◇フード・マイレージ資料室 通信 No.344◇
2026年6月29日(月)[和暦 皐月十五日]
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◆ F.M.豆知識 世界の経済成長と温暖化
◆ O.カレント 世界の飢餓の現状と構造的要因
◆ ほんのさわり 斎藤幸平『人新世の「黙示録」』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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梅雨前線が居座るなか、W台風が日本列島を縦断するという前代未聞の事態。いよいよ気候の振る舞いは、私たちの予測や常識を超えつつあるようです。今回は資本主義を考えます。
本メルマガは時の流れを体感して頂くため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)にコツコツと配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータ等をコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
-世界の経済成長と温暖化-
【ポイント】
これまで世界の経済成長とともに平均気温は上昇を続けており、両者の間の因果関係は「疑う余地がない」とされています。

18世紀半ばに始まった産業革命以降、資本主義は世界の繁栄を支えてきました。自由な市場経済の下で経済は成長し、格差拡大や公害等の問題をはらみつつも、人々の生活は総じて豊かになってきたと言えます。
リンク先の棒グラフは、1960年以降の世界のGDP(国内総生産)及び貿易額の推移を示しています(いずれもUSドル・名目値)。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/06/344_seicho.pdf
1960年には1.37兆USドルであった世界のGDPは、2024年には111兆円と実に81倍へと大きく増加しています。すさまじい経済成長であり、特に2020年以降はそのペースが高まっているように見えます。
また、市場経済の象徴ともいえる世界の貿易額は、同期間に0.1兆円から25兆円へと200倍近くに拡大しています。例えば日本の食料についても、生産コストが(物的・絶対的なコストではなく、あくまで為替レートが介在する貨幣的コスト)が比較的に低い海外からの輸入が急増した結果、自給率は大きく低下する一方、消費者は安い食料価格という恩恵を享受してきたのです。
ところが、これまでの資本主義の下での右肩上がりの経済成長は、現在、様々な限界に直面しているとされており、その代表の一つが温暖化(気候危機)です。
リンク先の折れ線グラフは、世界の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差を示しています。一見して、GDP等が増加するのに伴って平均気温が上昇していることが明らかです。
世界の科学者によって構成される国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評価報告書(2023年3月)は、「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない」と断じています。
このように地球温暖化問題だけを見ても、これまでの世界の経済成長(繁栄)を支えてきた右肩上がりの資本主義は限界に直面していることは明らかと言えます。
[データの出典]
World Bank(世界銀行)Open Data、WTO(世界貿易機関)STATS、気象庁「世界の年平均気温偏差」から作成
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD
https://stats.wto.org/
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/list/an_wld.html
◆ オーシャン・カレント
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
-世界の飢餓の現状と構造的要因-
【ポイント】
世界の飢餓は依然として深刻ですが、その構造的・歴史的要因に資本主義(帝国主義による植民地支配)があります。

本年4月26日、国連は「食料危機に関するグローバル報告書(the Global Report on Food Crises、GRFC)」の2026年版を公表しました。これは国連食糧農業機関(FAO)、国連世界食糧計画(WFP)等が2017年以降作成しているもので、今回で10回目となります。
今回の報告書では、アフリカやアジアを中心に食料不安・栄養不良は依然として深刻であり、高い水準の急性食料不安(high levels of acute food insecurity)」に直面している人々は計2億6,600万人と、過去10年で倍増していることが明らかとなりました。
報告書には、飢餓が深刻化している背景として、近年の紛争拡大に加えて、人道支援と開発援助資金の急激な減少があげられています。しかし現在、飢餓にさいなまれている国・地域の多くは、かつては旧植民地として、自分たちの食料生産よりも宗主国向けの商品生産が重視(強制)されたという構造的・歴史的な事実があります。
その意味で飢餓問題は、これまでの資本主義が招いた最も深刻なものの一つかも知れません。
(参考)食料危機に関する2026年版最新報告書(Unicefプレスリリース)
https://www.unicef.or.jp/news/2026/0056.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
-斎藤幸平『人新世の「黙示録」』(2026.4、集英社)-
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-737010-2
【ポイント】
著者は国家による計画経済化が必要で、「下からの自治の力」を育てることが重要と主張していますが、果たして現在日本にその土壌があるかどうかは懐疑的です。

2020年に出版され大きな反響を呼んだ前著『人新世の「資本論」』については、当時のメルマガ(No.207)の本欄で、気候危機が深刻化するなかでのマルクス理論を踏まえた鋭利な現状(資本主義)批判に比べて、将来に向けての具体的処方箋(<コモン>を重視する「脱成長コミュニズム」)については物足りないと、率直に書かせて頂きました。
それから6年後の新著では、さらに悲観的・絶望的な未来が予言されています。気候崩壊による恒久欠乏経済のなかで少数のテック超富裕層による「終末ファシズム」が台頭し、尊重されるべき民主主義・人権・平等といった近代の根本的価値観は否定され(再野蛮化)、世界は破局に向かうというのです。
ちなみに「脱成長コミュニズム」については、「大衆の支持を欠き」「多くがローカルな実践に留まって」いることから、もはやこれでは対応できない時代に突入していると総括しています。
それに代わって著者が主張する対応策とは、以下のようなものです。
環境・社会の崩壊(著者は「戦時下」と称します)はもはや止めらないとしつつ、被害を最小限にして人類が生存し続けるためには、国家による、より大規模な経済の「社会化」「計画化」が必要としているのです。
その具体的な内容は、迅速な脱炭素化、エッセンシャルワークの確保、配給制度の導入、富裕層への増税等で、前著に比べてその主張はより具体的で、ラディカルなものとなっています。AIは国家が管理する「公共財」にすべきともあります。
しかし現在、国家の多くでは反動化・強権化が進み、多くの戦争を引き起こしています。そのような国家に果たして期待できるでしょうか。だからこそ著者は19世紀のパリ・コンミューンから現在のニューヨーク市など豊富な事例を紹介しつつ、「下からの自治の力」をしっかりと育てるためのボトムアップ型の市民運動(下からのコミュニズム)の重要性を強調しているのですが、これまた、現在の日本にその土壌があるかどうかを思うと、正直、懐疑的にならざるを得ません。
とはいえ、著者が言うとおり「何もせずにたたずんでいる余裕などどこにもない」のであるとすれば、「私たちもすぐに動き始め」る必要があることは間違いないのかも知れません。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届けします。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 ドキュメンタリ『プラスチックの海』(第12回 路地裏シネマ)[6/16]
https://food-mileage.jp/2026/06/16/blog-650/
〇 パレスチナを忘れない[6/17]
https://food-mileage.jp/2026/06/17/blog-651/
〇 被災地の現状と課題~ふるさとを想う歌人の視点[6/22]
https://food-mileage.jp/2026/06/22/blog-653/
▼ 第11回 食と農の未来フォーラム【明日の開催です】
「私たちの『食』の現在地~食の簡便化、フードテック、食料安全保障~」の開催について
日本の食と、その背景にある農について取材を続けている朝日新聞記者の大村美香さんをゲストにお迎えし、私たちの食の現在地について話題提供を頂き、意見交換したいと思います。多くの方の申し込みをお待ちしています。
(1)日時 :2026年6月30日(火)19時~21時
(2)開催方法等:オンライン(zoomを利用)、参加費1000円
以下からお申込み下さい(Peatixを利用されない方は連絡下さい)
https://peatix.com/event/5045303
(詳細はこちら)
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2026/06/260630_flyer.pdf
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加等を希望される際には、事前に主催者にお問い合せ下さい。
〇 『陽なたのファーマーズ フクシマと希望』上映とアフタートーク
日時:7月4日(水)13:30~16:00
ゲスト:小原浩靖監督、近藤恵さん(福島・二本松市)
場所:長光山本立寺(東京・八王子市上野町11)
主催:ロータスシネマ
(詳細、問合せ等↓)
https://lc91.peatix.com/
〇 『食と農』で社会とつながる。~仕事を超えた出会いの場、霞ヶ関ばたけとは~
日時:7月20日(月・祝)14:45~16:15
場所:慶應義塾大学 三田キャンパス(東京・港区三田2)
主催:霞ヶ関ばたけ
(詳細、問合せ等↓)
https://kasumigasekibatake-226.peatix.com/
〇 小農学会 市民公開講座(令和の百姓一揆連動企画)
日時:7月26日(土)13:00~17:00
場所:中村学園大学(福岡市城南区別府5)
主催:小農学会
(詳細、問合せ等↓)
https://forms.gle/oRKHhCbfiCyiAm5s9
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* 米令寺忽々のコツコツ小咄
「今年のG7の開催地、ベルサイユかと思ったわ」
「えっ、どうして?」
「バラバラだもの」.
コツコツ小咄は個人のフェイスブックで週3日お披露目中。月ごとの「まとめ」は以下に掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.345は7月14日(火)[和暦 水無月朔日]に配信予定です。
正確でより役に立つ情報発信に努めてまいりますので、読者の皆さまのご意見・ご批判、ご要望等をお聞かせ頂ければ幸いです(このメールに返信頂ければ筆者に届きます)。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつも有難うございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F.M.Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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