【寄稿と詳細なデータ】日本の「食と農」を考えてみよう(『みんなの恩多町』連載中)

私が住んでいる東京・東村山市恩多町(おんたちょう)のミニコミ紙『みんなの恩多町』に、「日本の『食と農』を考えてみよう」をシリーズで寄稿させて頂いています。
 本稿では、その詳細なバックデータ等を掲載していきます。

シリーズ1 2026年4月発行、第53号
【本文】
 「食」を支える日本の「農」はいま・・・
 現在、私たちの食と、食を支える日本の農業・農村は様々な深刻な問題に直面しています。

例えば、日本の食料自給率は諸外国に比べて非常に低い(カロリーベースで38%)【*1、*1-1、*1-2】なか、私たちの食料を生産する基盤である農業の担い手や農地は大きく減少しています【*2】。
 農村地域は過疎化・高齢化が進行し、いわゆる「限界集落」も増えています【*3】。
 一方で、私たちの食生活は乱れ、栄養バランスが崩れて肥満等が増加するとともに【*1-3】、年間500万トン近い食品ロスが発生しています【*4】。

「食」と「農」の距離が離れている
 これらの問題の多くは、「食(食卓、消費者、都市)と農(産地、生産者、農村)の間の距離」が離れてしまっていることから起こっています。都会の消費者にとって、食べものはお金さえ出せばいつでもいくらでも買える単なる「商品」に過ぎなくなっており、それがどこで、どんな人によって、どのように生産され、食卓まで運ばれてきているかが想像できなくなっているのです。そのため、食べものの大切さや、食料を生産してくれている人への敬意、自然への畏怖を忘れてしまっているのです。私たちは、まず、これらの状況を理解することが必要です。

最初に飢えるのは東京都民?
 特に東京都の食料自給率は0%【*5】で、気候危機や紛争により世界的な食料危機が起こった時に最初に飢えるのは東京都民とも言われています。
 それでは、東村山市恩多町に住む私たちにできることはあるのでしょうか。次回は東村山市の農業や直売所の状況、地元でとれた農産物を消費する地産地消の大切さについて紹介する予定です。

【解説*1】食料自給率について
 食料自給率とは、国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標で、次のような種類があります。
1 品目別自給率:重量で計算(米など穀物の自給率もまとめて重量で計算)
2 総合食料自給率:食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算
(1)カロリーベース【2025年度 37%】
  :熱量で換算(食料安全保障、生命・健康の維持の観点から重要)
(2)生産額ベース【同 66%】
  :金額で換算(カロリーの少ない野菜や果樹の国内生産に着目)
(3)摂取熱量ベース(2025年新設)【同 45%】
  :国民の日常生活に必要な摂取熱量のどの程度が国産で賄われているかを示す。

【解説 *1-1】諸外国に比べて非常に低い日本の食料自給率
 日本の食料自給率は長期的に低下傾向で推移しており、諸外国の中でも低い水準となっています。なお、最新値の2025年(概算値)では37%となっています。

【解説 *1-2】日本の食料自給率低下の要因
 日本の食料自給率が長期的に低下している原因は、基本的には食料消費(私たち自身の食の選択)の激変によるものです。
 国内で自給できる米の消費量が半減する一方、飼料(とうもろこし等)を輸入に依存している畜産物は4倍以上、原材料(大豆、菜種等)を輸入に依存している油脂は約3倍に増加しています。

【解説 *1-3】栄養バランスの崩れ
 このような食生活の激変は、私たち自身の健康にも悪影響を及ぼしています。
 脂質の摂取割合は適正水準を2割以上上回っており、メタボリックシンドロームの原因となっています。

【解説 *2】農業の担い手や農地の減少
 私たちの食料生産を支える基盤(担い手、農地)は、急速に脆弱化しているのです。
 担い手(基幹的農業従事者)の数は、1960年の1,175万人から2025年には102万人へと、実に9割以上減少しています。また、高齢化も急速に進んでいます。
 見方を変えると、1人の農業者が支えている消費者の数は、1960年には約8人であったのが2025年には約121人と、約15倍に増加しているのです。

 一方、同様に農業生産に不可欠な農地面積の推移をみると、1960年には607haだったのが2025年には424haと、約30%減少しています。担い手の減少により、作付けされない農地や耕作を放棄した農地が増加しています。

【解説 *3】農村地域の過疎化・高齢化、いわゆる「限界集落」の増加
 東京都など大都市圏への過度の人口・経済の一極集中が進む中で、中山間地域等においては人口・世帯数が減少するとともに、高齢化が進行しています。
 なお、限界集落とは、65歳以上の高齢者が人口の50%を超え、集落における共同活動の機能が低下し、共同生活の維持が困難な状態にあるとされる集落のことです。

【解説 *4】膨大な食品ロスの発生
 日本の食品ロス量(本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品の量)は、2024年度で461万トン。これは国連世界食糧計画(WFP)による世界の食料支援量に相当します。
 また、食品ロスのうち家庭系(食べ残し等)が約半分を占めており、2015年からの削減率は事業系より少なくなっています。

【解説 *5】東京都の食料自給率
 先ほど述べた通り日本全体の総合食料自給率(2023年度)は、カロリーベースで38%、生産額ベースで61%となっていますが、大都市部は極めて低くなっており、特に東京都の食料自給率はカロリーベースで0%、生産額ベースでも2%に過ぎません。
 世界的な気候危機、国際紛争など万が一の事態が生じて食料輸入が困難になった時には、最初に飢えるのは大都会の住民とも言われています。

シリーズ2 2026年9月発行、第54号
【本文】
 東村山市の農業、頑張っています
 前回は、私たちの「食と農」は様々な深刻な課題を抱えており、特に東京都のカロリーベース食料自給率は0%であることも紹介しました。
 しかし東村山市の農業は、実は意外と頑張っています。比較的若い担い手が多く、後継者も確保されています。また、面積当たりの直売所の数が非常に多いのも特徴です(全国平均の約30倍)【*6】。
 農業・農村をめぐる様々な深刻な問題の原因は「食」(食卓、消費者、都市)と「農」(産地、生産者、農村)の間の距離の拡大にあると指摘しましたが、東村山市の農業は、近隣に多数の消費者がいることが大きなメリットとなっているのです。

防災面を含む農地の多面的役割
 それでも東村山市の農地面積は10年前に比べて約3割減少しています。
 都市農地には、農業生産だけではない多くの重要な役割があります。災害時には、いっとき集合場所になる防災協力農地等の整備も進められています。心やすらぐ緑の空間、農業体験や交流の場としての役割もあります【*7】。

残されている農地を大切にしよう
 ところが、その農地について個人的に腹立たしく思っていることがあります。ポイ捨てゴミが多いことです。皆さん、自分の庭にゴミをポイ捨てされたらどのように感じるでしようか。
 私たちは、身近にあって大切な役割を果たしている農地と農業を、大切にしていかなければならない私は考えます。(次回に続く)

【解説 *6】意外と頑張っている東京都、東村山市の農業
 世帯数に占める農家の割合は3.1%と、もはや全国でも農家は少数派ですが、特に都市化が進んでいる東京都では0.1%、比較的農地が残されている東村山市でも0.4%に過ぎません。一方、野菜作の割合(全国平均26%)は東京都で64%、70%と高く、後継ぎが確保されている農家の割合(全国平均24%)に対して東京都35%、東村山市48%と高くなっています。
 特に面積当たりの直売所数は全国平均が1ha当たり0.04箇所であるのに対して、東京都は6.1箇所、東村山市は26.2箇所もあり、東村山市の数値は全国平均の26倍となっているのです。


【解説 *7】都市農地(農業)の多面的な役割
 都市農地(農業)には、新鮮な農産物の供給(地産地消機能)、身近な農業体験・交流の場の提供(交流創出機能)、災害時の防災空間の確保(防災機能)、やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供(景観創出機能)、国土・環境の保全(環境保全機能)、都市住民の農業への理解の醸成(食育・教育機能)といった多面的な役割があります。

出典:農林水産省HPより