-斎藤幸平『人新世の「黙示録」』(2026.4、集英社)-
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-737010-2
【ポイント】
著者は国家による計画経済化が必要で、「下からの自治の力」を育てることが重要と主張していますが、果たして現在日本にその土壌があるかどうかは懐疑的です。

2020年に出版され大きな反響を呼んだ前著『人新世の「資本論」』については、当時のメルマガ(No.207)の本欄で、気候危機が深刻化するなかでのマルクス理論を踏まえた鋭利な現状(資本主義)批判に比べて、将来に向けての具体的処方箋(<コモン>を重視する「脱成長コミュニズム」)については物足りないと、率直に書かせて頂きました。
それから6年後の新著では、さらに悲観的・絶望的な未来が予言されています。気候崩壊による恒久欠乏経済のなかで少数のテック超富裕層による「終末ファシズム」が台頭し、尊重されるべき民主主義・人権・平等といった近代の根本的価値観は否定され(再野蛮化)、世界は破局に向かうというのです。
ちなみに「脱成長コミュニズム」については、「大衆の支持を欠き」「多くがローカルな実践に留まって」いることから、もはやこれでは対応できない時代に突入していると総括しています。
それに代わって著者が主張する対応策とは、以下のようなものです。
環境・社会の崩壊(著者は「戦時下」と称します)はもはや止めらないとしつつ、被害を最小限にして人類が生存し続けるためには、国家による、より大規模な経済の「社会化」「計画化」が必要としているのです。
その具体的な内容は、迅速な脱炭素化、エッセンシャルワークの確保、配給制度の導入、富裕層への増税等で、前著に比べてその主張はより具体的で、ラディカルなものとなっています。AIは国家が管理する「公共財」にすべきともあります。
しかし現在、国家の多くでは反動化・強権化が進み、多くの戦争を引き起こしています。そのような国家に果たして期待できるでしょうか。だからこそ著者は19世紀のパリ・コンミューンから現在のニューヨーク市など豊富な事例を紹介しつつ、「下からの自治の力」をしっかりと育てるためのボトムアップ型の市民運動(下からのコミュニズム)の重要性を強調しているのですが、これまた、現在の日本にその土壌があるかどうかを思うと、正直、懐疑的にならざるを得ません。
とはいえ、著者が言うとおり「何もせずにたたずんでいる余裕などどこにもない」のであるとすれば、「私たちもすぐに動き始め」る必要があることは間違いないのかも知れません。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.344、2026年6月29日(月)[和暦 皐月十五日]
https://food-mileage.jp/2026/07/11/letter-344/
(配信登録(無料)はこちらから)
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
(「ほんのさわり」のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/br/
(メルマガ全体のバックナンバーはこちら)
https://food-mileage.jp/category/mm/
