越しに見るふるさとは 赤」
 東京も激しい揺れに襲われたこの日、地震情報を調べる勤務先の同僚のiPadを覗くと、実家のある浪江町は震度6強を表す真っ赤に塗られていたことの衝撃。翌早朝には、原発事故により福島第一原発から10km圏内の浪江町にも避難指示が発出されたそうです。

原発作業員の同級生の母親は「うちの息子(放射能)浴び浴び(原発に)行ってるわ」。
 心配になって息子(同級生)にメールすると「『元気だよ、被曝してるけどね』って笑顔の絵文字の返信メール」があったとのこと。

「『仕方ない』という口癖が日常になり日常をなくしてしまった」。
 思考停止になってしまわないよう、当事者である自分たちが声を上げなければいけないと思っておられるそうです。

「仮設」や「中間」はその場しのぎの便利な言葉であり、再稼働のニュースが聞こえてくるたびに「心臓が脳が身体が地団駄を踏む」とも。

復興の名の下に実家があった商店街は更地にされ、一方で大規模な再開発が進められている。地元の住民説明会で「なみえまち」を「なみえちょう」と言い間違える人たちは、あまりに地元への意識も愛情も無さすぎるのではないか。

最後に三原さんは、
  「『復興と言われてしまえば本当の心を言葉にできない空気』がある。『仕方ない』という口癖が日常となると思考停止に陥ってしまう。当事者として声を上げることは自分との戦いでもあり、このような機会を頂いたことは有難い」と、感謝の言葉でまとめられました。

その後、参加者との間で意見交換。
 この日はドキュメンタリ映画『原発を止めた裁判長』等で知られる小原浩靖監督、飯舘村を舞台にした絵本を書かれている絵本作家の安藤みち子さんも参加されていました。
 三原さんの高校時代の同級生の男性(20数年ぶりでの再会だったそうです)等も。
 真剣に皆さんの発言を聞いておられた三原さん、「皆様と心を共有できたような気がする。このつながりを大切にしていきたい。参加者同士のネットワークも拡げていってもらいたい」と話されました。

小原監督の最新作『陽なたのファーマーズ』、飯舘村を舞台にした絵本『バチカンへの手紙』、三原さんが毎月講師を務めておられるサークル「短歌スケッチ」の紹介もありました。
 『陽なたのファーマーズ』は7月4日(土)の八王子での上映会に参加予定、『バチカンへの手紙』はKindle判を求めさせて頂きました。

三原由起子さんのお話は、一人でも多くの方に聞いて頂きたい内容です。
 微力ながら、私個人も、三原さんのお話を伺うとともに、立場・考えの違う方も含めた意見交換の場を持てればと考えています。

(ご感想、ご意見などお寄せ頂ければ幸いです。)
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(追記)
 第11回 食と農の未来フォーラムの開催について
 テーマ:「私たちの『食』の現在地~食の簡便化、フードテック、食料安全保障~」
 ゲスト:大村美香さん(朝日新聞記者)
 日時等:2026年6月30日(火)19時~21時
     オンライン(zoomを利用)、参加費1000円
 申込み先:https://peatix.com/event/5045303

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(参考)
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