秋晴れの週末

土日、秋晴れが続きました。3月まで住んでいた金沢の秋から冬にかけての気候とは大違いです。

猫の額ほどの市民農園、大幅に遅れていた秋の作業をしました。まず、最後までたくさんの実をつけてくれた茄子とピーマン、ししとうを処分。跡地を耕して肥料と石灰を施し、茎ブロッコリ、九条ねぎ、たまねぎ、にんにくの苗を植え付け。大根とほうれん草を播種。これらは時期が遅れているため、果たして発芽してくれるかどうか。
黒マルチを敷いてネットをかけました。いつもながら、あたかも不揃いな王蟲の行進。

蕎麦については、完全に実が十分に褐色になってから収穫という専門家からのアドバイスを受け、もうしばらく置いておくことにしました。でも、あまり実は入っていないようです。
蕎麦の隣では菊が満開、モンシロチョウやミツバチが集まっています。 … 続きを読む

文化の日に「あたり前の農業」について考えました。

 11月3日の文化の日、東京は秋晴れの一日でした。
 午前中、東京都下H市の自宅近くで借りているささやかな市民農園の片隅は、菊の花が満開になりました。

 茄子は実が小さくなり、そろそろ終わりです。週末には片づける予定です。夏から秋にかけ、たくさんの恵みを頂きました。
蕎麦はあまり実がついていません。
 今日は参加できませんでしたが、山梨県上野原市でのECOM「しごと塾」蕎麦収穫イベントはどうだったでしょうか。
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「日本が農業大国」なんて、とんでもない

最近、日本の食料や農業について様々な指摘がなされています。例えば「日本は世界第5位の農業大国」、「食料自給率は大嘘だらけで日本は最大の農産物輸入国ではない」、等々。多様な視点からの議論は重要ですが、これらをそのまま鵜呑みにすると誤解が生じることになります。

まず、単純に農林水産業生産額を比較すれば、日本は中国、インド、米国、ブラジルに次いで世界第5位になります。しかし、そもそもGDPでみて日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国です(中国に抜かれますが)。先進国の場合、GDPに占める農林水産業のシェアはおおむね1%前後ということからみても、5位というだけで農業大国というのは誤りです。ちなみに日本の農業生産額の30%強は畜産ですが、飼料の75%は輸入に依存しています。

別の見方をすれば、アメリカではGDPに占める農林漁業のシェアは0.9%ですが、それでも農業大国であることは間違いありません。多面的機能論を持ち出すまでもなく、表面的なGDPの大きさだけで、その産業の重要性を計ることの非合理性は、このことからも明らかです。

農産物輸入額については、日本は米国、ドイツ、英国、中国等よりも少ないのは事実です。しかし、他の国は輸入をしながら輸出もしている(例えば米国は747億ドルの農産物を輸入し927億ドルを輸出)のに対し、日本はほとんど輸出していません(輸入460億ドルに対し輸出23億ドル)。したがって、輸入額から輸出額を差し引いた純輸入額でみると、日本は断トツの一位となります。日本の農産物の貿易構造は、世界の中でも極めて特異な姿です。

その結果、食料自給率も低くなっています。日本の総合食料自給率はカロリーベースで40%、生産額ベースで70%でありも、農水省も両指標を併用しているのですが、低い方の数値だけが一人歩きしていると問題視する論調があります。生産額ベースについては、カロリーが少ない野菜等の生産を的確に把握できるというメリットがある一方、国民に対して安定的に食料(栄養)を供給するという安全保障の観点からは、輸入飼料等を勘案したカロリーベース自給率という指標も重要です。ちなみに国際的に一般に用いられている穀物自給率でみると、日本は28%とカロリーベースよりも小さくなります。これは飼料穀物を含んでいるためですが、主食用穀物に限っても61%と、世界の人口1億人以上の国(途上国を含む。)のほとんどが80%以上を確保していることと比べても低いと言わざるを得ません。 … 続きを読む

熊本での実践講座第3期がスタート

熊本市の熊本県立大学の教室を会場にお借りして、フード・マイレージ実践講座がスタートしました。熊本での開催は、これで3期目(3年目)です。かつて九州農政局に勤務していた際のご縁で、2年前、熊本市の一般消費者(主婦)の皆様の自主的な取組として、フード・マイレージをヒントに自分たちの食と農業、環境の問題を考えていこうという講座が初めて発足しました。その後、東京でも2年続けて開催しましたが、3年続けての開催は熊本が最初で、熊本の皆さんの環境問題への取組の熱心さがうかがえます。

今回の講座の参加者は、大学の先生、小学校の教員の方、保育園の栄養士・保育士の3名の皆さん、生協関係の主婦の方、そして若い野菜農家の方(唯一の男性)の7名です。2回にわたる講座の一日目は、フード・マイレージが必要とされる背景(食生活の変化、世界の食料事情と日本の食料自給率、食生活と地球環境との関わり等)、フード・マイレージの概念と計算方法等について説明し、意見交換しました。プロの教員でも研究者でもない私の4時間弱の拙い話に、熱心に耳を傾けて頂いた参加者の皆さんの熱意には、頭の下がる思いでした。

より豊かな未来の食を築いていくためには、行政や政治の取組も当然ながら必要ですが、結局は、一人ひとりの消費者の気付きと実践が決定的に重要です。私も一人の消費者として、参加者の皆さん、事務局(… 続きを読む

「江戸東京野菜探訪バスツアー」に参加して

 今日10月17日は、江戸東京・伝統野菜研究会の大竹道茂さんのご紹介で、「江戸東京野菜探訪バスツアー」に参加してきました。

10:10に西国分寺駅前を出発、参加者は一般公募の方、約60名。バスは補助席を含め満席です。定員以上の応募があったそうで、江戸東京野菜に対する消費者の皆さんの関心の高さが伺われました。
まずは、バスの中での主催者である東京都農住都市支援センター・森戸専務理事のご挨拶。大型バスは補助席も含めて満席です。

 バスを降りると国分寺薬師堂。大竹さんから、国分寺の謂れと崖線と湧水が豊富にあることの説明をお聞きして、いよいよツアーがスタートです。
 「お鷹の道」沿いには、蛍のいる水路や多くの湧水池。東京都は思えないような清冽な水が流れています。その水も、農地や平地林が残されていて、水源が涵養されているお陰だとの大竹さんの説明です。理屈では何となく頭では分かっているつもりでしたが、実際にその現場を見学させていただいて初めて実感できました。
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秋の日の自然からの恵みもの

3連休の最終日は秋晴れの穏やかな一日、自宅近くに借りている市民農園で作業しました。ささやかな生産者の物まね。

10月半ばですが、まだ茄子、ピーマン、ししとうが収穫できました。今日の自然からの恵みものです。

 秋の日差しを反射する茄子の、温かくも吸い込まれるような紺色、なぜこれほど美しいのでしょうか。これも自然の造形物です。人間が造る絵画(芸術)も素晴らしいですが、たとえ印象派の大家でも、この色はマネできないかモネ(失礼)。
 ちなみにフード・マイレージはほとんどゼロ。行き帰りは自転車なので化石燃料は使用していません。

蕎麦も綺麗な花を着けています。青空の下、秋風に赤みが混じった白い花が揺れています。これは、8月の終わりに、山梨県上野原市の西原(さいはら)でもらってきた蕎麦の実を蒔いたものです。 … 続きを読む

ブログを開設しました。

 初めてブログなるものを始めることにしました。だいぶ世の中の流れから遅れていますね。

 フード・マイレージという考え方を切り口の一つとして、食べものと農業、それらと環境との関わりについて勉強しています。

 フード・マイレージ(発祥地の英国では foodmiles と称しています。)とは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標で、この単純な数値が、私たち一人ひとりのの毎日の身近な食と、食を支える農業、地域コミュニティづくり、さらには全人類的な課題である地球環境問題との関わりに気づく「ヒント」となります。… 続きを読む

平洲先生の辻講釈

細井平洲(ほそいへいしゅう)先生は、享保13(1728)年、尾張国知多郡平島村(現在の愛知県東海市)の裕福な農家の二男として生まれました。幼い頃から学問好きで、名古屋、京都、長崎に遊学した後、24歳で江戸へ出て私塾「嚶鳴館」を開きました。西条(愛媛県)、人吉(熊本県)、尾張等の藩に迎えられたほか、当時14歳の米沢(山形県)藩主・上杉治憲(鷹山)の師となり、後々まで米沢藩改革の土台を築いたことで有名です。

平洲の学問は徹底した「実学」でした。特定の学派や学閥に縛られることなく、世の中の役に立つなら何でも取り入れる柔軟さがありました。また、多くの藩に迎えられる一方、彼の学問の現場はあくまで「市井」でした。江戸の両国橋では道行く人達を相手に辻講釈を行い、尾張では廻村講話(講演会)を行いました。殿様達だけではなく、一般の民衆にとっても平洲の教えは分かりやすく、面白かったといいます。

その平洲に「学、思、行 相まって良となす」という言葉があります。これは、「単に話を聞いて学ぶだけではなく、自ら考え、さらに実行に移すことの三つが揃うことによって、初めて学んだことになる」という意味とのこと、実践を重んじる平洲の思想が端的に表されています。

10月初めに東海市を訪れました。中村靖彦先生が主催される「食材の寺小屋」東海市シリーズの一環です。名鉄・聚楽園駅に降り立つと、目の前には大きな「学思考」の碑、さらには平洲先生の一生を説明したパネル。熱心な参加者の皆さんに集まって頂いた学習会の終了後には、平洲記念館に案内して頂き、館長さんから説明をうかがうこともできました。 … 続きを読む

さいはら秋そばプロジェクト

池袋のNPO法人エコ・コミュニケーションセンター(ECOM)主催「都市農山漁村交流しごと塾」(第2期入門編)の最終回を、ふと覗いたのは7月7日のこと。都市と農山漁村にあるそれぞれの資源をつなげるための、自分の働き方、生き方を生み出せる仕事を探すという趣旨のワールドカフェで、年齢、職業もばらばらの参加者がいくつかのグループに分かれてプロジェクトを構想するというものでした。偶然入ったグループの何人かの口から、しきりに「さいはら」「さいはら」という地名が出てきます。聞いてみると山梨県上野原市の西原地区とのこと。様々な人たちが熱心に地域づくりに取り組んでいる「さいはら」の魅力を、ぜひもっと多くの人たちに紹介し、さらには足を運んでもらいたい、ということで、その場でA4版1枚にメモ書きされたのが「しごと塾さいはら秋そばプロジェクト」。私も成り行きでメンバーの末席に名を連ねたのですが、まあ、構想倒れで終わるのだろうな、と思っていたのが正直なところでした。

ところが、主導的なメンバーの熱意と現地の皆さんの協力のもと、短期間に話は進み、ついに8月21日(土)にプロジェクトの第1回、「耕起と秋そばの種まき」が実現したのです。参加者は9名、私のようなオヤジや定年退職された方を別にすれば若い世代の男女ばかり。サラリーマンでありながら長野県に移住して週末農業を始められた方も。

この日、地元での受入の窓口になって下さったのはFさんです。西原のご出身で約10年前にUターンされ、今年6月には発足したNPO法人さいはらの理事長に就任されました。この方に、じゃがいも堀と、その跡地の耕起とそば播種といった慣れない作業を指導して頂きました。Kさんという若い女性の移住者の方も手伝って下さいました。地域の人たちを巻き込んで様々なイベントを企画・実施されているそうです。… 続きを読む

フェアトレードと地産地消

JICA地球広場(渋谷区広尾)で開催された開発教育全国集会に参加して来ました。

開発教育とは、私たち一人ひとりが、開発をめぐるさまざまな問題(途上国など世界で起こっている貧困や戦争、環境破壊、人権侵害等)を理解し、望ましい開発のあり方を考え、共に生きることのできる地球社会づくりに参加することをねらいとした教育活動とのこと。

 

今まであまり関わりのなかったこの分野の集会に参加しようと思ったのは、まずは西川潤先生(早稲田大学)の基調講演を聴きたかったから。私事ながら、食料や農業の問題に一生関わっていくことを決めたのは、学生時代に西川先生の「飢えの構造」という著書を読んだためです。

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マエキタミヤコさんとHIKESHI

マエキタさんを肩書き的に紹介すると、コピーライター、クリエイティブディレクター、「サステナ」代表。「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表・幹事。東京外国大助教、立教大学と上智大学の非常勤講師。

携わっておられる大地を守る会の「フードマイレージ」キャンペーンのウエブサイトは、アニメーションを多用し、デザイン的にも内容的にも充実しており、かつ、おしゃれで、トン・キロメートルや二酸化炭素排出量○グラムといった耳触りのよくない言葉を素敵にpoco(ポコ)と命名したり。

マエキタさんの主張は「チャーミングに世界を変える」。日本の食は色々と深刻な問題を抱えていますが、例えば私のようなオヤジが眉間にしわを寄せて白髪を振り乱して難しい理屈を並べても、暑苦しいばかりで、残念ながら解決の糸口にはなりません。まずは、いかに一般の消費者に、普通の人たちに興味を持ってもらえるか。理解してもらい実践につなげてもらうのはその先です。きっかけ作りのためのチャーミングなデザインや広告(プロパガンダではなくアド)の持つ大きな力を、マエキタさんに教えてもらっています。 … 続きを読む

仰臥慢録

明治16(1883)年に上京、俳句・短歌の革新運動に身を捧げていた正岡子規は結核に冒され何度か喀血、ついには寝たきりの生活を強いられます。

その病床で子規は多くの優れた随筆や日記文学を残しました。その一つ「仰臥漫録」は、他人に見せることを想定していない私的な日誌であり、子規の心情が赤裸々に吐露され、また、写実派らしく日々の出来事が詳細に記録されています。

例えば明治34(1901)年9 月24 日には、子規は次のようなものを食べています。大変な健啖家です。 … 続きを読む