【ブログ】「賢い縮小」(スマート・シュリンキング)について(中山間地域フォーラム20周年記念シンポ)

自宅近くの市民農園/体験農園。
 モンシロチョウやヤマトシジミ。体験農園では普通に農薬も使用しているのですが、カメムシの姿が見られるようになってきました。

2026年6月27日(土)は、東京・永田町ヘ。
 前日には青森で震度6強、山梨で震度6弱と地震が相次ぎ、さらにW台風(6、7号)が接近中。午前中に予定していた別の講演会は早々に延期が決定したのですが、午後からの中山間地域フォーラムのシンポジウム(全国町村会と共催)については連絡はなし。予定通り開催するようです。ちなみに今年から運営委員を仰せつかっています。

 幸い、雨風はそれほど強くありません。
 とはいえ足元の悪いなか、100名近くの方が会場の町村会館に足を運んでくださいました。
今回は初めての試みとしてオンライン配信もするそうです。

シンポジウムの全体テーマは「中山間地域のこれまで・これから」。
 司会はアナウンサーの田添菜穂子さん。担当されているNHK FM「クラシックの庭」は私もファンで、名刺交換させて頂き感激しました。

13時に開会。
 冒頭、生源寺眞一会長から「改めてスコットランドやEUの直接支払の歴史や意義を学び直す必要がある」等の挨拶がありました。
 鳥取大学の筒井一伸先生からは、日本全体が条件不利地になりつつある等の大きな「見取り図」の説明も。

第1部は「つながる中山間地域」をテーマに、まず、特別顧問の野中和雄氏から中山間地域フォーラムのこれまでの20年間の歩みについて説明。なお、「設立20年間の軌跡」と題する冊子も配られています。
 食料・農業・農村基本法制定の翌年、2000年に「中山間地域に熱い思いを抱く人々のネットワーク」として中間地域フォーラムが設立され、その後、節目節目に提言や声明を出してきたことについて説明があり、さらに現在、農村政策に対する地方自治体や国民の意識・関心が低下していることに警鐘を鳴らされました。

トークセッションの最初は泉川道浩さん(西和賀町役場)による「岩手県西和賀町における中山間地域対策」について。
 推計を超える人口減少が続く中、(一社)大野もっこりの里を立ち上げて「地域まるっと」農地集積を進めているユニークな取組み等について説明がありました。

続いて高橋 秀さん(やまに農産(株))からは、農業を通じて自己実現するためにUターンして農業を継いだこと、同級生等も多く集落内の人間関係は比較的スムーズに築けたこと、新規作物(パドロン等)の導入や加工に取り組んでいること等について説明がありました。

山崎笙吾氏(長野・泰阜村役場)からは村における移住政策の現状等についての報告。1世帯当たりの子ども数は東京よりずっと多いとも。山崎さんご自身も移住者だそうです。

図司直也先生(法政大学、中山間地域フォーラム理事)からは、移住者を含めて「顔の見える関係」を取り戻しつつあるのではないか等のコメントがありました。

休憩を挟んでの第2部のテーマは「中山間地域から『賢く縮む』を考える~岡山からの問題提起~」。
 最初にこのテーマを見た時は、正直、ぎょっとしました。能登の復興等の文脈で「撤退論」が声高に叫ばれていることには、かねて個人的に苦々しく思っていたからです。ついに中山間地域フォーラムも「流行り」に乗ってしまったのか、と。

まず、「人口減少時代の自治体運営」と題して、九州大学大学院法学研究院の嶋田暁文先生からの報告。
 職員数が限られ財政も厳しくなるなか、行政需要の抑制のための方策としての予防、矛先変更、自治体間の連携、民間力の活用等について、全国各地の具体的な事例を含めて紹介して下さいました。「あきらめに向かう」のでも「夢物語に逃げる」のでもなく、地域の魅力を再認識し、既に持っているもの(人情、絆等)を重視することの必要性等を訴えられました。

続いて全国町村会が作成した『岡山県美咲町の挑戦』と題する映像の上映。
 人口減少が続く中で公共施設機能を縮小・集約しつつ、住民主体の地域づくり(小規模多機能自治)に取り組んでいる様子が描かれます。

続いて、映像にも登場した青野高陽 町長が登壇され、「賢く収縮するまちから賢く挑戦するまち」と題すして講演されました。
 2018年に就任されて以来、住民主体の地域づくり(住民の意識改革)を推進してこられた経緯について、苦労話も交えてお話して下さいました。さらに、これからは賢く挑戦するまちづくり(挑戦が循環してみんながワクワクするまちづくり)を進めていきたいとの決意を述べられました。

続いて阿部典子氏(特定非営利活動法人 みんなの集落研究所)からのコメント。
 みんなの集落研究所は、2013年に設立された集落支援に特化した民間のシンクタンクで、岡山県内を中心に活動されているそうです。

プログラムの最後は、小田切徳美先生(明治大学、中山間地域フォーラム副会長)を座長に「『賢く縮む』を考える」と題するパネルディスカッションです。

嶋田先生からは、「賢く縮む」(スマート・シュリンキング)という言葉が、安易な撤退や切り捨て等の乱暴な議論に引用され、地域の尊厳の空洞化に繋がることは問題であるとし、あくまで「縮小」は未来を選び直すための手段と捉えるべき等と強調されました。

青野町長からは、人口や経済は縮小していくという現実を前に、全体最適のためにどうすればいいかを住民とともに真剣に考えてきたことを説明。地域ごとに特色があるとも。また、映像の中の住民たちの生き生きとした姿を見て、本当にうれしかったとも話されました。

阿部さんからは、美咲町では、みんなの集落研究所が入る前から社会福祉協議会等による地域づくりの取組みが土壌としてあったことについても紹介がありました。 

最後に小田切座長からは、「賢い縮小」をめぐる多くの報道の一面性を批判しつつ、美咲町の事例を踏まえて以下のようにコメントされました。
 美咲町ではあくまで住民自治を基本として充実志向型で取り組まれている。重層的で見えない自治の仕組みがあり、中間支援組織も重要。試行錯誤が続けられてきた結果でありまだ完成形でもなく、今後に期待したい等と話されました。
 また、美咲町の事例の表面的な横展開(真似)は避けられるべき、と警鐘を発せられました。

終了後はホール隣の会場で懇親会。
 榊田みどりさん(中山間地域フォーラム副会長)による乾杯の挨拶。やまに農産(株)の高橋さんが提供して下さった蕨も。
 登壇者を含む多くの方と名刺交換、歓談させて頂きました。この日はオンライン参加された方も多数おられましたが、直接、顔を合わせてお話しできるのがリアル参加の醍醐味です。

いつか台風も過ぎたようで、帰りは雨も風も止んでいました。

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